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現代小説/歴史小説

『姉ぞ愛しき−迦陀編』

加馬土 登由著



師木津から磐船が出港します。天皇の御座船です。海流に乗り北北西に針路を取ります。大連へ向かうのです。
護衛の軍艦を十艘も従えています。しかし、天皇の行幸ではありません。新天皇の即位を友好國に伝達する為の艦隊です。
特使の男が艦橋に登ります。小柄な男です。天皇に直属する憲兵隊総長の地位に在る男です。男は無表情です。
先代天皇は暗殺されたのです。暗殺者は不明です。先代天皇の体制においても、この男は憲兵隊総長の地位にあったのです。
天皇の身辺警護に全責任を負う立場だったのです。本来なら、殉死すべきだったのです。後継天皇は、この男に報復を勅命し、
死すべき命を預かったのです。そればかりか、新天皇嫡女との結婚を正式に認可し、報復の作戦行動の軍資とするべく、
大封を与えられたのです。天皇からインドネシア王に任じられた、この男の名はサメマ。新天皇の名はニギハヤヒ。
荒れた海が、任務の難しさを象徴するのです。海を凝視しながら、サメマは先代天皇・~沼河耳の死の有様を考えます。

~沼河耳は剣の達人だったのです。常時五百人の護衛を率いて行動していたのです。屈強の兵士達です。
それら一切が、ある時、消息不明となったのです。海軍の情報では、ブルネイを出発し、陶津方面へ移動したのです。
陶津は現在のハイフォンです。~沼河耳の出身地でもあります。その後、勝浦(カムラン湾)の海軍基地が襲撃を受け、
襲撃者が~沼河耳の殺害を宣言したのです。襲撃者の一手の将が、かっての舎弟・千千速であり、千千速は堂々と、
約定を破った処罰として、~沼河耳をハノイに誘き出し、殺害した。と犯行声明したのです。
海軍陸戦隊がハノイに急行したところ、駐屯部隊は全滅しており、謎の武装勢力から襲撃されて海上に撤収したのです。
武装勢力は山越人民解放戦線を自称していたのです。北ベトナム山岳地帯に根拠地を持つように推定されています。
海軍は情報収集と分析のプロでは無いのです。敵対勢力の正体は不明なのです。敵の正体を突き止め、報復を果たすのが
サメマの責務なのです。この目的を果たすべく、サメマは新天皇から、新設された海洋武装警察の総監の地位を与えられたのです。

岩無島が見えて来ます。現在の珍島です。小船団が艦隊に近接し、合流します。半島南岸警備隊です。半島南部には、
大倭に敵対できるような勢力は存在しないのです。にもかかわらず、先代天皇は警備隊を設営したのです。
先代天皇は某暗殺者を、警戒し、恐れていたのです。その暗殺者は女子です。六年前、琅邪沖で天皇暗殺未遂事件があったのです。
女子暗殺者が、天皇の乗った軍艦の底に張り付き、穴を開けて、天皇もろともに軍艦を沈没させようと画策したのです。
暗殺者が酸素補給のため水面に浮上したところを、運良く発見して、犯行を未遂に終わらせることが出来たのです。
暗殺者は、驚異的な潜水能力を持っていたのです。この潜水渡海能力を警戒し、半島南岸を重点警備する治安部隊が
設営されたのです。サメマの率いる大倭憲兵隊の通称はヤタガラスです。黒の着衣を制服として行動する特殊部隊です。
琅邪沖事件以来、ヤタガラスは大倭本國の治安維持から任務を拡大し、大倭領海全体の公安任務をも担当することになったのです。
大倭本國との交易の相手港にも、公安部隊を配置するようになったのです。相手港は、琅邪、杭州、台北の三箇所です。
更には、南シナ海と、インド洋を繋ぐ、マラッカ海峡とスンダ海峡、ロンボク海峡の三箇所にも、憲兵隊を常駐させることに
したのです。

サメマが徹底捜査を行った結果、暗殺者の正体は割れたのです。天皇暗殺未遂事件の数ヶ月前の時期に、先代天皇に謁見し、
天皇の愛妾になりたい、と申し出た二人組の美少女が居たのです。二人は馬氏姉妹を名乗り、訳有って荊州から流れて来た、
と自己申告したのです。琅邪沖で天皇を襲撃した潜水女子は、馬氏妹の方で馬土(MaTu)を名乗っていたのです。
先代天皇は女に興味が無い性格であり、上納金のみ受け取り紹介者に、お前が好きにしろ、と下げ渡したのです。
天皇の懐に潜り込む工作に失敗した馬土は、海中襲撃と云う思い切った凶行に出たのです。
紹介者は山ノ~を名乗る男で、山ノ民と云う暴力団の首領だったのです。~沼河耳天皇に対して、既得権益を主張し、
対等の立場であることを主張した輩です。~沼河耳天皇は最初は、其の主張に耳を傾け、其の存在を容認していたのですが、
ある時期に決断を下し、軍隊を動員して、山ノ民を討伐し、山ノ~を誅殺したのです。

