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『ソンデルマ 4 それは病院から始まった』

青木 航著



『今朝早く、コンクリア議長が意識不明となり、国立病院に収容されたというニュースが入ってまいりました。番組を中断し、この時間はこれについてお伝えします』
 そのニュースが流れたのは、3日前の朝7時前のことである。
 臨時ニュースの30分前には、ホリアー事務局のスラー局長からの緊急連絡を受けて、私は既に国立病院に駆け付けていた。
 他のホリアー達もぞくぞくと駆け付けて来たが、ゾラ副議長兼国防長官の姿はまだ無かった。
 面会は不可能な状態だったので、特別病室の控室で夫人に会った。
「ご心配でしょう。ですが、最高の治療を施しているのですから、きっと回復されますよ。我々皆もそう信じています。どうか、気を強くお持ちください」
「ありがとう、ソンデルマさん。みなさんも忙しいところを、すぐに駆け付けてくださって感謝します」
「健康管理はちゃんとされていたんでしょう? 」
 クラム産業長官が尋ねた。
「それが…… そんな暇は無いと言って怠りがちだったんですよ。
 まったく、こんなことになったら皆さんにご迷惑を掛けるのに、頑固なひとだから私のいうことなど聞かなかったんです。
 それが、今朝着替えている時に突然倒れてそのまま意識不明なんです」
「そうですか。大丈夫、大丈夫ですよ、奥様」
 私はそう言って議長夫人の肩に手を置いた。
 その時、
「いや、すまん。遅くなった」
 スラー事務局長の案内でゾラ副議長が入って来た。
「奥様、本当にびっくりしましたよ。議長はこの国に取って掛け替えの無い方だ。でどうなんです? ご容態は?」
「それがまだ…… 意識が戻らないんですよ」
「そうですか…… で、院長自ら観てるんだろうな。病状についての報告はまだ無いのか? えっ、どうなんだ」
 誰に言うとも無くまくしたてる。
「後ほど院長から説明があるはずです。まだ、緊急措置中ですから。皆様別室にご案内します。そちらで待機してください」
 スラー事務局長が言った。

 別室に移るとゾラ副議長は正面の席にどっかと腰を降ろした。
 自然とその周りにはゾラ派のホリアー達が順に腰を降ろす。私はゾラとは距離を取って反対側に座った。
「皆さん、議長の一刻も早い回復を祈りましょう。
 院長の病状報告を待って色々と考えなければならないが、とは言っても政治の空白は一瞬たりとも許されない。
 今この瞬間に、国民生活に重大な影響を及ぼす事態が起こる可能性も有る訳ですからな。法律に従って副議長である私が議長代理を務める。議長に対してするべき報告はすべて、当面私にするようお願いします。ソンデルマ民政長官宜しいかな? 」
「ええ、勿論。法に従ってそうするつもりです」
「結構。他の方々も異論はありませんね」
 皆頷く。
「報道の方はどうなっている。TVを点けてくれ」
 もう、一報はされているはずです。勿論、詳細については何も発表しておりませんが…… 」
 スラー事務局長が言った。
「当たり前だろう。我々だって、まだ分からんのだから。いいから点けてくれ」

「繰り返しお伝えします。コンクリア議長が今朝早く倒れ、国立病院に入院しました。詳細については、まだ当局は発表しておりませんが、意識が無いということです。
 ここで、政治評論家のマステンさんに伺ってみます。マステンさん、心配ですね」
「そうですね。意識が無いというのは心配ですね。民政分離法案の閣議決定も目の前に迫っていますからね」
「影響はあると思いますか?」
「そりゃ勿論ありますね。そもそも、この民政分離法案というのはゾラ副議長の主導で進められている訳ですから、決定となる可能性が大幅に増えたと思いますね」
「そうすると、反対しているソンデルマ民政長官に取っては、苦しい状況ということですね」
「ええ。そもそも、コンクリア議長は、このふたりの間に立って調整に苦しんでいた訳ですよ。
 与党を2分するようなことになったら、自身の立場も危うくなる訳ですから、何とか和解させようとしていたのでしょうが、これ、どちらも引かないでしょうからね。ストレスも溜まっていたんだと思いますよ。
 そもそも、ソンデルマ民政長官は議長の子飼いなんです。しかし、ゾラ副議長派の協力があって、コンクリア氏は議長の地位に就いた訳ですから、強いことが言えないんじゃないですかね、ゾラ副議長に対して」
「もういい。消せ」
 ゾラ副議長が不快そうに言った。
「全く何なんだ、こいつは。政治の“せ” の字も分からんくせに、自分の推測だけで、それがさも事実であるかのような印象を国民に与え続けている。
 議長の病状のことなどまるで気にしておらん。…… なあ、ソンデルマ君。君と俺が犬猿の仲でもあるかのように言っているが、そんなことはない。俺は君を買ってるよ。時に意見が対立することはあるが、それは政治家として当然だ。
 だが、一旦ホリアー会議での決定が出たら、それに従う。その考えは君も同じだろう。要はそれぞれの主張は主張として、政府や党の決定が出たらそれに従い、党を分裂させないことが大事だ。
 そうだろう。そのぐらいの常識は君も俺も心得ている。そんなこともあの男は分かっておらんで、ただ国民の野次馬的な見方を煽っている。とてもジャーナリストとは言えんな」
 私は少し笑っただけで何も言わなかった。政治評論家の批判をしているような素振りを見せながら、ホリヤー会議の決定が出たら従え。党を割るようなことはするな、と圧力を掛けているのは分かった。自分が勝つと確信しているのだ。
「しかし、この『民政分離法案』というのには、私は絶対に反対です。これはとんでもない法案ですよ」
 TVはまだ流れていた。
「消せと言ったのが聞こえんのか! 」
 ゾラが怒鳴った。
「ああ、申し訳ありません」
 事務局長が慌ててTVを消した。

小説のコメントコメント
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2019/09/19 15:07 青木 航



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