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『ソンデルマ 2 まさかの展開』

青木 航著



「早く食事をしてくださいね」
 妻のシルラが入って来て言った。
「ああ、今ダイニングに行こうと思ってたところだ」
「ドクター呼ばなくても大丈夫? 」
「病気というほどじゃない。少し疲れが溜まっていただけだ。睡眠を十分に取ったら回復したよ。おかげで、ピアルクには散々叱られたがね。食欲もある」
「良かった。もうじき会議でしょ。それなら急いで」
「実はそっちの方も、状況が好転したんだ。さあ、戦闘準備をしよう。まずは、腹ごしらえだ」
 そう言って私は両肘をぐるぐると回して見せた。
「子供みたいね」
 妻が笑った。

 その時、アラームが鳴り響いた。その警告音は、ディフェンダーが強制解除され誰かが侵入して来たことを表している。泥棒やギャングにはそんなことは出来ない。保安局以外にそんなことが出来る者はいないはずだ。まず間違い無いだろう。しかし、どういうことだ!

「ソンデルマ長官。お忙しいところ突然お邪魔して申し訳ありません」
 強引に押し入って来たくせに、わざとらしく丁寧な挨拶をしたのは、保安局長のハミル大佐だ。5〜6人の部下を連れている。普段から虫の好かない男ではある。ゾラ副議長の腰巾着。
「どういうことだ! 何かの間違いでは済まされんぞ」
  シルラが私に走り寄って、左腕にしがみ付いた。
「間違いではありません。私は公務としてあなたを逮捕しに参りました」
「逮捕だと…… ? 何の容疑で? 第一、君にそんな権限は無い」
「ひとつづつお答えしましょう。まず、容疑は”国家反逆罪” です」
「ふざけるな! 」
「二つ目の答えは、ホリヤー最高会議の決定に基づいた議長命令よるものです」
「議長は倒れて、今昏睡状態にある。いい加減なことを言うな! 」
「あ、まだご存知なかったんですね。夕べ前議長は意識を取り戻されましてね。ご自分の病状を自覚されたのでしょうね。体調不良による辞任を表明されました。
 そこで、ゾラ副議長が基本法の規定に従い議長代行に就き、今朝早く臨時ホリヤー最高会議を招集して、出席者全員の推薦を受けて正式に議長に就任されたんですよ」
「臨時ホリヤー最高会議の招集など、私は知らん」
「ソンデルマ民政長官には、どうしても連絡が取れなかったと聞いております」
「ふん。君が今こうして私と向かい合っているのに、どうしても連絡が取れなかっただと…… 。
 それに、『出席者全員の推薦を受けて』と言ったな。私は今、ピアルクとケルマーと話したばかりだ。
 彼らは、そんなこと何も言っていなかったぞ。 
 今朝早くの臨時ホリヤー最高会議とやらの情報開示を要求する」
 ハミル大佐の顔から、作り物の笑みが消えた。
「おっと。私としたことが、肝心なことを忘れておりました。
 あなたは、臨時ホリヤー最高会議で民政長官を解任され、ホリヤーの身分も剥奪されていたのでした。
 従って、臨時ホリヤー最高会議の情報開示を要求する権利は無い。
 ソンデルマ。お前の寝言にいつまで付き合っている暇は無いんだ。 ”国家反逆罪” で逮捕させてもらう」
「ハミル大佐。容疑は正確に伝えなければならんぞ。”国家反逆罪” ではなく、”ゾラに対する反逆罪” と言ったらどうだ? もっとも、そんな罪は法文のどこを見ても有りはしないがな。これはクーデターだ。ゾラは独裁者になろうとしている」

 部下のひとりが進み出て、いきなり私の右腕を捩じ上げ、手首にリストバンドをはめた。
 ストナーと呼ばれるこのリストバンドを装着されたら終わりだ。
 昔使われていた手錠とは違い片腕だけだし、普通に動いている分には手も足も全く自由に動かせる。
 しかし、逃げようとしたり襲い掛かろうとすれば、その瞬間に耐えがたい痛みが全神経に走り、全身が硬直して転倒してしまうのだ。
 凶悪犯だろうが格闘家であろうが、これに逆らうことは出来ない。だから、このストナーのお陰で、ひとりの警官が10人の容疑者を護送することも可能になった。

