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現代小説/歴史小説

『E北の…(明35、下駄・草履・クツを駅にキレイに並べて残し、汽車に乗るイタイ客達)英視点』

ぷーでる著



 加代と俺は、馬に乗って駅までやってくる―

「加代さん、汽車に乗る時は、
     履物を履いたままで乗ってください」

 俺が、切符を買ってくると、心配そうに言う。

 「英ちゃん、私、そこまで田舎者じゃないわよ」
  加代が、呆れつつも笑う。

 俺と加代は、そんな風にして、駅のホームにやってくると
 柱に注意書きの張り紙がー

『汽車に、ご乗車されるお客様にご注意
  げた、ぞうり、クツ等は履いたままでお願い申し上げませう』

「言わなくても、書いてあったな」
 俺は思わず、可笑しくてたまらんと噴出した。
 その珍妙な光景が、思わず頭によぎる。

 汽車に次々に乗車する客達―
 列車が去った後、誰もいないホーム……
 
 そして、下駄、草履、クツだけが行儀良く並んでいる。
 哀れに置き去りにされた、迷子の履物達−
 その光景を、呆れて見つめる駅員― 

「やだ、未だにそんなアホな事するお客さんがいるの?」
 加代が、呆れつつ笑う。

 俺達は、笑いながら汽車に乗車したー
 席に座るとー

「客達が汽車に乗った後、
   ホームに残された数々の履物なんて
        新聞にも載っていたからな〜」

 俺が、思い出して笑う。

 「それ、記事になったわけぇ〜?」
  加代も、それを聞いて、きゃははと笑う。

 「そこの二人、声がデカイ。静かにせんか!」
  通路の隣の席に座る、帽子を被ったおじさんが叱りつけた。

 「すみません」
  俺と加代は、怒られて小さくなった犬みたいに
  しゅんとなって、頭を下げた。

 「全く、近頃の若いもんは、常識がなっとらん」
  おじさんは、上髭を指で撫でてフンッと威張った。

 汽車は、どんどん先へ進む。
 やがて、橋が見えてきた。長良川を横断する。

 「とうとう、岐阜ともお別れか」
 「そうね」

 「後悔していないか?」
 「もちろんよ、あんな堅苦しい所にいられない」

 「そうか、それは良かった……」
 「ええ」

 「でも、鵜が獲る鮎は好きだった」
 
 人が鮎を獲るより、鵜が獲った方が、
   息締め効果で各段に味が良くなるからだ。

 「そうね」
 加代が、ちょぴり、名残惜しそうな顔をした。

 こうして、汽車は、何回か乗り継いで
 東海道線を、何日もかけて
 ようやく横浜に着く。

小説のコメントコメント
この作品の著作権は、作者である ぷーでる さんに帰属します。無断転載等を禁じます。

初めて、汽車に乗った客達は、履物をホームで
脱いで乗車してしまうという珍事が頻発していたらしい。

次の駅で、降りる時どうしたんでしょうね?
そこに、履物が無いのに……
2018/07/14 16:47 ぷーでる



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