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現代小説/歴史小説

『F北の…(明35、横浜で加代が本の爆買、荷物持ちの俺を殺すな)英視点』

ぷーでる著



 「やっと、ここまで来たぜ!」

 何せ、岐阜からずっと鈍行で乗り継ぎしてきたからな。
 加代さんには、悪いけど節約……
 おっと、いけねぇ、それは秘密だぜ……
 
 「疲れちゃったわ」
 加代が、ハンカチで顔の汗をぬぐった。

 「少し、ここで休んで行こう」
 「そうね」

 俺と加代は、横浜駅を出る。
 駅前は、大勢の人々や馬車が行き交う。
 外国人の姿も、見かけた。

 多分、ここから箱根の温泉に行くところなんだろう。
 最近、流行りらしく政府も外国人客の為の観光に
 力を入れている様だ。

 駅の構内の壁にも、英語の観光ポスターも
 ちらっと、見かけたし。 

「汽車の時刻が分からないと不便だな」
 俺は、懐中時計を手に言った。

 「いちいち、駅に戻って確かめるのもねぇ?」
 加代も、同感の様だ。

 俺と加代は、背後の横浜駅を振り返って見る。

「とりあえず、横浜駅から出発時間は確認できるけど
  次乗り換えまでは、向こうに着くまで分からないからなぁ」

「そうねぇ」
 加代が、ため息をつく。

 「そうだ、汽車時刻表の本を買っていこう」
 「そんな本が売っているの?」

 「横浜は、進んだ都市だから本屋に行けば、なんだってあるさ」
 「そう、早く行ってみましょう!」

 二人は、意気投合して本屋へ行く。
 横浜にある本屋は、大きかった―
 
 色々な書物が膨大に並んでいる。
 あまりにも、多いので何処に
 汽車時刻表の本があるか分からない。

「あのう、すみません〜汽車時刻表の
         本がほしいんですけど〜?」

 俺は、本屋の店員に声をかける。

 「はい、これですね?」
 本屋の店員は、すぐに見つけてきて渡してくれた。

 「そうです。どうもすみません」
  俺は、頭を下げ受け取る。

 「ねー、英ちゃーん。私、この本が欲しい〜!」
  加代が、本を何冊か手に駆け寄ってきた。

 「日本名所案内書?!に鉄道旅行案内書?!」
  俺は、加代の持ってきた本を見て唖然とした。

 「せっかくの長旅なんだし、色々あった方がいいじゃない?!」
  加代が無邪気に、欲しそうな顔をする。

 「荷物が多いんだぞ、そんなに本を
         買いこんだら重いじゃないか!」
  
  荷物持ち担当の俺が、困った顔をする。
  こんなところで、赤ちゃん返りかよ……やれやれ。

 「え〜、でも、汽車待ちの時、退屈だよぉ?」
 「いや、確かにそうだけどさあ?」

 俺と加代が、そんな風にしていると……

 店員が「いやぁ、お二人さん、
         仲が良くていいですな」と声をかけた。

「あ、まあね……」と、照れ臭そうにする俺。
「新婚旅行かな?何処まで、行かれるんですか?」

「あ、そういうワケでは……」俺が焦る。
「私達、これから北海道へ行くんです」と、加代が微笑む。

「ほお〜随分遠い所まで行かれるんですね!」店員が感心する。
「ええ、とても楽しみなんです」

「それじゃ、その本が欲しいわけですな〜」
「はい」

「ちょっと待てよ、誰が荷物持っていくと思ってんだ!」
 俺は、ますます焦る。

「おやおや、旦那様も大変だ」と、
 他人事に様に呟く店員。

「なあ、加代さん、
 一冊だけなら買ってやるから」と、俺が折れた。

「うーん、どれにしよう?」

「奥様、汽車時刻表の本を買われるなら、
            鉄道旅行案内書より、

          日本名所案内書の方が
                 良いと思われますが?」

 店員が、咄嗟に機転を利かせて答えた。

「そうね、これにします」
 加代は、他の本を棚に戻して日本名所案内書を手に戻ってきた。

 「ありがとうございました、良い旅を!」
  店員が、頭を下げた。

 俺と加代は、勘定を済ませて本屋を後にした。
 あー疲れた……

小説のコメントコメント
この作品の著作権は、作者である ぷーでる さんに帰属します。無断転載等を禁じます。

実際に、汽車時刻表が販売されたのは大正からの様です。
イカン、話を盛ってしまった。
2018/07/14 17:43 ぷーでる



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