「妻をどうするつもりだ? 」
 ハミル大佐に聞いた。
「心配するな。これまで通りここに居てもらう。我々が保護しているから安心しろ」
「自宅軟禁という訳か。シルラ、自分をしっかり持って耐えるのだ。兵士や警官と同じように、政治家というものも、時には命の危険を覚悟しなければならない職業なのだ。特にこんな国ではな。…… 心配するな、必ず戻って来る」
「ソンデルマ君、ご協力ありがとう。今、
『こんな国では』
とか何とかと言ったな。国家反逆罪の裏付けがまたひとつ増えたようだ。しっかり記録されているぞ」
 シルラが必至に私にしがみ付いて来た。ハミル大佐の部下がシルラに近寄り引き剥がそうとする。
「妻に触るな! 」
 そう怒鳴った。
 シルラの手をやさしく撫でながら、指1本1本を順に剥がした。力を入れて剥がそうとすればストナーが作動して、激烈な痛みと共にたちまちひっくり返ってしまうからだ。

 保安局に連行され、すぐに拘置室に入れられた。
 このまま最低一晩は過ごすことになるだろう。いきなり取り調べを行うことはないはずだ。
 光沢のある白い壁。天井も床も同じように光沢のある白だ。拘置室とは思えない快適そうなベッドにソファーまである。窓は無いが、壁の一部には木々や花のある庭の風景が写し出されている。まるで、病院の上等な個室のような雰囲気だ。
 ところが、この拘置室は、一瞬にして拷問室にも洗脳室にも変わる。と言っても肉体を痛めつける暴力が振るわれる訳ではない。
 軽いやり方から説明すれば、例えば壁の庭の映像を消して、まぶしいほどの光量の照明を当てる。壁も床も天井も時間に関係無く輝き続けるので、眠ることも出来ない。
 1日で結果が得られなければ、2日でも3日でもその状態を続ける。逆に、真っ暗な中に放置することもある。
 更に、この部屋は完全な防音室になっており、どちらの場合も完全に音を遮断して行う。これだけで、ほとんどの者は精神のバランスを失い、自ら有ること無いこと喋ってしまうことになるのだ。
 更に手の込んだ攻め方をする場合もある。
 若い思想犯などに使う場合が多いが、例えば、容疑者の母親が涙を流しながら訴えかける映像を流し続ける。何も本物の母親に延々と語らせる必要は無い。どんな映像でも母親の映像が入手出来れば、後は台本を作りCGで制作出来る。だから、保安局には映像企画部というのが有り、スクリプターもCG制作の技術者も居る。
 そんな訳で、取り調べ室に入る時の容疑者は、既に落ちている。
 取り調べは完全に可視化されている。取調官は脅すことも賺すことも無く、ごく普通の態度で取り調べを進めて行き、思い通りの供述を引き出すことが出来るのだ。そして、最後に供述書に署名させ、DNAサンプルの唾液を採取して指定の容器に入れ共通のNOタグを付け、封印するところまでを映像に残し、供述調書、映像、DNAサンプルをセットにして裁判所に提出するのだ。

 保安局が違法な精神的拷問を行っているという情報を得たことはある。
 しかし、民政局長官の立場で、ゾラ副議長の管理下にある保安局を調査し実態を暴くことは難しかった。
 結局確証が得られないまま疑惑だけを持ち続けていた。
 だが、まさか自らがそれを体験することになるとは思ってもみなかった。しかし私が、その体験を証拠としてゾラを追及することは無いだろう。
 もし、精神的拷問を私に使うとしたら、そのまま国家反逆罪で私を死刑にする以外の選択肢は、ゾラには有り得ないはずだから。

小説のコメントコメント
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2019/09/19 13:59 青木 航



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