山ノ~はイタイと云う男です。其のイタイの母が、例の千千速なのです。千千速は男では無く、女なのです。
千千速も亦、大倭建國に大金を出資した事を根拠に、~沼河耳天皇と対等の共同建國者の地位を主張していたのです。
~沼河耳天皇は、山ノ民討伐に同期して、千千速を皇籍剥奪して、國外追放処分にしたのです。千千速が自分の息子に、
大金をくれてやり、その活動を支援していたからです。イタイには、もう一人、支援者が居たのです。
長江曾都毘古と云う男です。サメマが済州島に来た時、長江は済州島王家の軍事顧問をやっていたのです。
其の済州島王は酒と女に溺れるダメ男だったのです。対極に、学者肌で武術もよくする副王が居たのです。
長江は副王を焚きつけ、クーデターを興させたのです。サメマが闘った大倭建國戦争は、其の副王を名義人とする
内紛だったのです。ただし、最終段で仕掛けがあり、副王は済州島上陸を阻まれ、結果的に人民戦争が成就したのです。
クーデターを演出した長江は、目もくらむ程の報奨金を受け取り、生まれ故郷の荊州に移り、軍事ブローカー業をやり出した
のです。長江は~沼河耳天皇の義弟の地位を得ていたのですが、山ノ民討伐に合わせて、絶縁処分とし、大倭領域への出入りを
禁止したのです。

サメマ達は、多島一家五代目・日子八井耳天皇に従って済州島に密航して来たのです。密航船の船長が~沼河耳天皇の
日嗣御子となった男です。大倭海軍を建軍し、~沼河耳天皇に大きな貢献をした良き男だったのです。
天皇の死に際して殉死し、その名跡を新天皇に譲った其の男が日嗣ヒコクニクルです。
千千速は日嗣ヒコクニクルの妹で、密航船の所有者だったのです。苅羽田刀辨を名乗る女ヤクザで、経済ヤクザとして
羽振りを利かせていた女です。日嗣ヒコクニクルの母が、女王の天照カニメです。天照は済州島王と婚約していたのです。
日子八井耳は構わず天照を自分の女にし、天照の妹も犯して自分の女にしたのです。その天照妹が月読ハエイロドです。
天照には、月読ハエイロドよりも半年先に生まれた嫡女が居たのです。その女子の名がBEIMIHUです。言葉がしゃべれない
低脳児の意味です。当時BEIMIHUは妊娠していたので、女好きの日子八井耳でも、敢えて手を出さなかったのです。
妹の月読ハエイロドに手を出した事を嫉妬したBEIMIHUは、日子八井耳とタイマンを張り、日子八井耳を殺してしまったのです。
日子八井耳はステゴロの達人だったのですが、BEIMIHUは、それを上回る怪物的女子だったのです。
BEIMIHUの父はツンガと云う男です。伝説的傭兵として有名だった巨人戦士です。しかし、この時は衰えて寝たきりに近い状態で、
千千速に家督を譲っていたのです。BEIMIHUを止めようとしたツンガは、何かの弾みで転倒し、そのまま死んでしまったのです。

BEIMIHUを妊娠させていた男が、山ノ~イタイなのです。イタイは部下を集めて、ツンガの家を囲み、多島一家を威嚇して来た
のです。千千速が間に入ってワビ入れし、ツンガの苅羽井家と多島一家とは、家を合わせる事で、決着したのです。
千千速は長江と組んで、クーデター計画を進行させていたのです。サメマ達も、そこへ引き込まれることになったのです。
日嗣ヒコクニクルを建て、日子八井耳の跡目を取った~沼河耳天皇は、日嗣御子、サメマと共に千千速が師木津に構えていた
苅羽田刀辨愚連隊本部事務所の地下シェルターに籠り、軍略を練ります。長江曾都毘古こと諸葛城(ZhuGeChen)も地下シェルター
に来て軍議を重ね、クーデター計画を練り直します。諸葛城の過去の名は、陳武(ChengWu)。孫家軍閥に仕えて頭角を現し、
一手の将だった男です。諸葛城は、済州島王家の軍事顧問として、済州島で働く数多くの中国人傭兵に暗黙の指揮権を行使できる
地位にいたのです。そして、済州島王家の私設海軍にも工作を浸透させ、有事の際の局外中立を約束させていたのです。

諸葛城は、済州島副王の親衛隊長も兼任しており、全島の治安維持の実務的な総責任者でもあったのです。当時の新興ヤクザ
だった千千速を支配下に取り込んでいただけではなく、千千速の息子が首領を務める山ノ民をも、制御下に置いていたのです。
千千速が資金稼ぎで運営していた密航ビジネスに、サメマ達は乗せられたのです。密航者を屠殺する役割を担ったのが山ノ民
であり、山ノ民の側からすれば、多島一家は利用価値があるので活かしめただけなのです。多島一家六代目・~沼河耳天皇の
政権と山ノ民との抗争のエスカレーションは必然であり、六年前に、その決着がついたはずなのです。一連の敵対勢力の
黒幕として、絶縁処分とした諸葛城は、その後は消息不明です。~沼河耳天皇は、かっての特殊舎弟だった諸葛城を
直接的に追い詰める事はしなかったのです。しかし、中国で相克する三個の王朝の公安機関に、諸葛城に関する情報を通達し、
諸葛城の謀略活動を窒息させる策を行使したのです。~沼河耳天皇消息不明事件と、諸葛城との関連は不明です。
それを解明するのが、今からのサメマの仕事なのです。

