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『ソンデルマ 3 光の中で』

青木 航著



 保安部が保安局に昇格し、司法省から国防省管理下に移ったのは5年前のことである。
 ゾラが副議長兼国防長官となって間も無くのこと。
 もともと保安部は、主に政治犯を扱う部署であるから、権限の強化くらいにしか受け取られていなかったので、特に人々の興味を引くことでは無かった。
 しかし、保安局の取り扱い案件についての裁判を非公開とする法案がゾラ国防長官の腹心のエルター議員から提出された時には議論を呼んだ。
 ゾラ国防長官は、取り調べの過程すべてを可視化し、ホリアー及び議員の請求があればいつでも開示するとの条件付きで強引に法案を成立させた。
 元々法案に反対であった私だが、多数派工作に失敗し法案の成立を受け入れるしかなかった。だが、その後の経緯を見ると、結果が異常であることに気付いたのだ。
 保安局取扱い案件で起訴された者のうち、無罪となった者がひとりもいないのだ。
 死刑もしくは終身刑がほとんどで、後わずかな者が精神疾患によって病院に収容されており、治癒し退院した者はひとりも居ない。
 ゾラ国防長官にそのことを質すと、
『相当の確証が得られた場合にしか逮捕していないからだろう』
と答えた。 
 情報開示を求めて取り調べ記録を精査してみたが、いずれも合法的な取り調べ記録であり、映像にも改変した痕跡は見出せない。
 精神病棟に収容されている者に面会もしてみた。だが、まともな供述を得られるような状態の者は居なかった。
 残るは終身刑となって服役している者の調査だった。異常なことに、普通の刑務所に収容されてはいないのだ。一般の国民には全く知らされていない専用の収容施設が存在する。
 勿論、ホリアーである私には、その存在自体は知らされていたのだが、具体的な所在地までは知らされていなかった。そこで私は、所在地情報の開示と、収容者への聞き取り調査の要求を出した。
 ゾラ国防長官は、取り調べ記録や裁判記録の開示なら応じられるが、一旦刑が確定した者への聴取は司法権への介入の恐れが有るので、具体的な疑義の裏付けを示さない限り受け入れられないと突っぱね、司法長官も同様の見解を示した。
 その頃から、不明の相手からの私に対する脅迫が増えていった。
 脅迫の理由は色々で、保安局とは無関係な内容であったが、それが増え始めた時期は、私がゾラに保安局取扱い事件での無期懲役服役者に対する聴取を要求した時期と一致していた。
 この件に付いての調査は完全に行き詰まってしまった。
 ところが、つい先日、匿名の相手から連絡が入り、直接の接触は避けるとの条件付きで、暗号化されたメールが送られて来て、別に、その暗号解読のためのツールを収録した記憶媒体が郵便で送られて来た。そこに、既に述べた収容施設の実態が説明されていたのだ。だが、裏付けを取ることは出来ていなかった。

 強すぎる照明が精神の落ち着きを妨げ、集中して思考することが難しい。
 部屋の温度管理はされているが、空調によるものではないので、ファンの音ひとつ無い無音状態である。
 勿論部屋に時計は一切無いし、持ち物は全て取り上げられているから、時間の経過も分からない。皓々とした照明の中で、全くの無音。
 時間の経過も分からないことが相乗効果として、精神のバランスを崩して行く。それだけではなく、この状態が長時間継続されることによって、人間の体内時計に狂いが生じ始め、睡眠中枢、自律神経などが影響を受けて来る。
 温度コントロールを使えば、更に露骨な形での拷問も簡単に出来る。凍死寸前にすることも、熱中症を起こさせることも自在だ。
 部屋の温度はコントロールされているから、ベッドの上に蒲団やブランケットは無い。
 従って、それらを被って光を遮断することは出来ない。唯一出来る光の遮断法は、うつ伏せになって枕に顔を押し付けることくらいだろう。
 私はベッドに上がり、うつ伏せになって枕に顔の上部を押し付けた。ところが、その瞬間、枕が光り始めたのだ。目を瞑っていても眩しいほどの光が枕から発せられ続ける。
『くっそ。これも駄目か』
 私はそう呟いた。
 後は、ベッドのマット自体に顔を押し付けるしか無いが、そうした途端に、マットも光り始めるに違いないと思った。そんなことでこの光から逃れられるなら、精神に異常をきたす者は居ないだろうと考えた。
 仕方なく体を起こし見回すと、真っ白な光る壁の中、いつの間にか10センチ四方ほどの緑色のパネルがひとつ浮き出ており、
『尋問は、君が自主的に話したいと思った時に行う。その気になったら、いつでもこのパネルにタッチしなさい』
と赤い文字で書かれている。
 しばらくするとその緑色のパネルは消え、また白い光る壁の一部となってしまったが、タイミングを見てまた現れるものなのだろう。

 どこまで抵抗出来るかは分からないが、あと考えられる方法は、集中して何かを考え続けることくらいしか思い浮かばなかった。
 騒音の中に居ても、集中して何かを考えているとそれが気にならなくなることはある。同じ脳の反応であるならば、光の刺激に対してもそれがある程度有効なのではないかと思えた。そして、私は恐ろしく単純な対策を忘れていたことに気付いたのだ。
 ベッドから降りソファーに座った私は下を向き太腿に肘を突いて両手で目を覆った。床も光っているのだが、これなら防げるだろうと思った。
 しかし、
『そんな簡単なことで逃れられるのか? 』
という疑念もあった。
 そして、その疑念は当たった。
 何と自分の掌が光り始めたのだ。理由は分かった。仕組みまでは分からないが、ストナーに掌を光らせる機能が追加されているのだ。それしか考えられない。
 私は、顔から手を放し、上体を起こした。顔から離したことにより、掌の光はすぐに消えた。
 考え続けるしか無いと思い返し、目を閉じてなお明るい光の中で、私は意識を集中しようとした。それにしても、こんな光を浴び続けていたら、視力に影響が出て来ることは避けられない。いだろうと思った。 

小説のコメントコメント
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2019/09/19 14:43 青木 航



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