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『ソンデルマ 5 コンクリアとゾラ』

青木 航著



『しかし、何故この時期に? 』
 そう思った。議長は重体だ。少し待っていれば政権は転がり込んで来るのに。ケルマーとアイルが私に着いたことを知って強硬手段に出たのか? 
 いや、そんなに急に出来ることではない。相当前から準備していたに違いない。議長が倒れたのは、たまたまだったのだ。
 もし、議長が健在であったとしてもクーデターを起こす気でいた。そうとしか考えられない。
 でも、それなら何故、私に圧力を掛けたり、脅迫を演出してまで、ホリアー最高会議での多数派工作に躍起になっていたのだ。そして、その多数派工作は成功したと、ついさっきまで思っていたはずだ。いや、それも偽装工作だったのだ。
 例え、ホリアー会議で勝利し、民政分離法案の提出了承を得たとしても、今度は議会を乗り切らなければならない。
 マスコミの批判も受けるだろう。そして何より、私が党を割って出たら、法案は議会を通らなくなる。
 私を取り込もうとする努力を、彼は過去に何度も行って来た。しかし、それが不可能だと分かった瞬間、恐らくゾラは強硬手段を準備し始めたのだ。
 民政分離法案を廃案にされ、己の野望が潰えることに我慢がならなかったのだ。そして、権力を獲得し、思うがままに己の政治を行いたいという欲望を邪魔するものを、一挙に葬り去ってしましまおうとしている。

 大抵の独裁者というものは、若い時、まずは有能な政治家として頭角を現すか、民衆解放の英雄として登場して来るものだ。
 そして、民衆は彼に期待し、持ち上げ、画期的な政策に拍手を送る、そして気が付いた時には彼の仕掛けた罠に嵌ってしまっており、国民全体が形の無い牢獄に繋がれることになる。

 だが、ゾラはそんな男では無かった。若くして議員となり、そして若くしてホリアーの地位を獲得し将来を嘱望されたことは確かだ。
 しかし、彼の政治手法は古典的で国民に人気が無く、党内の基盤はそれなりに固めたもののナンバーワンとなることはできなかった。
 コンクリアの前任のプレムと2度戦って2度敗れ、3度目の戦いでコンクリアと組んでプレムを破り副議長の椅子を獲得した。
 2期務めたら、コンクリアはゾラに政権を譲る密約を交わしていた。
 しかし、コンクリア政権2期目の途中で、ゾラの政治資金疑惑をマスコミに追及されるという事件が起こった。親族が経営する会社の不正入札疑惑も浮上した。
 この時、コンクリア議長はゾラ副議長を庇った。しかし、マスコミと議会の追及に庇いきれなくなって、ゾラは副議長を辞任せざるを得なくなる。
 そして、追及の矛先はコンクリアの任命責任へと移った。だが、コンクリアはしぶとく粘った。
 ゾラの疑惑は、マスコミや市民団体の追及で拡大して行き、司法の場に持ち込まれることとなったのだが、一審は証拠不十分による無罪。市民団体はすぐさま控訴したが、棄却となる。
 この経緯の中で、私の心はコンクリアから徐々に離れて行った。公然と反旗を翻した訳ではないが、コンクリア議長にたいしても、ゾラを批判する発言は遠慮なく行っていた。
「ゾラを庇ったりせず、潔く、一旦野に下りましょう。そして、ゾラとは決別してください」
 そう提言したが、
『私も本来そうするべきだという想いはある』
と言いながらも、結局議長が辞任することは無かった。
 そして、私が議長と決別しようと決心する出来事が起こった。
 議長は、ゾラを副議長に再任し、国防長官の職まで与えたのだ。
「いったい、どういうつもりなんですか! 貴方、ゾラに何か弱みでも握られてるんですか? 」
 そう詰め寄った。
 普通、ホリアー人事については、私も含めて周りの者に事前の相談、もしくは意図の説明がある。しかし、これについては私には全く知らされていなかったのだ。
「政治だ。君はいつまで青年のつもりでいるのだ。若い時はそのくらいの方がいい。君のそんなところが好きで、私は君に目を掛けて来た。
 しかし、君ももう40を超えている。政界での経験もそれなりに積んで来た。そんな論理だけではやって行けないことは、もういい加減分かって来ているだろうが…… 」
「…… 分かりました。議長の座を手放したく無くなったんですね。貴方でも、一旦権力を手にするとそうなるんですか? 」
「口が過ぎるぞ、ソンデルマ君」
「ゾラは今、確かに世間の評判は良くないが、政界では隠然たる力を持っている。ゾラと決別し、他の誰かと組んでも、今の貴方ではゾラに勝てなくなってしまっている…… そうですね」
「ソンデルマ君。国民の役に立ちたい。国民のための政治がしたい。それが、私の若い時からの夢なんだよ。
 だが、真に自分の思うような政治を行うためには、やはり、一議員では駄目だ、やはり、トップに立たなければ出来ないことも多い。
 長い間その機会に恵まれなかったが、ゾラの協力を得てその地位に辿り着くことが出来たんだ。
 しかし、まだ、やりたいことの10分の1も出来ていない。やり残していることは多いんだ。…… 私にもう少し時間をくれ」
「悪魔に魂を売ってもですか? 」
「悪魔!? そりゃ、ゾラのことを言っているのか? 幾らなんでもそれは言い過ぎだろう。
 ゾラは協力者だ。私に力を貸してくれた男だ。恩義がある。いくら君でも、そこまでの侮辱は許さんぞ。…… 
 確かに欠点も多い男だ。慎重さにも欠ける。だが、ひとを纏める能力は持っている。
 金銭疑惑についても、好ましからぬことではあるが、政治家として陥り勝ちなことだ。そして、何より無罪となっているではないか。禊は済んだのだ。多少の瑕疵はあっても、清潔なだけで無能な奴よりは遥かにましなんだ。
 主婦の街頭インタビューみたいな意見しか、君からは聞けんのかね? 」

 それからの私は、コンクリア議長の許に顔を出すことが少なくなって行った。
 周りの仲間達と意見交換をする機会を増やして行ったが、私の意見に同調する者が以外に多いのに驚いた。
 そして、私を中心とした勉強会が立ち上がることになった。人数は少ないが、その多くがコンクリア派の議員だった。そして、ひとりまたひとりとメンバーは増えて行った。ゾラ派から参加する者は居なかったが、無所属や少数党の若手達も加わって来た。

 最初、不快感を示していたコンクリア議長だったが、ある日突然私は、ゾラとコンクリア議長の推薦でホリアー候補となり、そのまま議会で承認されることになる。
 ゾラと議長が手を組んで、私を抱き込みに掛かったのだろう。私は民政長官に指名された。
「いや、ソンデルマ君、君も大人になった。安心して民政長官を任せられるよ」
 議長は取り込みに成功したことで満足気だった。
 しかし、彼等の感覚からすると、私がとんでもない恩知らずであることに、彼等はまだ気付いていなかったのだ。

小説のコメントコメント
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2019/09/19 16:00 青木 航



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