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『ソンデルマ 11 戦士達』

青木 航著



 光の攻撃にに耐え、屈辱感と闘っている私に、敵は次の手を打って来た。
 壁の一部が突然開き、開いた部分が台となって食事が競り出して来たのだ。粗食ではなく、ちゃんと栄養価も計算して作られたものであろう。見た目も、もし私の精神状態が普段通りであれば、きっと『旨そうだ』と感じるに違いない。
 尿を垂れ流したばかりで、屈辱感の中に居る私の感心が、そこに向かうはずが無いことを十分分かっていてのことだ。当然、映像監視されている。狙いは何なのか? 
 食事に感心は無かったが、私の目を惹き付けてしまったのは、添えられている水のグラスだった。大きく清潔そうなグラスにたっぷりと注がれている冷たく旨そうな水に、つい手が延びそうになる。
 空腹を我慢することに比べて、乾きに耐えることは遥かにつらい。
 室温が上がり、乾燥が強くなって来ていることに、私は気付いた。
 食事と水に背を向けて、私は唾を飲み込んだ。

 光の攻撃に耐え、乾きに耐え、尿を垂れ流したまま、悪臭が沸き上がって来る下半身の屈辱感に耐えながら、私は、無限に続く苦痛の中に居た。室温が上がったせいで、悪臭はなおきつくなっている。

 どのくらいの時間が経ったのか、全く分からない。光の中で、私の意識は既に朦朧としていた。
 漠然と死を思う。

 爆発音がした。大きな爆発が起こったと言う感じでは無く、小さな爆発が数多く起こったと言う印象だった。
 床に倒れ込んで動けなくなっていた私は、誰か二人に両脇を支えられて起こされた。
『何がおこっているのか? 』
 私を引き摺り起こした二人の他にも、数人の者達が居たように思う。両足も持ち上げられた。
 目映い光から逃れ、空中を私は移動している。光に晒され続けていたため、瞳孔が開き、目を開けても何も見えない。
 連続的な発砲音が響き、私は投げ出された。頭を打った。襟首を捕まれて引き摺られ始めたところで、意識が遠退いた。

