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『ソンデルマ 6 裏切りの報酬』

青木 航著



『裏切り者め! 』
という怒りを隠し、コンクリア議長は、私にまた親し気に接するようになった。
「いや、私は君を見損なっていた。一時は、いくつになっても青臭い議論しか出来ぬ男なのかと思って失望したが、短期間にあれだけのことをやってのけるとは恐れ入ったよ」
 自宅の居間のソファーに深く腰掛け、いかにも大物の余裕を演出しながら、コンクリア議長が言った。
「何のことでしょう? 」
「ここは私の居間だ。盗聴対策も万全だ。お互い本音で話そう。
 今、マスコミは我が派のことを何と呼んでいるか知っているだろう。…… ソンデルマ派だ。もはや私は、レイムダック扱いだ」
 まず笑うしかなかった。
「はははっ。無責任なマスコミの報道を気になさっているのですか? 
 それで気を悪くされているのなら、私の不徳の致すところとお詫びしなければなりませんね。
 でも、あれは只の勉強会です。コンクリア派を乗っ取ろうなどと考えたことは有りませんよ」
「いや、腹を立てている訳ではないんだ。誤解せんでくれ。君に指導力があると分かった以上、派閥の長を譲ってもいいと思っているくらいだ」
「誤解です。誤解ですよ、議長。あの勉強会に拘束力なんて全くないんです」
「秘密会にしているそうだな」
「ええそうです。その通りです。議員それぞれには自分の政治信条というものがあるはずですよね。
 しかし、一旦政党に所属すれば党議拘束が有りますし、派閥は尚更です。もし、無所属のまま居たとしても、支持団体への配慮は必要です。つまり、ひとつひとつの案件について独自に判断し、公の場で自分の意見をそのまま言える議員なんてひとりも居ないんですよ」
「何を今更素人みたいなことを言ってるんだ」
「でも私は、彼等の本音が聞きたかったんです。或る案件については、党や派閥の方針に賛成だが、別の案件については反対であるということは絶対に有り得るんです。
 支持母体や選挙区の不利益になることであれば所属集団の方針に反対であることを表明しても大目に見てもらえるでしょう。
 しかし、純粋に個人的な政治信条によるだけだったら、公式の場で表明するのは難しい。敢えて表明するとしたら、戦うか、所属を抜けるしか無い。
 大物ならともかく、中堅以下、特に若手議員については、その気持ちを押し隠し、口をつぐむしかないんです。
 案件ごとに所属を変える訳には行きませんからね。でも、私はその辺の本音を聞きたかったんですよ。だから、秘密会にしました。
 参加資格は、そこでの会話は一切外部に漏らさないことを誓うことと、どんなに反対でも、他人の意見は最後まで聞く。それだけなんです。
 TVの討論番組のように、他人の発言の途中に割り込んだり、追い被せて発言することは絶対禁止です。賛成でも反対でも他人の意見は最後まで聞く。
 …… だってそうですよね。それぞれの所属団体の方針を知っていれば、本人同士がいくら口角泡を飛ばして議論していても、並行線であることは始めから分かっている。その議論によって相手を説得することも出来ないし、相手の意見を真剣に聞いて、そういう考え方も有るのかななんて思う訳が無いのはみんな分かっている。
 また、百歩譲って相手の意見に理解を示すことがあっても、そのひとがそのことについて所属団体の方針を変えられる訳は無い。また、そんな気も無いことは分かり切っています。
 要はショーでしか無い。そんなことにならないためには、発言が絶対外部に漏れないことが必須なんですよ。その代わり、どんな意見、どんな立場のひとでも受け入れます。だから、記録も残さないし、結論や合意のようなものも敢えて纏めません。だから、政治的影響力を持つような会合では全く無いんです」
「そんなに剥きになって弁明せんでもいいよ。私は、君が私に反旗を翻したなどとは思っておらんからな。
 しかし、少なくとも、君を嫌っている者が参加するとは思えん。つまり、彼等は、多かれ少なかれ君を支持しているから集まって来るんだ。
 と言う事は、君の政治力が向上しているということだよ。私に取っても嬉しいことだ」
 やはりすれ違うしか無いのかと私は感じた。

 ゾラ副議長からも、高級飲食店に招待したいという誘いがあった。流石にそれは断ったが、自宅での夕食の招待には応じた。
 時間になるとテーブルからせり上がって来るような料理では無い。調理は調理マシーンでは無く調理人が行い、一皿ごとに調理場から人の手によって運ばれて来る。今時、よほどの高級店でもなければやっていないようなサービスが、ゾラの私邸で行われる。
 恐らく、これに招待された者は感嘆しお世辞を並べまくり、それを聞くゾラは、得意気な表情を浮かべながら一応謙遜して見せるのだろう。
「調理人を雇っているのですか? 」
 一応聞いてみた。
「料理の本当の美味さはな。やはり、人が創り出すものなんだ。
 そりゃ確かに調理マシーンを使えば、10人の人間にそれぞれの好みに合った味付けで提供することも可能だ。しかし、調理人がその感覚で、これこそが最高の味付けと自負する味を味わってみると、味というものはやはり人が創り出すものなんだということが分かるよ。
 いかにコンピュータが素材の処理と調味料の最高の組み合わせを計算したとしても、適わないものがそこにはある。理屈で無く食ってみれば分かる。最近、そこまでの調理人というのも本当に少なくなった」
「私など、どちらかというと味音痴なもので。副議長のそこまでのお気遣いに答えられず、がっかりさせてしまうかも知れませんよ」
「いや、慣れだよ、慣れ。コンピュータの作る味に慣れてしまうと、それが美味いと思うようになるが、手作りに慣れれば、その方が美味いということが段々分かって来る」
「しかし、費用も掛かるでしょう」
「いや、大したことは無い。食欲、性欲、睡眠欲。これは人間の基本的欲求だ。それを満たすためには、それなりの投資は惜しく無い」
『でも、その金はどこから入って来るんでしょうね。歳費ですべて賄っているんですか? 』
と聞いたら、さぞ機嫌を悪くするだろうなと思った。

 コンクリア議長は、もはや私を切り捨てることは難しいと思い、ゾラ副議長は相手にすべきは私だと思った。
 それが、2人が私をホリアーに推薦するに至った理由だとマスコミは推測した。そして、彼等は私を取り込むことに成功した。そう報道されると、私の評判は下がり世間での人気が下降した。

小説のコメントコメント
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2019/09/19 23:37 青木 航



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