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SF/ホラー/ミステリー

『菊花鬼』

志水雄鬼著



「 菊花鬼 」

母上、私は鬼に恋してしまいました―

月が眼前、遥か高く高く上っている。辺りの林は静まり返り、先程まで虫が鳴いていたことが嘘のようである。頼光は唯一人、息を荒く吐き、せいていた。それを一匹の、―美しき鬼が見下ろす。
二者の周りを静寂のみが取り持ち、双方どちらとも麗しく澄んだ眼が交錯するのみである。
「これが…」
鬼は声高く、透き通るように言葉を吐いたが、その先はない。
鬼の背後、遥か頭上の高く捧げられた月天心、その仄かな明りで鬼の顔は見えないが、頼光は確かにこの目の前の鬼を美しいと感じた。周囲には血が散漫と飛び散り、首や腕の無くなった頼光と伴に激しく抗った仲間の遺体が二者の周りに散らばる。

鬼は鮮血を煽り、月光で艶やかに照り渡る己が刃を頼光の手斧皮一枚手前に構えている。
頼光の刀は折れ朽ち使い物になるまい。この状況は誰が見ても頼光の命の終わりを感じる決定的な状況ではあった。しかし、当の本人にしてみれば、益々その様な状況を心に染み込ませる程、どこか胸の奥から丁度、鬼の背を照らす高き頭上の月に向かって跳ね上がるようなものを感じるのであった。
今手斧に当たる刀の冷たい刃先と、鬼と月。そしてその恍惚とした何かが頼光のすべてであった。
「なあ、汝(んの)よ。汝は美しいということを知っているのであろう?」
鬼なそう冷たく問い詰めた。その目には仄かな幼さが見えていた。
「美しい…なんのことであろうか。ただこの瞬間をずっと感じていたい。それが美しさであると拙は答えかねる」
鬼は黙して微動だにしない。頼光は続きを吹き出すように言った。
「千歳(ちとせ)を生きる鬼の女よ」
鬼はなにも返さない。
「汝(なんじ)は尤も美しい」

―振り上げられた白い一筋の線が降り落とされた。


小説のコメントコメント
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2018/06/30 13:57 志水雄鬼



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