半島南岸警備隊の幹部連が、甲板に整列しおわったようです。サメマは彼等に適切な訓示を行い、警備活動を督励します。
半島南岸警備隊は艦隊から離れ、持ち場へと戻って行きます。艦隊は北上を続けます。仁川沖を過ぎ、江華島に接近します。
この江華島こそが、サメマの艦隊の元の根拠地なのです。狭い水道に進入した艦隊は停泊行動を行い、補給を行います。
サメマも下船し、江華島鎮守府に向かいます。后の女子も連れて行きます。江華島の軍事責任者は、其の女子の双子の
兄なのです。イホキと名乗っていた男です。今は先代日嗣御子の御名を継承し、イツセを名乗ります。先代日嗣御子の
異父弟なのです。六歳余の少年武将ですが、勇猛な男です。生まれた時から、大倭を背負って建つ戦士と成るべく、
軍事エリート教育を受けた結果なのです。当代の天皇の養嗣子でもあります。一方で、其の双子の妹で、サメマの后と
成った女子は、次期女王としてのエリート教育を受けた女子なのです。サメマは報復を成し遂げれば、次期天皇候補筆頭
の地位を確立できる立ち位置に居るのです。サメマとイツセとの会見が始まります。

「兄ぞ愛しき!」下座に控えたイツセが挨拶し、言葉を続けます。

「義兄よ。この度は、父天皇の威光を諸国に知らしめるべく、遠國まで巡行されると聞いています。
その責務を無事果たされることを祈念します。」

サメマが返答します。
「承知した。お前は天皇の養嗣子として、最も近い領土に封じられているのだ。大倭本國に有事があれば、お前の働きが
期待されるのだ。その事を忘れるな。励め!」

「兄ぞ愛しき!」イツセは承服を全身の所作にて示し、サメマの側に控える妹に声を掛けます。

「サヌウよ! 義兄サメマに、しっかり仕えるのだぞ!」

サヌウと呼ばれた女子は返答します。
「承知致しました。私は既にサメマの子を妊娠しているのです。冬が来れば出産する予定です。
私は父天皇から、南ノ島を封土して頂いたのです。出産は其処で行います。」

これに関しては、イツセは初耳なので、驚きます。サメマの諸国巡行は、新婚旅行も兼ねているようです。
「サヌウよ! 良き子を産むのだぞ!」

サヌウと呼ばれた女子は返答します。
「承知致しました。しかし私は今はサヌウではありません。波礼(BoLi)と云う名を、サメマから頂戴しております。」

イツセは、妹がいつの間にか、大人の女になっている事に驚きます。
波礼が、父天皇から化粧代として与えられた封土地であるバリ島で、産むことに子が魔率(MoLu)です。
大倭最強戦士・住吉中筒男と成る宿命を背負った男子なのです。

サメマは無表情です。公私の別をわきまえた男なのです。
「イツセよ。天皇の威光を諸国に知らしめる事は、あくまで大義名分なのだ。今回の私の巡行は、
先代天皇・~沼河耳を殺した輩の正体を突き止め、報復を成し遂げることにあるのだ。困難があっても、私はやり抜くつもりだ。」

サメマとイツセとは軍事情報の交換を始めます。波礼も加わり、しっかりと聞き入ります。大倭では、男女の別無く戦士であり、
軍事が第一優先事項なのです。

江華島を離れたサメマの艦隊は、黄海を旋回する海流に乗り、大連を指向します。其処には大倭を後見してくれる大物武将、
満州と朝鮮半島を棟梁する有力者が居るのです。その男が遼東太守・公孫晃です。

大連に着到したサメマは、波礼を連れて南山要塞に登城します。城門で出迎える騎馬戦士の一団がいます。
騎馬部隊の指揮官が下馬して挨拶しようとしますが、それよりも早く、サメマと波礼が膝ま着き、
「兄ぞ愛しき!」と挨拶します。
指揮官は当代天皇の実子なのです。そして、天皇の日嗣御子なのです。日嗣御子は天皇が即位に際して、~に奉げる
生きた~器なのです。天皇よりも~に近い、神聖不可侵な存在なのです。

「サメマよ! 私の義父、義兄、実兄が、あなたを待っている。ついて来て欲しい。」

日嗣御子が、そう云って、サメマ達を誘導します。迷路のような軍道を登り下りしながら、一行は、遼東太守の本営へ向かいます。
南山要塞は実戦仕様の軍事要塞なのです。難攻不落と呼ばれています。敵の包囲を受けても、三年間は持ちこたえられるだけの
食料の備蓄も有ります。サメマは本営たる質素な兵舎に入場します。

其処にいたのは、遼東太守・公孫晃、飛将軍・公孫淵、歩兵将軍・劉延、内務大臣格の公孫恭、の面々です。
日嗣御子は、公孫晃を義父、公孫淵を義兄、として仕えているのです。下座には、警護主任の男が控えています。
日嗣御子の実兄です。この男が大毘古なのです。公孫晃義子として、公孫弓(GongSunGong)を名を与えられています。
文字通り、馬上弓の達人です。大倭王族名はイナル。オデコがとても出っ張っています。実姉が例のBEIMIHUです。
大毘古イナルは、実姉BEIMIHUと実に、骨相が似ているのです。BEIMIHUの雅称が「高額比賣」なのです。
サメマは、挨拶を済ませた波礼に退去を促します。軍事会議が始まるのです。波礼は日嗣御子の指揮下に加わり、
警護官の一人となります。波礼は山のような巨体の持主なのです。養育した義兄・狗奴國王イサセリビコから武芸を修得しています。
槍を得意とします。ただし、人を殺すための攻撃精神は教育されていません。あくまでも自分の身を護る為の護身術なのです。

