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『ソンデルマ 7 対立へ』

青木 航著



「マステンさん。このところ、ソンデルマ民政長官の勉強会からの離脱者が増えているようですね」
「ええ、その通りです。ソンデルマ氏に失望した人が多く居ると思いますよ。一般有権者の人気も下がっていますからね。議員というのは世論に敏感なんですよ」
「やはり、ゾラ副議長とコンクリア議長の推薦を受けてホリアーとなり、民政長官に就任したことが影響しているんでしょうか? 」
「その通りです。そもそもソンデルマ氏の人気が上がったのは、腹心で有りながら、ゾラ副議長を庇おうとするコンクリア議長に意見をし、聞き入れられないと分かると、議長から離れて独自の活動を開始したことによるところが大きいですからね。
 それが、目の前に餌をぶら下げられると、なんの躊躇も無く、それに食い付いてしまったんですから、がっかりした人も多いと思ますよ」
「ソンデルマ氏も、政治家ではなく只の政治屋だったという訳ですか? 」
「ま、そういう言い方が当たっていると思いますよ。やはり、ポストが欲しかったんでしょうね。これじゃ、議長を批判する資格なんて無いですよ」

「良く、そんなもの平気で見ていられるよな」
 部屋に入って来て、TVを見ている私にそう言ったのは、息子のレアだった。
「うん? 自分に取って都合の悪い意見でも聞く必要はある」
「ふ〜ん。それでどう思ってる? 」
 レアは意地悪そうに言った。
「ま、大方はそう思うだろうなと覚悟はしていたよ」
「でもポストが欲しかったって訳? 」
「ちょっと違うが、ま、そう思われても仕方が無いな」
「…… 俺、部屋借りることにしたから…… 」
「家を出るってことか? ま、それもいいだろう。しかし、自分でやって行けるのか? 部屋代まで払ってやれる余裕はないぞ」
「民政長官閣下となっても、息子の部屋代ひとつ払えないってことだよね。
 もっとも、俺は始めから頼るつもりは無いけど。今まで通り学費だけ出してもらえば、部屋代も食費も自分で何とかするよ。バイトでぎりぎり何とかなるだろうし、今開発している学習ソフトが完成すれば、そこそこのものは入って来るようになる」
「不確定なものは当てにするな。…… 本当に困ったら言って来い。最低限のものは何とかする」
「ふん。…… 友達誰も思って無いよな、有名政治家の息子が小遣いに不自由してるなんてさ…… 」
「政治家の息子ならたっぷり小遣い貰ってると世間が思うってことは、政治家には、歳費以外にも色んな金が入っているというのが、世間の常識となっているということだ。それも、政治活動に使う金以外の金がな…… その常識を変えんとな」
「ポストに尻尾を振ったと思われてる親父が、良く言うよな」
「可笑しいか? 」
「うん? …… でも、少し安心したよ。親父のやってること良く分からんけど。…… だけど、やっぱり、俺、家出るわ…… 」
「ああ、それもいいだろう。クレシアと住むのか? 」
「ああ、彼女も家を出るって話だったんで、別々に家賃払うより一緒に住もうかってことになってね」
「そうか」
「言ったっけ? クレシアはネイツなんだ」
「それがお前の自慢か? 」
「まあね。もちろん、性格もいいよ」

 “ネイツ” とはまったく整形をしていないという意味で、かなりの価値観を持っている。
 10年ほど前、コンピュータ施術の普及により失敗や医療事故が飛躍的に減り、費用も安くなったため、美容整形が大ブームとなった。結果、美男美女が街中に溢れ、国中がハリウッド状態となってしまった。
 しかし、個性が無くなり、誰が誰やら分からなくなってしまった。
 施術前の知り合いに何年か振りに会っても、自分が誰なのか説明しないと相手には分からない。
 もしお互いに整形していたりしたら、もと大の親友だったとしても、お互い気付かずにすれ違ってしまう。
 犯罪者も整形を繰り返すので、顔写真や過去の動画での指名手配が無意味になってしまった。逮捕に際しては、必ず簡易DNA鑑定を行い本人を特定しなければならない。身分証明書から写真が無くなり、国民登録センターへの照会が必要となった。音声、映像、指紋を送って、声紋、骨格、指紋の照合を行わなければならない。それほど時間も掛からなくなったが、面倒なことに変わりは無い。
 もっと深刻な問題としては、美男美女の夫婦から不細工な子供が生まれるという問題が続出し、比較的冷静な夫婦は、何歳になったら子供に整形を受けさせるか話し合うが、相手を非難し合って離婚してしまう夫婦も多い。もはや整形は、社会不安を引き起こしていた。
 そんな中、整形にまったく興味が無いか、あるいはすべきでないという信念のもと、一切整形をしない人達が“ネイツ” と呼ばれるようになった。そして、ネイツの価値は年々上昇している。

 TVには、私の支持率がテロップで流れている。現在観ている視聴者の支持率がオンタイムで流れているのだ。番組開始直後は42パーセントだったのが、マステン氏の発言後23パーセントに落ち込んだ。今や有名評論家の影響力は政治家に恐怖心を与え、政治家も彼等を無視出来なくなり、影では不満を並べても公式発言では彼等にお世辞を使う始末だ。

 その私の支持率が回復したのが、保安局の闇を追及し始めてからだ。
「無罪になった者がひとりも居ないのはどういう訳かって? ソンデルマ君、それだけ確実な証拠が揃ってから起訴しているからだよ。あやふやな状況では逮捕しない。そう思ってもらえばいい」
 私を取り込んだと思っているゾラは、当初、余裕を持ってそんな返事をしていた。
 ところが、精神病院に収容されている者を私が調べ始めると、明らかに不快感を表すようになって来た。
「君の政治家としての情熱は評価しているが、確かな裏付けもなく、必要以上に固執するのはどういうものかなあ。君が必要以上に調べ続けることで、何かあるのじゃないかと思い始める人も出て来る。
 火の無いところに無理矢理煙を立てようとするのは感心せんな。君の人気取りで迷惑している者がいる」
「人気取りなんかじゃありませんよ。納得出来るまで調べたいんです。性分でして…… 」
「私が迷惑していると言っているんだ。一体、誰のお陰で民政長官になれたと思ってるんだ! 」
 遂にゾラは本性を現した。
「貴方と議長の推薦に寄って民政長官になれました。ですが、私は政治家です。政治家が奉仕すべき相手は国民だけです」
「政治家である前に人間だろう。人間として信用されなければ、政治家として信用はされんのだよ。
 ひとに受けた恩を仇で返すような人間が、政治家として信用されると思っているのか。国民も馬鹿じゃない。君の姑息な人気取りのやり方は遠からず国民にも見抜かれる。そうなれば、君の将来は無くなるぞ」
「私が調べ続けると都合が悪いことが、実際お有りになるんですか? お怒りはすなわち、貴方に取って都合の悪いことを私がやっているということですよね」
「そういう問題じゃない。私は君の人間性に疑問を呈しているんだ。信用出来ない奴だと言ってるんだ。君の毀誉褒貶振りを見ている国民も、いずれそういう判断を下すさ。…… 次の選挙はせいぜい頑張ってみるんだな」
 それからというもの、政治評論家の私に対する評もどんどん辛辣になって行った。一旦上がり掛けた支持率も再び低迷し、一時は、コンクリアを凌ぐほどの仲間が集まっていた勉強会も、一挙に少数派に転落した。ただ、いつも本音で語り合い、腹の内をさらけ出してくれていた少数の仲間は残った。

小説のコメントコメント
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2019/09/20 00:05 青木 航



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