ミステリー小説・SF小説・ホラー小説の投稿サイト・ShortSTORY・ジャンル別にページが分かれています。

小説 投稿 サイト・短編・掌編・長編。ミステリー小説・SF小説・ホラー小説の投稿

SF/ホラー/ミステリー

『春、息吹く』

志水雄鬼著



湯屋町の片隅、窓が開いた小部屋に小太郎は腕を枕にし、空を巡る満天の星をみていた。その空の静けさは小太郎の心そのものでもあった。
視野の遠くに連山を臨む。昨日まで降っていた雪は止み、冬の澄んだ眼のような空からは何も降ってくるものはなかった。
その静けさのなか、「輪廻」というものがあるかと小太郎は考える。「今ここ」を無くした自分の存在というのは、本当に自分だろうか。ここで小太郎は自分というものの証明をなくし、すべてを無にする。
考えても分かりようのないことは考えないことである。
少し風が出てきた。傍に侍らせた火鉢の火が揺れる。躍りのようだ。火がちろちろ揺れていた。
小太郎はのっそり起き上がり、窓を閉めた。
輪廻があろうとも、またこの星空をいつかまた見られるなら幸せの一言に尽きる。
下に降りると小谷婦人が夕餉の鍋を掻き回しているところであった。湯気が立っている。婦人は丁度後向きで鍋を混ぜているところであった。ピンクのエプロンが水色のスウェットに似合っている。

―そこまで書いて顔を上げてはみた。桜が咲いている。
春である。私は小さく息を吐いた。
美しい。日本はやはり桜が似合っている。どきどき自分がわからなくなる時もある。なんのために書くか…。
静かな西日がそれを知っている。
誰かから願われた。その思いに報いたい。それだけなのだ。ホワイトボードにはまだ文字が踊る余地はある。私は青く太いペンを執る。作家は目隠し芸と同じだ。目隠ししたまま確かにあると信じるゴールまで予覚と感覚だけを便りにそこを目指す。それはいつかの自分のため。あの時のいつかの空に自分を重ねながら、今を生きる。儚い明日へ。風を手繰りながら。


小説のコメントコメント
この作品の著作権は、作者である 志水雄鬼 さんに帰属します。無断転載等を禁じます。


2018/06/30 13:52 志水雄鬼



このページの先頭に戻る ↑ 

はじめての方へ

小説投稿サイト・ShortSTORY

小説投稿サイトとは?

ミステリー小説・SF小説・ホラー小説の投稿。短編・掌編・長編オンライン小説/ネット小説投稿サイト『ShortSTORY』、ミステリー小説・SF小説・ホラー小説の投稿が無料。感想やコミュニティでの意見交換など

坂口安吾のすべて
チェンマイのレンタカー
レンタルバイク【チェンマイ】
チェンマイ・焼肉・日本式
チェンマイ・居酒屋・日本料理・和食・ガガガ咲か場