兵舎の中では、公安的議論が白熱しています。
公孫恭が掌握している犯罪者リストに、サメマが知る馬氏姉妹に該当する人物が見つかったのです。

流美(LiuMei):蘭州出身。女医。身長178cm。細身。色白。爆乳。推定年齢15歳。
八河江(BaHeJiang):華南出身。料理の達人。身長162cm。筋骨太。色黒。貧乳。推定年齢12歳。

魏朝公安機関から通達された情報によると、これら二人組の女子暗殺者が、某老将の屋敷に潜入し、毒殺を図った。との情報です。
サメマが知る、馬氏姉妹と照合すれば、馬氏妹・馬土(MaTu)の方が、八河江にピッタリ符合します。馬土は、自分が料理を得意と
することを、熱心にアピールしていたのです。馬氏姉・馬豆(MaDou)の方は、流美とは少しズレています。

任務に応じて行動チームを組替えているのかも知れません。
呉朝から通達された極秘治安情報にも、該当者有りです。

阿斯(ASu):荊州南部・擢陽出身。チワン族。ヤオ族養女。河漁の達人。両親は尾張(親魏反呉武装戦線)の戦闘員。
呉王暗殺未遂犯。調理箸形状の尖刀を使い、呉王の隊列を襲撃。葦牙(鋼鉄の刃を仕込んだハイヒール)を使う。
警護将兵多数を殺傷。ワニ皮のヘッドギアとコルセット、密着着衣を着けて犯行に及んだ。
身長162cm。筋骨太。見た目は爆乳。年齢12歳。荊州の軍事ブローカー長江機関に帰属。危険度特A級。現在、消息不明。

こちらは、情報粒度が詳細です。完全に暗殺者の身元を特定しています。馬土(MaTu)が陸戦戦士として、どのように闘うのか、
を想像すれば、ピッタリ一致しています。陸上では空中殺法女子・阿斯。海中では潜水半魚女子・馬土なのです。
見た目爆乳は、武器を収納する空間なのです。

サメマは大倭側でファイリングしている大倭天皇暗殺容疑者たる潜水半魚女子・馬土の情報を余さず、公孫軍閥に公開します。
会議を終えたサメマは、大毘古イナル、日嗣御子に、父天皇の激励の言葉を伝えます。彼等はニギハヤヒ天皇の実子なのです。
大毘古は天照カニメの子、日嗣御子は月読ハエイロドの子です。母同士は姉妹なのです。生まれた時期も、一週間違い。
実の双子のように、同じ道をたどって生きて来たのです。BEIMIHUの一時養子として、九州南部で豚飼をしていた時期も
あるのです。サメマのヤタガラス隊と、山ノ民との抗争が激化していた時期に、九州南部へ避難したのです。
BEIMIHUが付けた名前が、大毘古が公(Gong)、日嗣御子が明(Ming)、です。別途に公(Gong)、明(Ming)を通称とする大倭皇族が
いるので、彼等が公(Gong)、明(Ming)と呼ばれることは、無いのです。浄(Jing)、公(Gong)、明(Ming)がB、EIMIHUが自分の
子や養子に、順繰りに付けて行く名前なのです。元は、BEIMIHUお気に入りの雄豚三頭の名跡なのです。

サメマは南山要塞の客人用兵舎で一泊します。ここへ来た成果有りです。先代天皇暗殺犯の実像が明確化されたのです。
明日は、大連を出航し、琅邪に向かう予定です。魏朝に新天皇即位の通達をするのです。公安関係者とも情報交換するつもりです。
魏朝のお偉方とも会談し、外交姿勢を問われるのです。新天皇特使としての忙しい日々が続くのです。

サメマが眠りについたのと同期して、潜水艇が琅邪湾から出航します。潜水半魚女子・馬土と仲間の潜水兵達が乗り込んでいます。
サメマの宿敵は、琅邪湾から山東半島を迂回して、渤海湾に侵入しようとしているのです。行き先は済南。
ある大物を暗殺する目的なのです。

サメマの艦隊は琅邪湾へ入港します。この湾の水上警備は大倭海軍が担当しているのです。不審人物の乗船を阻止するための
検疫部隊も常駐しています。サメマは湾内の島に構築された要塞に入ります。琅邪と済州島とは歴史的な縁が深いのです。
大倭の前政権は、琅邪出身の徐福の子孫だったのです。琅邪と済州島とは黄海を対極する表裏一体の関係なのです。
この島に防諜機関を設営したのは、先代天皇です。中国大陸の軍事情勢を偵察することが表の目的だったのです。
裏の目的は、先代天皇が当代天皇を監視することだったのです。例の千千速は、当代天皇の妻だったのです。
ニギハヤヒ、千千速のヤリ手男女の夫婦が江華島に根拠地を作り、朝鮮半島南部に縄張りを作っていたのです。
彼等が邪心を起こし、天皇に反逆する事を未然防止することが、琅邪機関の当初の目的だったのです。
琅邪機関機関長として、先代天皇が拾い上げた男が、元の済州島政権の副王だった男です。男の名がスクナヒコ。
長江曾都毘古の主君だった男です。スクナヒコは今は、日本列島で活動しています。先代天皇・~沼河耳の宰相だったのです。
当代天皇ニギハヤヒは、スクナヒコの兄を殺し、金印を奪ったのです。ニギハヤヒはスクナヒコとの結縁を拒否し、
琅邪機関から絶縁する措置を取ったのです。

