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現代小説/歴史小説

『A北の…(明35・俺カノ、長良川で入水…/英視点)』

ぷーでる著



 それから、何日かした。

 俺は、ちょっとふてくされながら
 長良川の土手を歩いていく。近くには、鵜飼い屋が並んでいた。
 その屋根には、カワイイ鵜の形をした瓦屋根が付いているぜ。

 ふっと、顔をあげると、
    上品な着物を着た娘が目に入った。
       
 土手に腰かけ、長良川の清らかな流れを
         見つめていた。何だか悲しげだ。
 
 「加代さん?」
 「あら、やだ、英ちゃん、いつから見ていたの?」
 
 「今、さっき」
 「他には、誰も見てないわよね?」
 
 加代は、辺りを見回した。
 とりあえず、周りには誰もいない様だ。
 
 「ところで、何でそんな悲し気な顔をしているんだい?」
 「実は、お見合い結婚が決まったの」
 「そうなんですか……」

 俺は、ガックリ肩を落とした。
 結婚するなら、この人だとガキの頃から決めていたのに。

 「仕方がないわ……」
 加代は、そう呟くと、すくっと、土手から立ち上がった。

 「え?」
 俺は、呆気にとられた。
 
 加代は、何を思ったか長良川に向かって歩きだした。
 どんどん進み、とうとう水の中へ足が入る―
 それでも、止まらない。
 
 「さよなら、英ちゃん……」
 「ちょっと、待った〜!」
 
 俺は、慌てて追いかけ川に飛び込んで、
 加代の腕をつかんで止めた。

「何を、しているんだ?」
 俺は、胸がバクバク鳴って生きた心地がしない。

「好きでもない人と、結婚する位なら死んだ方がマシよ!」
 加代は、感極まった顔で叫ぶ。

「死ぬ勇気があるなら、俺についてこい」
 俺は、思わず叫んでしまった。

「ええ?」
 加代は、驚いた顔で俺を見つめた。

 「西洋では、好きな人同士で
    結婚するという。日本は、遅れているのだ。
       家を継げとかしきたりがなんとやらなんて、
            文明開化の国がする事じゃないだろ?」
 
 俺は、イラッとした顔をした。
 こんな馬鹿げた風習は、いい加減ぶち壊してやりたいぜ。

 「でも、家族に迷惑をかけるわ」
  加代の目がうるっと、涙でいっぱいだ。

「何が迷惑なのさ?好きな事をして輝いた方が、
      よっぽど世の中の為になるじゃないか!
          好きでもない人と結婚するのが嫌で
                 死ぬ方がよっぽど迷惑さ!」

 「そうね、そうよね。私、どうかしていたわ。
       あんな奴の為に死ぬなんて。でも、どうするの?」

「ああ、とりあえず、川からあがる事だな」
 俺は加代の腕を引っ張って、川から一旦、あがって土手に戻る。

「ごめんなさい、濡れちゃったね」

「俺は、別にいいよ」
 そう謝られると、何故か照れ臭い。

「ところで、どうすればいいの?」

「俺は、北海道へ行こうと思っている。
         オヤジの跡継ぎなんてごめんだ、
                一緒についてきてほしいんだ」

 「呉服屋が嫌なの?」
  加代が俺の目を見つめる。

「呉服屋自体は、嫌じゃない。ただ、人間関係が煩わしいんだよ」
 俺は、うんざりした顔をする。

 ここにいれば、近いうちに
 消防団とかという面倒くさい関係も始まるのだ。

 洪水も多発するせいか、自然と人同士の結びつきが
 強くなっていて、責任重視で荷が重すぎる。

 「でも、知らない土地へ行って何をするの?
        ただ、行くだけでは、のたれ死んで
             しまうだけかもしれないのよ!」

 加代が心配そうな顔をする。
 風が吹いて頭に結んである赤い、リボンがなびいた。

「ふ、それは心配無用だ。
   この小判を視ろ、何処で獲れた金だと思う?」

  俺は、小判を取り出し見せた。

 「佐渡かしら?」
  加代が小首をかしげる。

 「恐らく、北海道だ」
  俺は、自信ありげに答えた。

 「え、どうして?そんな事が言えるの?」
  加代は、驚いた顔。

「江戸幕府は、蝦夷の金鉱に力を入れていたというー
     朝鮮や欧羅巴に金を輸出して財政力をつけたー
        日光東照宮にも、その金が使われているそうだ」

  俺は、うきうきしながら答えた。

「今も、北海道で金が獲れるの?」
 驚いた眼で加代が、聞く。

「だから行くのさ。さあ加代さん、どうする?」

 加代さんと北海道で砂金を獲る、
 なんて夢と冒険に満ちているんだろう。
 俺は、そうなればいいと期待する。

 しばらく、俺と加代の間に沈黙が続いてー

「そうね……私……あなたについて行きたい」
 加代は、決心した様に言った。ところが、その時になって……

 「お嬢様〜」
 向こうから、九条家のお手伝いさんらしき人が駆け寄ってくる。
 けっ、大事な時に……

「大変、見つかったら怒られるわ!隠れて!」
 
 俺は、加代に言われて、慌てて追われる
 ウサギの様に岩陰に隠れた。
 さっきまで、カッコよく決めていた俺は何処だ?

「お嬢様、早く帰りましょう」
 お手伝いさんが、加代の前で息を切らしていた。

「ええ、そうね」
「もうすぐ祝言の準備が、ございますのよ」
 お手伝いさんと、加代は、二人そろって去って行った。
 
 二人が去ると、俺は岩陰から出てきて―
  ―俺に、ついてくるんじゃなかったのか?―

 空は、日が傾き始め夕暮れにさしかかっていた。
             俺は、ぼうっとなりながらも
                     家路へと急いだ。

小説のコメントコメント
この作品の著作権は、作者である ぷーでる さんに帰属します。無断転載等を禁じます。

加代の年は、16〜17歳位かな?
昔は、その位が結婚適齢期だったので。
2018/07/12 00:29 ぷーでる



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