 それから意識を取り戻すまでに何れくらい経っていたのか、やはり分からない。
 配管が剥き出しの天井が、まず目に入った。視力が完全に回復していないのか、目に映る光景は幾分ぼやけている。頭に若干に痛みが残っている。身体の痛みも有る。だが、尿の悪臭も下半身の不快感も感じない。身体を洗浄されて、清潔な衣類に着替えさせられているようだ。
『救出されたのか? 或いはこれも、何か手の込んだ演出なのだろうか? 』
「ソンデルマ長官。気が着かれましたか」
 少し頭を左に回すと、顎髭を生やした男の顔が目に入った。
「ここは何処かね? 」
「我々のアジトです。救出が成功したのです。ご安心下さい」
「ゾラのクーデターが失敗した訳では無いのか? 」
「残念ながら…… 」
 体を起こして見回すと、ベッドの周りには、10人ほどの男女が居る。倉庫のような場所だ。
「君達は? 」
「ゾラの野望を阻止するために結成されたレジスタンスです」
『やはりそうか』
と私は思った。
 私をあのまま死なせてしまうより、利用する方が得と思い、下手な芝居を打っているのだ。
「政治家の私さえ、ゾラがクーデターまで画策していたことに気付かなかったのに、君達は早くからそれに気付き、組織を作って訓練を重ねていたと言うのかね。まるでドラマだね」
 私は思い切り皮肉を込めて、そう言った。
「お疑いご尤もです。貴方より深くゾラのを知る者。それが、我々の影のリーダーです。正体は明かせませんが、その人は、ゾラの野望を知り得る立場の人で、阻止しなければならないと考え、早くから行動を起こしていました」
 髭男は、意気込むでも無く、淡々と説明した。
「その人は、ゾラを批判することも、袂を別つこともせず、表面上はゾラの命令に従って行動しながら、影ではゾラの野望を潰すための組織を作った。そう言うことか? 不思議な話だ。そう言うのマッチポンプって言うのかな。その男の心理が僕には全く理解出来ない」
『こんな見え透いた作り話で私を騙せると思っているとしたら、随分と甘く見られたものだ』
 そう思って聞いていた。
「説得しても、ゾラはそれを聞き入れるような男では無い。離れれば、阻止することが余計難しくなると思ったのです」
 髭男はそう説明した。
 見え透いた言い訳だと思った。
「ふ〜ん。仮にそんな風に考えた男が居たとしよう。だが、その男と君達の関係は、元々どういうものだったのかね。ゾラの腹心と君達が親しかったとすれば、元々君達もゾラのシンパだったはずだ。それがどうして、武力闘争をしてまで、ゾラに反対しようとするまでの考えに至ったのか。
 答えられるか? 単に、ゾラがクーデターを起こそうとしているのを知って、危険性に気付き、何としても阻止しなければならないと思うに至ったと言う程度では、私を説得することは出来ないぞ。
 武力闘争で誰かを倒そうとする勢力とは、元々圧迫を受けていたか、始めからイデオロギー的に対立するものを持っている者達だ」
「失礼ながら、今回のクーデターを見抜けなかったように、貴方の想定の外に有ることも、世の中には有ります」
「要は、説明出来ないと言うことか? 」
 顎髭の男は腕組みをして、小さくため息を突いた。
「ソンデルマさん。いくら貴方でも最初から組織の全貌を話すことには躊躇が有りましたが、仕方ありません。お話ししましょう。我々は全て、家族や大事な人を保安局に逮捕されている者ばかりなんですよ」
 この意外な説明に、私の心は少し動いたが、尚も疑念は残っている。
「私が保安局に逮捕された人達に付いて調査した時、家族や関係者で、調査に協力してくれる人は居なかった」
「貴方が保安局に疑いを持ち調査していることは、嬉しく思っていました。ですが、それで真相が解明出来るとは思いませんでした。
 貴方に協力して保安局に目を付けられ、組織の存在が発覚することを恐れました。それで、協力出来なかった。ゾラは、貴方が考えているより遥かに危険な男であることに我々は気付いていましたから」
「ふ〜ん」
と言った後、私は少し考えていた。そして言った。
「影のリーダーが誰なのか、その人物と君達がどう繋がったのか。その説明に納得行くまでは、私の疑問は解消されない」
「申し訳ありませんが、リーダーが誰かを今明かすことは出来ません。その人から、最初は匿名で連絡が有り、慎重に用心深く連絡を取り続け、考えを説明され、疑問をぶつけ回答を貰い、それを繰り返した結果信じるに至ったとだけ申し上げておきましょう」
「騙されているとは思わなかったのか? 」
「もちろん、最初は疑いました」
「だが、その男、いや男とは限らんな。仮にXとしよう。その人物の考えが、私には全く理解出来ない。
 Xは元々ゾラの考えに共感してゾラの側近になったんだろう。ところが、何らかの理由で不満を募らせ、ゾラを裏切った。表面上は忠実な振りをしてね。そんな人間信用出来んな」
「歴史を振り返れば、側近に暗殺されたトップは過去何人も居ましたし、計画が立てられたことは数多く有る。
 有名な独裁者・アドルフ・ヒトラーに対しては、実に42回もの暗殺計画があったそうです。
 ヒトラー暗殺を計画した者達は信用出来ない者達だったのでしょうか? 運の悪いことに全て失敗に終わりましたしがね」
「独裁体制が確立していて、厳しい相互監視も行われていた。
 暴走を止めようとしてなされた計画だ。命を懸けてのことだ。
 だが、そう成ろうとはしているが、ゾラはまだ独裁者ではなかった。今までなら、反対することも、批判することも出来たはずだ」
「そう、貴方はゾラを批判し反対して来た。ゾラに取り込まれた貴方の親分である、コンクリア議長をも正々堂々批判された。そしてその結果、あの光の拷問室に送り込まれた。そうですね」
 そこから、危険を冒して救い出してくれたのが彼らだとするのなら、私には一言も無い。理屈で反論しようとするなら言い方は有るが、ここは納得するべきかもしれないと思った。
「分かった。いや、分かりました。救い出して頂いたことに礼を言うべきですね。ありがとう」
「全てご納得頂けたとは思いませんが、こちらこそ信用して頂けたことに、感謝します」
 私は大きく呼吸してから、改めてメンバーを見回した。
 20代と思われる男が4人。一人はラグビー選手のようにガタイの良い男。もう一人は髪を金髪に染めた細見の男だが、整った顔、そして鋭い目をしている。後の二人もスポーツ選手のような体型の男達だ。
 そして、30代前半に見える男が一人、短髪に引き締まった身体、何より、恐ろしく姿勢が良い。恐らく、軍隊に居たに違いない。
 50に近いと見える男が二人。一人は学者風で落ち着きと思慮深さが読み取れる風貌をしており、もう一人は、年齢の割りに鍛えられた筋肉を持つ男だ。
 若い女が二人居る。一人は明らかにネイツだ、短髪でソフトボール選手のような風貌。もう一人は細見の美女ではあるが、整形美人かどうかは分からない。但し、整形希望として人気の有るタイプでは無く、セミロングのストレートヘアーに褐色の肌と広い額を持つ個性的な美女だ。