六年前、国外追放された千千速が監禁されたのも、この琅邪要塞です。拘束状態の千千速を済州島から搬送したのは、他ならぬ
サメマ自身なのです。千千速は三年を期して衰弱死させられる計略だったのです。実際に衰弱死させられた千千速の遺骸を
サメマが検視し、日本列島に送り届けたのです。スクナヒコが日本列島で活動している目的は、他ならぬ千千速の墓の造営
なのです。~沼河耳の墓の造営も合わせてやっています。スクナヒコは穴師として有能なのです。しかし、戦士としては無能
なのです。軍事国家大倭には要らない人材なのです。スクナヒコの琅邪機関は、サメマが接収し、魏朝公安部門と
共同運用しているのです。スクナヒコはイサセリビコとは良い関係にあったのです。スクナヒコはイサセリビコの預りと云う
形で、生かされているだけなのです。

千千速が生きていた、という事自体が、サメマにとって驚きなのです。何らかのスリ替え工作が存在したのです。
今回の琅邪訪問では、この事を究明するつもりです。奇縁ですが、サメマの后の元の婚約者が、他ならぬスクナヒコなのです。
ニギハヤヒは~沼河耳に大金を払ってサヌウの親権を買い取り、ニギハヤヒ養女としてサメマと結婚させたのです。
サメマは貧乏皇族なのです。結納金を支払うような蓄えは無いのです。従って、サヌウこと波礼とサメマとの家の
財産権は波礼の側にあるのです。サメマはニギハヤヒ一門への入り婿に過ぎないのです。

サメマはニギハヤヒから敢えてファミリーの端くれとして拾われているだけなのです。
そして、受けている恩義に対して、返礼する義務があるだけなのです。

サメマは魏朝の対呉軍事作戦担当の武官と面談しています。呉朝の後背を衝く作戦は、どうなっているのだ?
と督促して来ます。サメマは適当にあいまいに返答します。中国内部の内戦には、介入せず、と云うのが基本方針なのです。
其の武官が、合肥の軍事基地に長く勤務し、対呉軍事偵察を担当して来た男です。

「呉朝の後背を衝く度胸がねえのか? このへタレ蛮族野郎!」

と云う感じで、ケンカを売って来ます。突っ込めば、却って逆手に取られ、対呉軍事作戦の遂行を期日付きで約束させられるのです。
サメマは、自分は海軍の素人なので、などとノラクラと誤魔化します。

人が変わって、満州での軍事作戦担当の武官と面談させられます。こちらも似たり寄ったりの督促です。

「白頭山西面に騎兵を集結させ、江界から安州を衝く作戦を教えてやっただろうが。楽浪・帯方を好き放題略奪してもOKだと
言ったやっただろうが? 何で実行しねえんだ? へタレ文身野郎!」

公孫氏軍閥を魏朝の一員とは扱っていないのです。まるで敵対勢力の扱いです。「白頭山西面」は倭人伝の都支國です。
義弟の大毘古イナルが遼東太守・公孫晃から、徴税・徴兵権を与えられている領域なのです。できるはずがない注文なのです。
サメマはここでも、自分は騎兵の専門家ではないのでわかりません、などとノラクラと誤魔化します。

「もしかして、公孫野郎と吊るんでるんじゃないだろうな?」
図星の質問をして来ます。

「いいえ。わたし共は、厳正中立の立場なのです。あくまで平和的共栄をしたいのです。」
サメマは、冷や汗をかきながら、返答します。

人が変わって、公安担当の武官と面談です。ようやく有意義な議論ができそうです。

「五年前、この島で獄死した鯨面文身女子がいるはずだ。其の死に方を詳しく教えてほしい。
その女の顕著な特徴は、男みたいに男根が付いていることだ。我々がスクナヒコに預けた女だ。」
サメマが質問します。

公安武官は、思い出すのに苦労しています。やっとのことで思い出したようです。
「スキンヘッドの巨体女の事か?」

「そうだ。蛇紋を全身に入れていたはずだ。」サメマが返答します。

「その女なら、長江機関に引き渡した。彼等の側で取り調べたい事があったそうだ。大金もらって、スクナヒコが引き渡しを
裁断した。問題があるのならスクナヒコに聞いてくれ。当方は関知せずだ!」

「やはり、そうか! その女が天皇を殺した容疑者なんだ!」サメマは興奮しています。
やはり、すり替え工作があったのです。

「長江機関とは、いまでも取引しているのか?」サメマが質問します。

「いいや。長江機関はとっくに潰れたんだ。潰したのは呉将陸遜だ!」公安武官が返答します。

「料理の達人少女・八河江、ないし阿斯、ないし馬土、というチワン族女子を知っているか?
女は長江機関員で、凄腕の暗殺者だと云われている。」
サメマは要の質問をします。

公安武官は、笑い出します。大倭政権の大臣級の地位に在るサメマが、
末端暗殺者にアクセク・ドタバタしている様が笑えるのです。

「そいつは、迦陀(JiaTuo)だ! 我々の作戦で使った事もある。某任務に失敗して自殺した、と聞いている。
そいつが、どうかしたのか? 暗殺組織の末端分子なんざ、ただの捨て駒だ! アンタは何を恐れてるんだ?」

サメマは馬土による琅邪沖海中襲撃事件と、大倭天皇消息不明事件について語ります。これらの一連の事件に関して、
サメマはケジメを取らなければ、治安維持を担当する政治指導者として先行きの無い立場に、追い詰められているのです。

