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『ソンデルマ 9 意図』

青木 航著



 以前より私は支持者達と意見交換を頻繁に行い、彼等と本音で語りあっっていた。
 すると、意外なことに、彼等の人脈でホリアーの中から私に同調する人達が現れたのだ。
 ピアルクがまず最初に私との接触を図って来た。もともと知り合いではあったのだが、深い付き合いではなかった。しかし、会って話し合ってみると、ゾラの行動に深い懸念を持っていたことが分かった。
 しかし、彼も保身を考えて、その立場を鮮明にすることを躊躇していたのだ。しかし、これ以上見過ごすと大変なことになるという危機感が募っていたところだと述懐した。
 更に徹底的に話し合うことで、私とピアルクは、何十年来の親友のような関係を築くこととなった。そして、彼の人脈から、まず、数人のホリアーの同調を得ることに成功した。
 そして私は粘り強く仲間を増やして行った。そんな中で出て来たのが、民政分離法案の閣議提出である。
 これは、ゾラ副議長兼国防長官の主導で提案された法案であるが、民政について重要な決定を行う場合、ホリアーの過半数による提案により国民投票を行い、その結果をホリアー会議が尊重するという、普通に考えれば問題の無い法案のように思えるものだが、その投票権について大きな問題があった。
 税金を多く払っている者により多くの議決権を与える特例を設けようということなのだ。
 つまり、ひとり1票の原則を、ゾラの言によれば
『民政法案に限って、受益者負担である以上、その貢献度に応じて発言力を確保するべき』
ということなのだ。
 労働者側に立つ政党は勿論のこと、保守系の議員からも、民主主義の根底を覆す考え方だという反対意見が出、反対のデモが頻発するようになった。
「仰ること良く分かりますよ。そりゃ、民主主義は大事です。うちのかみさんより大事かな? いや、かみさんに殺されるといけないんで、この部分はカットしましょうかね、ははは」
 そんな掴みで笑いを取って、ゾラは演説を始めた。
「でも考えて見てください皆さん。
 仮に、1億ソルの税を納めている人がその地区にひとりいたとします。
 1億ソルの公共事業があったとして、このひとが、地域のために是非やってもらいたいと思っている公共事業とします。
 これが仮に地域に取って大変有益な事業であったとしても、例えば少数の非課税所得しかない人が住民エゴの立場から反対に回っただけで、この事業は出来なくなってしまうんですよ。
 …… そんなんなら、税金なんか払わないで、自分で作って寄付した方がいいと思うじゃないですか。そうでしょ。税金を払わないで、そっちに使えばできるんだから。
 でも、税金は払わない訳にはゆきませんよね。ねえ、皆さん。国民の義務だから……。
 ある意味、これ不公平でしょ。そう思いません? その不公平を千倍、万倍に拡大したのが実際に起こっている、なんでもかんでも多数決というものなんですよ。
 民主主義の原点は古代ギリシャかと思いますが、その古代ギリシャは何故滅んだかご存じですか? え? 皆さん。いわゆる衆愚政治ですよ。
 多数の意見が必ず正しいとは言えないじゃないですか。ねえそうでしょ。古代ギリシャはそれで弱体化したんですよ。
 世の中には、馬鹿みたいなことをいう人間っていっぱいいますよね。そういう連中も平等に一票持ってるんです。見識があって国家の将来をちゃんと見据えてる、例えば皆さんのような方も同じ一票。そうじゃないですか! ねえ。
 経済の専門家ひとりの意見と一般の方100人の方の意見が違ったとして、どちらが正しいんですか。経済に例を取ると異論が出て来るでしょうが、じゃ、天気予報ならどうですか? 多数決の原則だったら、当然一般の方100人の方が正しいということになってしまいますよね。でも、気象予報士ひとりが言ったことの方が当たる確率は高いでしょ、ね。
 私が言いたいのは、どんな時にも必ず多数決が正しいと思うのはいかがなものか? ということなんですよ。そして、ひとりひとりは、自分で考えて意見を言っていると思っているかもしれませんが、大方の人は、マスコミに洗脳されているんですよ。
 その人が読んでいる新聞が分かれば、大体どんな意見を持っているか分かるんです。
 その人が好きな報道番組や好きなニュースキャスターを聞けば、分かるんですよ。いや、自分の意見に近いから見ているので、話は逆だと言うかもしれませんね。でも、何の情報も持っていない一般市民が、何を前提にして判断するんですか? 自分で判断したつもりでいても、その判断の前提となる情報はどこから仕入れているんですか? マスコミでしょ。その情報がある意図を持って出されている場合も多いんですよ。
 Netなんかもっと危険だ。自分の関心ある情報しか見なくなってしまう。自分の気に入らない意見なんか、匿名でボロクソ叩いて、炎上させてしまえばいいんだから、あれは、独り善がりのバカを作るツールなんですよ。そうでしょ。フェイク・ニュースばっかり。お宅の息子大丈夫? 毒されていないですか? 昔は、名前を隠してひとを批判する奴は卑怯者って言われたんですよ。私に言わせりゃ、自分は、こそこそと名前を隠しておきながら、偉そうにひとを批判しても、なんら罪悪感を持たない社会を作っちまった連中こそ、大犯罪者ですな。批判ってのはアホでもできるんですよ」
 笑いが起こる。
「こんなこと言うと、失言として吊し上げを食らうかもしれないけど、メディアがアホだと国民もアホになるんです。これは、失言じゃない。政治家としての信念だ。
 大きなお金を稼ぐ人は、より慎重なんですよ。大事なお金を誤った情報に乗せられて失う訳に行きませんからね。マスコミやNetの情報も鵜呑みにはしません。私が言いたいのは、せめて,皆さん方が払っている税金に見合った議決権を認めてもらおうということなんですよ」
 これは、ゾラが支持者だけが集まった集会でした演説の一部だ。ある人が秘かに録音し、私に届けてくれた。その人はゾラの支持者だったが、最近のゾラを警戒するようになっていた。
 ゾラの支持者は富裕層が多いから、こんな、ほかの人達が聞いたら大問題となるような偏見に満ちた発言でも拍手が沸き起こる。
 この演説の録音を聞いた時、私は大きな危機感を抱いた。そして、まず支持者にその危険性を訴えようとした。
 だが、残念ながら私の演説はゾラほど面白くもうまくもなかった。新たな仲間を獲得する一方で、私は何人かの大事な支持者を失うこととなったのだ。
 間接的には伝わらないかもしれないが、実際のゾラの演説は、その身振り手振りや表情まで使って、いつの間にか聴衆を引き込んでしまう。文章にすれば矛盾だらけの論理でも、催眠術にでも罹ったかのように聴衆は乗せられて行く。
 政治手法に付いては、一般に人気のなかったゾラだが、その演説に於いては、一部の熱狂的な支持者を獲得していた。

小説のコメントコメント
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2019/09/20 01:59 青木 航



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