「俺はモーリス。みんなからはキャップと呼ばれている」
 顎髭の男が、そう自己紹介をした。背は高い。
「俺はブルノ」
 人懐っこそうな笑顔を見せたのは、ラガーマン風の男。
「テルリ」
 金髪は無表情にそれだけ言った。
「俺はコーキー、隣は弟のリクです」
 二人とも20代の男達だ。
「ブレフトです。宜しく」
 元軍人風の男は敬礼して、そう言った。やはりそうだったのかと思う。
「私はクリンデム。皆からは教授と呼ばれています」
「俺はハフナ。頭では教授に負けるが、体力では勝ってる。つまり、俺と教授は能力は別々だが対等の相棒って訳だ」
 教授は苦笑いしながらハフナの肩を軽く叩く。
「私は実戦の役には、余り立たない」
「だが、優秀な作戦参謀だ」
 モーリスがそうフォローする。そして、
「女性人は俺から紹介しよう。左がグレタ。運動万能のネイツだ。右はアリーナ。一見華奢に見えるが服の下には凄い筋肉を持ってる。実はプロの格闘家だ。彼女もネイツ」
「私はその方面に詳しくはないが、有名人なら目立つだろう。活動に差し支えは無いのか? 」
「私、覆面ファイターなの。負けて覆面剥がされたこと無いから、関係者意外、顔は知られてないわ」
「スター・ファイターって訳か、でも、ファンは誰も顔を知らない。ネイツの美人なのに勿体ない話だ」
「お固いイメージのソンデルマさんが、そんなことを言うとは思いませんでした」
 モーリスが言った。
「あの、私もネイツなんですけど」
 グレタが絡んで来る。
「君も覆面ファイターなの? 」 
「いいえ」
と言った後、グレタが吹き出す。
「さてと、皆の紹介が済んだところで、今後のことに付いてお話しましょう。あっ、その前にお腹がすいてはいませんか? 気が付かれる前に、一応、水分と栄養剤は点滴で投与して置きましたけど。教授は医師でもあるので」
「どうりで、喉の乾きを覚えないはずだ。だが、栄養を投与されても、胃の方は余り満足していないようだな」
「それは良かった。体調が回復した証拠ですよ」
「あんな酷い目に会ったのに、そんなに早く回復するものですか? 教授」
「それなりの処置はしましたから」
「ありがとうございます」
「では、食事を用意しましょう。ブレフト頼むよ」
「分かった、モーリス。任せて置け」
「ここにクッキングテーブルを持ち込んでいるのか? 」
と私は聞いた。
「いや、残念ながら無いんだ。でも、ブレフトのお陰で、みんな作れるようになった。彼は元、特殊部隊のレンジャー出身で料理が出来るんだ。
 最前線に自動で料理を作るテーブルなんて持ち込むことは出来ないからね。
 尤も、今仮に戦争が起きたとしても、人間が銃を持って原野を這い回るなんてことも考えられないけど、レンジャーは伝統的な訓練を未だにやってるんだそうだ。笑い話のようだが、どこで役に立つか分からんもんだな」
「いや、笑い話どころか、重要な真理がそこに有るのではないかな。科学は人間に取って亀の甲羅のようなものだ。甲羅を剥がされたら、亀はすぐ死んでしまうだろう。科学が発達すればするほど、生身の人間はひ弱になって行く。甲羅を剥がされても生き残るためには、古典的なサバイバル術が一番重要になって来る。全てを奪われても生き残ることが出来なければ、権力を握った者に従わざるを得なくなる」
「ソンデルマさん。正しくその通りです。我々も地下に潜ったとたん、それを嫌と言うほど味わされました。何かに頼らなければ生きて行けないなら、真の抵抗運動など出来ないのではないかとね」
 教授がそう話を合わせた。
「じやあ、ブレフト。美味しい料理をお願いしますよ」
「ソンデルマさん。政治家なら、自分で言ったことに責任を持って下さい。私に出来るのは、最低限命を繋ぐために食料を加工することで、美味しいものなど作れません」
「それで結構」

小説のコメントコメント
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2019/10/18 01:40 青木 航



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