「なるほど。迦陀は腕の良い暗殺者だった。その程度なら、やってのけるかも知れねえ。
元々、長江や洞庭湖を自在に泳いで侵入・逃走の機動をする女で、水泳は得意だったんだ。
大倭天皇・伊邪那岐が、どれだけ強いのか、知らねえが、迦陀なら殺せるのかも知れねえ。
成都の城で、大火事があって、兵士三百人が殺された事件も、迦陀の仕業だ。
諸葛亮と長江曾都毘古との間で金銭トラブルがあって、それが動機で、長江機関が迦陀を走らせたんだ!
放火工作も迦陀の得意分野だ。あいつは貧乳だが、戦闘着衣の胸パッドは爆乳だ。そこには高性能火薬が仕込まれてるんだ。
たしか、迦陀は鄂城で呉王襲撃事件もやっている。警護していた陸延と、完全武装した精鋭兵士五百人が殺されている。
陸延っていうのは、陸遜の息子だ! 陸延は武勇の人として呉朝の中では有名だった。
迦陀は、後ろ回し蹴りでハイヒールの踵を右目から後頭部まで貫通させ、一撃で陸延を即死させたんだ!
この事件で、迦陀の素性が割れて、陸遜が長江機関を潰したんだ! 陸遜は、学者肌の見かけによらず、意外と執念深い性格なんだ。
そうそう、関羽軍が兵站線を切断され、孤立した処を呂蒙に易々と討取られた事件も、迦陀が軍事的破壊工作した結果だ!」

公安武官は、遠い過去の思い出話しをするかのように、無機質な口調で語ります。
サメマは衝撃を受けています。馬土こと迦陀は、想像していたよりも、はるかに悪質な、札付き国際犯罪者だったのです。
単に暗殺者として腕が立つだけではないのです。軍事的急所を破壊して、標的の軍団を壊滅させる高度な軍事的頭脳をも
持ち合わせているようです。サメマが、かって活動した密林ヤクザたる多島一家が、そういう危険人材の集団だったのです。
迦陀が保有する、危険な資質を、サメマは、ありありと想像することが出来ます。第一級の破壊工作員です。

隣で聞いていた波礼は、巨体をガクブルさせています。世の中には、想像も付かないような悪党がいる、と云う事を
初めて思い知ったのです。

「長江曾都毘古は今、何処で何をしているんだ?」サメマが質問します。

「あいつは呂蒙には気に入られて、便利使いされてたんだが、陸遜とはソリが合わなかった。
荊州での軍事ブローカー業が立ち行かず廃業、その後は消息不明だ。資源探索には才能があった男だ。
山師でもやってるんじゃねえのか? あいつには、お似合いだ!
出身はラオス北部の山岳地帯だ、と聞いている。そっちの方は、地下資源が豊富にある。」

サメマは、公安武官に情報提供の相応の礼金を差し出し、琅邪から退去したのです。
次の目的地は、連雲港です。シルクロード東端の交易都市です。

連雲港にサメマの艦隊が入港します。済州島との交易船が、多く行き交う港です。サメマと波礼が下船します。
中国大陸における稲作地帯と畑作地帯とが交錯するエリアに立地しています。双方からの産物が集まってくる交易都市です。
大倭海軍陸戦隊が小規模ですが、常駐しています。彼らが、もし居なければ、呉朝傘下の海賊達が、この町を荒しに来るのです。
海軍偵察局も設営されています。極秘ですが、サメマに直属する海洋武装警察の要員も、そこに配置されているのです。
この町の総督は、商売人上がりです。『最大・付加価値』との看板を出している卸売り市場の中に、総督の住居があります。
上古のマックス・バリューなのです。ここは波礼の出番です。波礼は大倭商務・農産大臣の職責に在るのです。
波礼が総督と会合を開きます。交易拡大に関する計画の認識合わせをするのです。

サメマは海軍偵察局に入局します。要員達が「兄ぞ、愛しき!」と挨拶します。

「町の顔役達を集めてくれ! 聞き取りしたい事があるんだ。」サメマが命令します。

町の顔役達が集結します。なにかの処罰を下されるのでは、とビクビクしています。

「聞き取りしたい事があるんだ。六年前、この当りの海岸に半漁人女子が打ち上げられたことはあるか?」
サメマが顔役達に質問します。

「聞いた事があります。」顔役の一人が発言します。

「氣多前で、そういう怪女を目撃した村人多数がいます。海岸に伏せた状態のまま動かず、村人が助けようと話しかけても
何もしゃべらず、自力で立ち上がって、西の方へヨタヨタ歩いて行った、との情報です。
その辺りには凶暴な入り江ワニがたくさん住んでいます。ワニが群れて襲ったところ、その女は、
片っ端から尖刀で突き殺して皮剥ぎし、剥いだワニ皮を引きずって持って行ったのです。
密着型の変な水着を装着して仮面を着けていたそうです。
ただし、着衣はいたるところで敗れて、むき出した生身には鮫の歯型の裂傷がついていたそうです。
この事件を村人達は、人間ではない怪物『稻羽之裸菟』だった、と恐れながら命名しています。」

「稻羽」とは江蘇省一帯、「氣多前」とは淮河北河河口部です。
「裸菟」は琅邪沖の海域から生還した、半裸状態の迦陀に間違いありません。
琅邪沖天皇暗殺未遂事件で、大倭海軍は面子に掛けて反撃し、確実に殺した、と主張しましたが、実際は討ち漏らしたのです。
海軍首領で、天皇が座した軍艦の艦長であるタギシ耳が忌矢を弾ち、半漁人女子を射殺した、と報告を受けています。
タギシ耳は、嘘を言うような男では、無いのです。迦陀は不死身の生命力を持つ女子なのです。
そして、恐るべきことに、迦陀は半死半生状態で、入江ワニの群れと闘っても、勝てる位に強いのです。

