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『ソンデルマ 8 離反』

青木 航著



 支持者の中に動揺が広がっていた。
 それを抑えるために、私は長年の支持者を集め、民政分離法案の提出に反対することについて理解を得るための集会を開いた。
「皆さん、民政分離法案とは何かお分かりですか? 社会資本の整備などに限り多くの税金を払っている人達の発言権を、もう少し認めて行こうというものです。しかし、おかしいとは思いませんか? もちろん私はそういった考え方に共感はしません。
 ま、色々な考え方はありますが彼等によると、社会資本の整備に関しては、株主総会の議決権のように、その出資額、この場合は税金の負担額ということになりますが、それに応じた発言権を認めても良いのではないかというものです。
 提案者達が言うには、非課税の人や小額の税しか払っていない人達の反対で、都市計画や大事なインフラの整備が遅れたり、立ち退きを拒否している人に対する補償が膨らむのは公共の利益に反し、財政負担を増大させ、国家発展の妨げにもなっていると言うのですね。
 多額の税金を払っている人達の多くは経営者だから、広い視野を持ち国家の将来をも見据える目も持っている。しかも、彼等は多額の税を払っているのだから、もっと彼等の意見を反映できる制度を考えるべきで、それは結局国民全体の利益になると言うのです。
 ゴネ得や地域エゴに対処するために税金の浪費をすることは、国家の利益に反する。民主主義は大事だが、時としてそれは愚民政治に陥る危険性を孕んでいる。民主主義は堅持しつつも、こういった社会資本の整備などに関しては、我々はもっと効率的な制度を採用しても良いのではないか。そう主張している訳です。
 納税額に応じた権利を認めることの方がむしろ平等だろうという訳ですね。…… 私は決して認めませんが、仮りに百歩譲って考えたとしても、何故『社会資本の整備分離法案』ではなくて、『民政分離法案』なんですか? 他の政策にも広げて行こうという意図があると取られても仕方ないですよね。…… 言っておきますが、私は野党議員ではありませんよ…… 」
 かすかな笑いが起きる。
「与党議員であり、ホリヤーの一員であり現役の閣僚、しかも民生長官です」
「知ってるよ〜」
との声が飛ぶ。
「その私がこういう発言をしたら党から注意を受けるでしょうし、懲罰委員会に掛けられるかもしれません。
 閣僚を罷免され、ホリヤー会議から除名され、党を追放されるかもしれません。
 …… しかし、一議員として、ひとりの国民として、今、声を大にして言わなければならないことなのです。私はこの『民政分離法案』の提案をさせないために全力を尽くす所存です。それをまず、支持者の皆様方にご理解い頂きたい。それが、この集会の目的なのです」
「しかし、先生。塵処理施設を作るのは賛成だが家の近所は困るとか、よその町にしてくれとか、そういうことで工事が進まなかったり、反対運動を鎮めるために多額の補償をしたり、最近そんなのが多くて、それで公共工事費が増大していることは確かでしょう。『社会資本の整備分離法案』に名称を変更させれば、私はそれも有りかなって思いますけどね。工事費削減にもなるだろうし…… 
 やっぱり、税金は効率的に使ってもらわないとね。自分の損得しか考えない人間と大極的に考えられる人間と同じ一票だったら、それこそ、本当に愚民政治ってことになってしまうんじゃないですかね」
 そう発言したのは、工場の経営者だ。
「多額納税者が広い視野を持っていて、非課税者や低額納税者が自分の損得しか考えないと決め付けるのはどういうものですかね」
「全部がそうだとは言わないが、広い視野を持っていなければ経営なんて出来ませんよ。逆にいえば広い視野を持っているからこそ成功しているんじゃないですかね」
「しかし、自分の利益を追求し続けたからこそ成功できたとも言えますよね。経営とはすなわち利益追求ですから」
「それはそうだが、一定の成功を修めると、人は社会のことに目を向けるようになるものです」
「貴方はそうかもしれないが、皆そうだとは言えません。むしろ、利権を求める人の方が多いかもしれませんよ。
 いずれにしても、多額納税者の方が社会全体のことを考えていると決め付けていることが危険なんですよ。税の無駄遣いが減るからというのは誤魔化しです。この法案の主旨は平等の原則の破壊です」
「先生、それは少し大げさではありませんか? 選挙の議決権や投票権を変更しようという訳ではなく、国民生活に大きな影響を与えるインフラの整備の問題に限ってのことですよね」
「蟻の一穴ですよ」
「なんか、先生のおっしゃってることは労働党の連中の言ってることと同じじゃありませんか。私は労働党を支持している訳じゃない。あんな、何でも反対みたいな党は嫌いなんですよ」
「この件については、確かに労働党の主張と私は同じことを言っています。少なくとも、この法案に反対することについては、確かに私の主張は彼等と同じです」
「私も、長年先生を応援させて頂いていますが、少し考えさせて頂きますよ」
「どうか木を見るだけでなく、森を見ていただけませんか。この法案が成立すれば、その結果についての責任は国民全部が負うことになるんです」
 私は何とか理解してもらおうと努力した。
 しかし、結果として何人かの支持者が離れていった。いずれも、私の支持者の中では比較的資力があり、多くの献金をしてくれていた人達だった。

小説のコメントコメント
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2019/09/20 00:32 青木 航



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