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現代小説/歴史小説

『あれから』

青木 航著



 俺、いじめられっ子だったんだよね。
 なんでそうなっちまったのか良く分かんね。中学んなって、仲いい友達出来て、いつも6人くらいで遊んでたんだけど、いつの間にかいじめられっ子になってた。
 最初はなんだったのかなぁ。あ、そうだ。リーダー格の冴島が、
「なんか、お前のしゃべり方むかつくことあんだよな」
とか言い始めたのがきっかけだったかも知れない。
「あ、そう。気にさわったらごめん」
 なんて、俺も笑いながら言ってたと思う。
「けっ! 」
とか言って、冴島は手の甲で軽く俺の胸を叩いた。痛くもなかったし、こっちも気にしていなかったので、ただ笑っていた。
 その後も何度か同じようなことあって、正直いやだったけど、気にしてないように振る舞っていた。
 ひと月くらいしてからかなぁ、あん時、あいつ、なんかあって、すげえ機嫌悪かったんだよな。
 俺、何しゃべってたか良く覚えていないんだけど、冴島がいきなり、
「ざけてんじゃねえよ! てめえ」
とか言って、俺の胸をかなり強く突いて来たんだ。
 俺、飛ばされてひっくり返って尻餅を付いた。それ見て、ほかの奴ら笑ったんだ。
「大丈夫? 」
って言ってくれる奴いなかったし、
「やめろよ! 」
って冴島に言う奴もいなかった。
 たぶん、俺のいない時、
「あいつ、むかつく」
とか冴島がみんなに言っていて、みんなも、
「そうだよな」
なんて冴島に合わせていたんだろう。俺嫌われていたんだ。
 飛ばされて、俺もマジムカだったんだけど、みんなの反応見て、なんでか、あいそ笑いしちまった。

「コーラ買って来てよ。コンビニ行って」
と冴島が言った。
 立ち上がった俺は、何も無かったような顔をして
「ああいいよ」
と言った。
「金、出しといて」
 金を預かるつもりで手を出した俺に、冴島はそう言った。カツアゲだ。
「あ? ああいいよ。分かった」
と返事をした。
「みんなの分もな」
と追い打ちを掛けて来た。
 俺は、一瞬持ち金を思い浮かべた。大丈夫かなと思ったが、なんとか間に合いそう。
「俺、コーラじゃなくて、ジョージアの微糖がいいな」
と木村が悪乗りする。
「俺、オレンジ」
と言ったのは森嶋。後の3人もそれぞれ勝手なことを言い出す。

 それっから、だんだんエスカレートして行って、金付けられたり、校舎の陰で膝、腹に入れられたりするのは当たり前になっちまった。バレるの恐れてか、顔は殴って来ない。
 親には言えなかった。先生なんて俺は最初から信用していなかった。学校に行きたくない。朝、目がさめて最初に思うのはそれだけ。
「何ぐずぐずしてんのよ。学校遅れるわよ。早くご飯食べて。もう、ほんとにグズなんだから」
 お袋は、ひとの気も知らず、相変わらず勝手なことばかり並べている。

 そんな俺が、数ヶ月後にはいじめられっ子から脱出出来た。
 何故か分かる? カンタン。親に頼んで、隣町でこつそり空手習い始めたのさ。
 例え数ヶ月でも空手習った奴と何にもやってない奴では、喧嘩やったら全然違う。
 でも、勘違いしないで欲しい。空手習って調子に乗って、相手をぼこぼこにしちゃった分けじゃないんだ。
 以前の俺は、脅されると恐怖心に支配されてしまい、体が硬直して何も出来ず、ただ耐えていることしか出来なかった。
 でも、道場では皆、殴られても蹴られても平気で稽古している。それ見て感動したんだ。
 突き蹴りの基本動作を暫く繰り返し練習した後、恐る恐る乱取りを始めた俺に、先輩は最初、ごく軽く当ててくれた。
 それでも痛かったが、殴られるのは決して恐ろしいことでは無いのだと分かって来た。痛い思いをしたくなければ、避けたり反撃したりすれば良いだけだ。
 とは言っても、そう簡単には勝てない。でも、俺の心が変化した。どうして良いか分からず、ただおどおどするしかなかった俺が、
『練習すれば勝てるようになる』
と言う希望を持てるようになったんだ。
 稽古で汗を流すことが快感となり、少しずつでも上達することに喜びを覚え、俺は稽古にのめり込んでいった。蹴られて青痣が出来た脛の痛みさえも、何と、心地好く思えるようになって来たんだ。痛みはもはや恐怖では無くなった。

 もちろん、空手を習い始めたことは、学校では誰にも言っていなかった。
 冴島が何か言って来ても、言い返しはしなかったが、気にならなくなった。
 或る時、
「何だ、てめえなめてんのか! 」
と言って殴り掛かって来たが、動きがはっきり見えた。道場で受ける突きと比べれば、大振りで遅い。俺は体重を後ろ足に移しただけだった。
 パンチは空を切った。冴島の表情に戸惑いの色が浮かんだ。
 恐れて顔を背ける分けでも無く、平気な顔をして相手を見ている俺に、何か今までと違うものを感じたのか、空振りしたことが恥ずかしかったのか、
「こんな馬鹿構ってもしょうがねえ、行くぞ」
 再度攻撃して来ることも無く、冴島は、仲間を引き連れて行ってしまった。
 俺に対するいじめは、それで終わった。

 あれからもう2年が経つ。あいつら、あれ以来俺に近付かなくなった。でも、いい友達、いっぱい居るよ。
 明日は関東大会、中学最後の大会だ。今年こそ優勝して、ぜってい、全国大会行ってやる。その為には、もう寝なきゃな。

小説のコメントコメント
この作品の著作権は、作者である 青木 航 さんに帰属します。無断転載等を禁じます。

 空振りして、冴島が攻撃をやめたところで、『えっ? そんなことでやめる? 』と思った方も多いと思います。
 もうひとつのアイデアとしては、
『俺は、冴島の攻撃を左腕で受け止め、同時に右の拳を奴の顔目掛けて突き出した。但し寸止め。目の前に繰り出された俺の拳を見る冴島の眼に、明らかに恐怖の色が浮かんだのが分かった』
 冴島が攻撃をやめる設定としては、どちらが良いと思いますか? いずれにしろ、殴り合いの場面には持ち込みたくなかったのです。
 広く皆さんのご意見、アイデアを求めます。
 この作品は、元WBC世界フライ級王者・内藤大助さんの『中学の時、いじめられっ子だった』という話をヒントに書きました。
2019/10/12 23:45 青木 航



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