「おもしろい話を聞かせてもらった。裸菟の事は忘れるんだ。他言無用にせよ!
これからも、大倭海軍に忠勤を尽くせ!」

サメマは顔役達に、報奨金を与え、連雲港から退去します。
次の目的地は、舟島です。江蘇省の海流は、黒潮が黄海を左周りに旋回して南北反転し、北から南へと強く流れるのです。
この江蘇省沖海域が倭人伝の『瀚海』です。サメマの艦隊は、瀚海の南流に載り、舟島へ着きます。

杭州湾には微弱ながら、呉朝直属の海軍があります。其の杭州湾の出入りを厄する島が、舟島群島なのです。
大倭海軍は、この島を建国直後の早い時期から占領し、交易端点の確保を行っています。呉朝海軍からは、上納金を取りたて
共存しているのです。

交易会議は、波礼に任せ、サメマは中国大陸に上陸します。呉朝の杭州湾守備隊にアクセスして、
陸遜・大将軍閣下に謁見したい、と申し入れします。迦陀の最新情報を得ることが目的です。

陸遜との謁見は、蘇州に移動して、実現しました。

「大将軍閣下。迦陀という女を御存知でしょうか? その女が我国の天皇を殺したのです。
私は大倭の内務大臣です。その女を処罰しなければならないのです。」

「よろしい。重要機密情報を差し上げましょう。
私自身が迦陀と闘ったのです。夷陵にて。迦陀は兵站を、夷陵城の周辺に積上げ、それを餌に匪賊をかき集め、
夷陵の城を完全に包囲したのです。私は兵糧攻めで、あやうく討取られる処だったのです。」

サメマは呆然と聞いています。迦陀は暗殺者として第一級であるだけでなく、軍を動かす戦争においても、
呉の大将軍・陸遜と、対等以上の優勢で渡り合えるくらいの力量の持ち主なのです。

武昌の軍都を建てた「相武國造」たる陸遜は続けます。

「呉王が魏帝を動かし、襄陽の魏軍5万が大巴山脈の稜線を確保してくれたおかげで、夷陵の攻囲網が開錠され、
私は九死一生を得たのです。私は直ぐに西へ走り、敵本営の白帝城に白旗を上げて駆け込み、劉備玄徳に
平身低頭して侘び入れし、和睦してもらえたのです。」

サメマは呆然として、言葉がでません。夷陵の戦いは、流布されている情報とは全く異なり、呉軍の大敗北だったのです。

「そこへ、ずかずかと現れた蛮族将軍が迦陀です。劉備は、
『よく働いてくれた。お前の、おかげで関羽の恨みを晴らせた。お前を雲南西部の女王に封土しよう!』
と迦陀をねぎらったのです。ところが迦陀は
『ありがたく頂戴します。ついでに、皇帝閣下の御命も頂戴します!』
と言うなり、その場で劉備の頸を捻り殺し、人質として差し出していた夫の倭王を担いで、
城の城壁を軽々と飛び越え、楊子江方面へ逃走したのです!」

サメマは、思わず突っ込んでしまいます。
「倭王の名は? 何という男なのですか?」

「たしか、イマスと云う。」陸遜が答えます。

サメマはイマスという男を知っています。会ったことはありませんが、ミマキの弟です。
山ノ~イタイの次男坊で、山ノ民の皇太子の地位に居た男です。生母は山ノ民初代首領のサルオケツ。
線が一気に繋がりました。迦陀は山ノ~イタイを死に追いやった大倭天皇・伊邪那岐を、其の報復として殺したのです。

「大将軍閣下。私は倭王イマスを知る者です。私の宿敵の男です!
御嫡男・陸延様の武昌での御受難、大将軍閣下の悲しみは余りあるものであります。
私が大将軍閣下に成り代わり、倭王イマスと其の片割れ迦陀とを天誅して御覧に入れます!」

「よろしく頼んだぞ! 大倭天皇の将軍よ!」陸遜が煽って来ます。

陸遜の元を退去したサメマは、急いで舟島に戻ります。敵の正体と居場所が掴めたのです。あとは殺るだけです。
サメマは波礼を連れて、舟島を出航して香港へと向かいます。香港は大倭海軍が占領し、要塞を構築しています。
ここでも、波礼に商人達との交易会議をやらせ、サメマは広州総督府へ向かいます。

サメマは呉朝広州総督に謁見し、五嶺山脈方面への武装偵察隊に加わります。
「山越」を名乗る武装集団が、五嶺山脈一帯を実効支配し、呉軍の華南への兵力展開を著しく妨害しているのです。

サメマは末端の山越兵士を捕らえ、得意の拷問で、指揮系統と首領の素性、軍事体制を自供させます。

雲南西部峡谷地帯⇒大理⇒貴州⇒五嶺、という指揮系統なのです。間違いありません。山越人民解放戦線の
総首領が、標的の迦陀です。迦陀の兄「キイ」を名乗る男が大理に居て、東部戦線の総指揮官なのです。
迦陀の方は「ヤシイ」を名乗っており、其の更に西方の根拠地で活動しているようです。
思い出しました。例の「阿斯(ASu)」は「ヤシイ」の中国式表音表記だったのです。
「ヤシイ」の意味する処は「キイを補佐する良き妹」の意味だということも判明しました。
おそらくは「ヤシイ」が迦陀のチワン族本命なのです。

