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現代小説/歴史小説

『やすらげぬ郷』

星烏著



朝の茶話会で、新しい入所者が紹介された。
まさに噂通り…美しくて可愛らしい!
郷の職員のネエチャンが「八千草薫さん似のチャーミングな方ですよ」と言ったので、期待はしていたのだが…
とりあえず呼び名は「姫」かな?
髪は輝くような銀色。顔は…シワシワなのは仕方ないとして、さぞや若い頃は美人であったろうと想像させる。
それにホノボノとした笑顔がいい!
これは…アタックすることに決めた!
これから職員の案内で、彼女が郷の庭園を散歩すると耳にした俺は、急いで自分の部屋に戻り、Tシャツと短パンに着替えた。
そして両手にダンベルを掴み、彼女の通りかかりそうな場所を選んで、筋トレを始めた。
しばらくして、ネエチャンに案内されて彼女がやって来た。
「オイッチニ!オイッチニ!」
ことさら声を張り上げて、俺は両手に一個ずつ掴んだ五キロのダンベルを、グイグイと上げ下げしてみせた。Tシャツの逞しい胸と、盛り上がった腕の筋肉を、彼女に見せつけるように。
俺の姿を見ると、二人は立ち止まった。
ネエチャンはクスクス笑い(俺の魂胆を見透かしてやがる!)彼女の方はポッと頬を赤らめた。
「こちら田中さんです」
ネエチャンが紹介してくれた。
「姉小路でございます」
彼女が丁寧に頭を下げた。
俺はダンベルを振り回しながら、黙ってクールに頷いた。藤竜也…風に。
彼女がニコニコしながら去ってゆく。
その後ろ姿も、なかなか良いなあと思って見送っていたら…ヤツがいた。
庭園の遊歩道に設置された木製のベンチに、腰かけて足を組み、膝の上に開いた本に読み耽っている(というポーズ)
二人が通りかかると、初めて気づいたように目を上げ、立ち上がって挨拶している。
コットンのシャツとパンツ。キザな丸眼鏡をかけて…森本レオ風?
いつもは着古したジャージでウロウロしてるくせに!
もとは大学の講師だった…なんて自分では言ってるが、ホントは学内の生協で、パンやら牛乳やらを売っていたらしい。
チビチビと金だけは貯めていたらしく、退職金と合わせて、この郷に払い込んで入所したという噂だ。
もともとはビンボー人だから、ここで金持ちの婆さんを引っ掛けるツモリなんじゃないか?
俺は違うぞ!あんなウラナリの青瓢箪と違って、
古稀だというのに筋肉モリモリ。アッチの方だって、まだまだ現役だ。「姫」となら…
それから俺達の熱い戦いが始まった。
食堂で、喫茶室で、医務室でも。
彼女に近づき、自分をアピールする。
藤竜也か森本レオか。果たして彼女の選択は…?
しかし、この戦いは呆気なく終わった。
ある日、また新しく入所してきたジイサンと彼女が、ピッタリと寄り添い、腕を組まんばかりにして、庭園を散策しているのを見かけた。藤竜也でもなく森本レオでもなく…笠智衆?
早速、ネエチャンのもとへ駆けつけて事情を聞いてみると…もともと二人は若い頃に恋人同士で、
お互いに伴侶を失ったため、この施設で共に余生を過ごすことに決めたのだとか。
それを聞いた俺はバカバカしくなって、筋トレを止めた。
その日から、以前のように自分の部屋で、エロ本を眺めながら、ワンカップの酒をチビチビ啜る生活に戻った。
ヤツも同じことを耳にしたらしく、また着古したジャージ姿でウロウロしている。
これでまた退屈な日々が始まる…と思いきや、新しい女の子(?)が入ってきた。
今度のは化粧のケバい若作りの小悪魔風…女優でいえば加賀まりこ!
俺は俄然ヤル気を取り戻した。エロ本を放り出し、筋トレを再開!
ヤツも丸眼鏡をかけて、木陰の読書を再開!
これじゃ老け込んでるヒマはない。ここは「やすらぎの郷」という老人ホームなんだが…やすらぎなんか、ノーサンキュウ!
まだまだ元気で長生きしてやるのだ!









小説のコメントコメント
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2019/04/24 11:36 星烏



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