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『意識体転送』

3代目キセノン著



●1.旅立ち
 堀口は視界の端に映る赤い点に掘削機を持っていき、銀色に輝く月面を掘削していた。空を見上げると遥かかなたに青い地球が浮かんでいた。
「今日の作業は、後1時間程で終了だ。堀口、今日は、銀座にでも飲みに行くか」
同僚の和田から無線が入った。
「それは、良い考えだが、俺はちょっと残業するかもしれない、30分程遅れるが良いか」
「斜長石の大きな鉱脈でも見つけたか」
「わからんが、もう少し掘ってみたいんだよ」
「そうか、わかった。柴田と先に例の居酒屋に行っているぜ」

 堀口は、掘削機で掘り進み、月面の表面から3メートル程下にいた。視界の端に表示されているモニターの赤い点が、どんどん増えていた。モニターには、推定埋蔵量9500トンと表示されていた。
「掘削統括センター、こちら堀口、今俺がいる座標を記録しておいたか」
「残業になってからはモニターしていましたから、もちろんです」
センターの担当者の女性は、愛想良く応えていた。
「そうか。それじゃ、今日の作業はこれで終了する。以上」
 堀口はそう言うと、意識体を月面掘削ロボットから、自分の本来の体に戻した。北千住にある掘削地上センターの作業員専用ソファから立ち上がった。和田と柴田が座っていた隣とその隣のソファは既に空になっていた。

 銀座の居酒屋には、赤ら顔の和田と柴田がいた。
「よぉ来たか、どうだった」
和田は、堀口の席に置いておいたバッグをどかした。
「バッチリ鉱脈にぶち当たった」
「どれくらいの鉱脈なんだよ」
柴田も興味津々であった。
「9500トンクラスだよ」
「すげぇな、特別ボーナスは100万は出るだろう。今日のここの払いを頼むぜ」
和田は堀口の肩をたたく。
「おおっと、取らぬ狸の皮算用だ、ここはきっちりと割り勘だ」
「それで話は変わるが、会社は惑星探査に乗り出すって噂だよ」
柴田はビールをゴクリと飲んでから言い出した。
「惑星って火星だよな」
和田は全員に同意を求めるように言う。
「たぶんな、それ以外に行きようがないだろう」
柴田は、さも当然のようにしていた。
「だよな」
堀口も相槌は打っているが、その話を既に聞いていて機密事項の行先を知っていた。

 種子島の宇宙センターでは、打ち上げの秒読みをしているロケットがあった。「5.4.3.2.1」カウントダウンする声が聞こえてくる。ロケットは火柱を吐きながら青空を駆け上って行った。
 ロケットは軌道上で宇宙船のパーツを分離させた。宇宙船のパーツは、既に軌道上にある別のバーツと結合した。3回の打ち上げで完成した宇宙船は、ちょっとした軌道ステーション並みの大きさになっていた。

 北千住の地上センターの会議室には、堀口たちが呼び出されていた。センター長が、演台に立って説明をしていた。
「我が国は、有人探査をする予算がないのですが、ロボット探査ならできます。そこで、中国に先を越された火星の有人探査の上を行く探査を実行することになりました。先ほど地球を発った宇宙船の行先は12光年先の惑星です。人類初の太陽系外惑星の探査を行います」
センター長は演壇の水を飲む。
「えっ、例の惑星探査って太陽系外なのですか」
和田は、思わず声を上げていた。
「いかにも。この宇宙船は人が乗っていないので、光速のほぼ3分の1の速度が出せます。36年かけてその惑星に向かうわけです」
センター長は手を挙げた柴田を指さす。
「それで、我々の意識体と適合性のあるロボットを乗せたのですか」
「いかにも。ですから君らには、36年後に惑星探査のミッションについてもらたい」
センター長は、プロジェクターで映し出される宇宙船の映像を見ていた。
 和田「ずいぶんと先の話だよな」
  和田は、隣に座っている堀口に言った。
「壮大な計画じゃないか。実に面白い。それまで、月や火星で働けということみたいだがな」
「堀口、あまり驚いてないみたいだな」
 センター長が咳ばらいをする。
「君らと適合性のあるロボットばかりでなく、もう1名分のロボットも積んである」
「その話は聞いてなかったですけど、誰ですか」
今度は堀口が切り出した。
「俺ら以外に意識体を転送できる奴らいるのですか」
和田も同調した。
「羽鳥彩夏博士用ののロボットです」
 堀口たちは、ざわついていた。
「羽鳥彩夏って生物学の博士号を取るために引退した元アイドルだろう」
と堀口。
「俺、ファンだったんだよな」
柴田は昔を思い出していた。
「できたら一緒に宇宙船に乗りたかったところだな」
和田は、ニヤついていた。
 センター長が咳払いをする。
「彼女と面識はないと思うが、生物学の第一人者だ。この36年間の間に何回か会うことになるだろう。あぁそれと超寿処置は忘れるなよ」