サメマは波礼を連れて、香港を出航して海南島へと向かいます。この島は地下資源が豊富にあるのです。
先代天皇・伊邪那岐は、資源探索が得意で、自ら探索を行う事も、よく有ったのです。
「天皇は、この島で殺られたのでは?」と云う疑念が、強く感じられます。
例の長江曾都毘古も、資源探索のエキスパートだったのです。趣味の一致から、伊邪那岐は長江を舎弟に取りたて、
資源探索のノウハウを自らに伝授させていたのです。

海南島へ到着しますが、出迎えが全くありません。この島には海軍陸戦隊五千が常駐しているはずなのです。
しれ以外にも、海軍退役者を組織した民兵五千が活動しているはずなのです。全く大倭の軍事組織の臭いが
消えています。この島で何らかの変事が有ったようです。

すこし探索したところ、死亡した大倭戦士の遺骸が大量に見つかりました。腐敗してウジに喰われており、
原型をとどめていません。それでも死因を絞り込む事はできます。すべて尖刀による刺突が死因です。迦陀の仕業です。
一人で一万の兵力を殺戮したのです。想像を絶する破壊力の持ち主なのです。探索隊を編成し、本格的に捜査を開始します。
五指山の頂上付近に構築された野戦用陣地で、天皇の御伴人達の遺骸が大量に発見されます。
伊邪那岐の死地は、この場所なのです。遺骸が身に着けていたはずの財物が、現住民により、奪い取られています。
武器も奪い取られています。陣地の資材も解体され搬出されています。

波礼には、一人でインドネシアの新しい国都・スラバヤへ向かわせます。子供では無いのです。
護身武術をしっかりと身につけている女子です。波礼は、寂しそうに、自らの任地へ向かいます。
サメマは兵隊を率いて、海南島の原住民を皆殺しにします。
それから陶津に移動し、ソンコイ河を遡ります。雲南へ向かうのです。そして迦陀を殺すのです。

山越軍の小部隊が襲撃して来ますが、撃破して進みます。雲南に侵入し、敵根拠地の大理に近接します。
蜀軍など、どこにも見えません。山越軍が雲南の大半を実効支配しているのです。
サメマは部隊を分進させ、大理の敵陣地を奇襲し、陥落させます。サメマは密林山岳戦闘のエキスパートなのです。
捉えた敵兵を拷問し、敵将の居場所を吐かせます。キイは夏羽(XiaYu)という中国式戦士名を名乗っているようです。
夏羽の嫁で、夏名(XiaMing)を名乗る女将軍が居るようです。スキンヘッド・両性具有・大女・蛇紋・武器は鎖斧という特徴です。
間違いありません。大倭建国者・千千速のナレの果てが「夏名」なのです。雲南西部のフーコン峡谷が、彼等の巣なのです。

山越軍の軍資を奪って補給したサメマの軍隊はメコン河の峡谷を北上し、山稜を越えてサルウィン河の峡谷を制圧します。
後一つ山稜を越えればイラワジ河の上流を成すフーコン峡谷です。千千速の方から、お出迎えです。

「てめえ!コラ!サメマ! どこまでオレに付き纏うんだ!」千千速が攻撃を仕掛けて来ます。

サメマは応戦します。千千速は戦争の犬なのです。サメマ以上に山岳戦が得意な大量破壊兵器女子「多紀理毘賣」なのです。
鎖斧を振り回し、サメマの部下を屠殺しながら突進して来ます。サメマ軍の前衛に風穴が開きます。
それでいて、巧みに配下の軽装歩兵部隊を散開させ、サメマの軍隊を寸断して来ます。

サメマは戦闘の合間に、大事な事を質問して置くことにします。

「千千速! お前が~沼河耳を殺したんだな?」誘導尋問です。本星は、あくまで迦陀です。

「そうだ! 腹が減ってたんでな! タカクラゲをチキン唐揚げにして、喰っちまった!」

「タカクラゲ」とは~沼河耳天皇の悪名です。全身に鷹の入墨を入れていたからです。サメマは怒りを堪えます。

「迦陀は、何処にいる?」サメマが質問します。

「てめえの背後だよ!」千千速の回答は意味不明です。

千千速の発語様式に異様なモノを感じ取ります。虚勢を張っているのでは無いようです。かっての千千速とは別人格です。
狂信者の精神構造です。何者かにマインド・コントロールされ、戦闘マシンにさせられているのです。
サメマは敵が意外に手強い事を悟ります。伏兵していた夏羽も登場し、重装歩兵部隊を繰り出し、弩弓を撃ち込み、
退路を遮断する機動行動を取ります。既に部隊は死傷者続出の状況です。密林戦が苦手な海軍陸戦隊は全滅です。
鏑矢を放つ軽装の敵兵部隊が両翼に回りこんで来ました。敵兵は山稜を走りながら鏑矢を連射して来ます。
鏑矢の音で、サメマの命令は味方に届かなくなります。聞こえるのは千千速の怒声だけです。隊列が乱れに乱れます。
敵のホームグランドで闘うことは不利なようです。別途の攻め筋で出直す事にします。
サメマは撤収を決断します。敵の嘲る声を聞き流し、サメマは東方へ退却したのです。

【姉ぞ愛しき−迦陀編】完

小説のコメントコメント
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2020/07/08 13:54 加馬土 登由



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