 それから2年後、堀口のチームは、国際軌道ステーションの組立て部門に転属となった。
「そろそろ俺のロボットを新しいのにしてくれないかな」
堀口は意識体が転送されているロボットのアームを動かしていた。
「お前のはまだいいぞ、俺のなんか握力がなくなってきている」
無線を通して和田の声が聞こえてきた。柴田のロボットも作業に参加しているが、柴田はクラシックを聞きながらであった。
 3体のロボットは、ステーションのソーラーパネルを組立てていた。急に警報がなり、堀口たちの意識体は、北千住の地上センターに戻された。

 「何事ですか」
ソファから立ち上がる堀口。目の前にはセンター長が立っていた。
「惑星探査船に問題が発生した。直ちに意識体を船内のロボットに転送してくれ」
「あのぉ羽鳥さんは…、ここに来ていないのですか」
和田は、口ごもるように言っていた。
「今日は来ない、君らだけで対処してくれ」
「了解しました」
堀口はそっと目を閉じた。

 ロボットの瞳孔が動き、ロボットAが起き上がる。堀口の意識体は惑星探査船『うちゅう』内のロボットAに転送されていた。和田のロボットB、柴田のロボットCも動き出した。
「無線連絡によると船体に微小隕石が衝突とあったが、どこだろう」
堀口の意識体は、ロボットAとリンクしている船内コンピューターに直接アクセスする。
「なるほど、右舷後方の船体に亀裂が入っている」
「堀口、それじゃ、船外作業になるのか」
和田は、無線経由で言ってきた。
「そうなるな」
「もし、ここに人が乗っていたら、どうなっていたんだ」
柴田の声がした。
「このロボットが置いてある部屋も気密性が保てないから、窒息死だろうな」
ロボットAは、部屋のハッチを開けていた。

 ロボットAは損傷ヶ所に補修パテを塗りたくっていた。船体の亀裂はきれいに塞がった。
「和田、そっちはどうだ」
堀口がロボットBを呼びかけるが全く反応がなかった。
「あいつ、もう北千住に戻ってしまったのか」
堀口は独り言を言ってからまた呼びかけた。
「こちらロボットC、船体点検終了。他に異常なしだ」
「柴田、和田から連絡がないんだが、そちらからロボットBは見えるか」
「見えることは見えるが、そうだな、動いていないようだ」
「行ってみよう」

 ロボットBの胸部には、微小隕石が通過したと思われる小さな穴が開いていた。
「これじゃ、バッテリーとコントローラーを直撃している何も作業はできない」
堀口は、視野の端にあるモニター画面に投影されたスキャンデータを把握していた。
「和田の意識体は、強制的に北千住に戻されたんでしょう」
「ということは、ロボットBを修理しない限り、この先、俺と柴田で任務遂行と言うことだな」
「堀口、我々もさっさと船内に戻った方が良いのではないか」
 ロボットAとCはロボットBを引っ張って船内に戻っていった。

 北千住の地上センター。
「やられたよ。俺のロボットは何一つ動かないと思ったら、ここに戻っていた」
「和田は、名誉の戦死というところだな」
堀口は、冗談交じりに言う。
「あぁ、ぁ、羽鳥彩夏とは、一緒に探査ができなくなったか」
「修理すりゃ、いいだろう」
「部品もなしにか」
和田は残念そうにしていた。

小説のコメントコメント
この作品の著作権は、作者である 3代目キセノン さんに帰属します。無断転載等を禁じます。

こちらは第1話です。
2018/08/23 13:53 3代目キセノン



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