ファンタジー小説・童話の投稿サイト・ShortSTORY・ジャンル別にページが分かれています。

ファンタジー小説・童話 投稿 サイト/短編・掌編・長編。ファンタジー小説・童話の投稿

ファンタジー/童話

『FORTH LIFE』

さけゑゑい著



FORTH LIFE。
それは、実現不可能と言われたVRシステム。
開発は『フレイヤ games』。


初代機のセカンドライフには、本体にソフトウェアが内蔵されていた。
当時にしては値段は安く、広く普及した。

起動すると、人間の聴覚・視覚に直にゲームの音や光がまるで現実のように飛び込んでくる技術に、多くのプレイヤーが驚いた。
が、しかし。
グラフィックの質は他の新型ゲーム機に比べ低かった。

後継機の『third Life』は更にゲーム内で触ったものの触り心地を再現。
ついでにグラフィックも他の新型ゲーム機に追い付いた。
これにより、『ライフシリーズ』は更に人気を獲得。

そして、3代目の『FORTH LIFE』。
『フレイヤギア』という装置を使ってゲームをプレイする仕組みになった。
『フレイヤギア』により、遂に五感を操作し、プレイヤーが本当にゲームの中に居るかのような感覚になるような技術を確立する。
この技術の為に5年かかったが、どのプレイヤーも期待して待っていた。
また、フレイヤgamesは『third life』のアップデートによりプレイヤー離れを防いでいた事も、多くのプレイヤーを繋ぎとめられた理由だ。

そして、最初に製造された10000台のシステム購入者は、先行プレイが可能だった。
これにはデバッグの意味もあるのだろう。



そして、10000プレイヤーの内の1人である俺は、早速キャラクリエイト画面にて自分のキャラクターを作っている。
セカンドライフやサードライフでは不可能だった性別の変更が、フォースでは可能になっている。
どんなゲームでもネカマな俺は、すぐに女性キャラを選択。
どうせゲーム内で会った人間が現実の性別なんかを知る事は無いと思い、自分好みにしていく。


そして、2時間かけて完成したキャラは丸い眼鏡をかけた青い髪の少女。
目は緑色、身長は157cmで、顔は地味だけど可愛く設定した。
種族はビーストで、AGI…つまり、速さが高い種族だ。一応、ケモミミが付いている。
職業はシーフを選択。最初はファイターとウィザードとシーフとクレリックしか選べない。ゲームを進めると、様々な上位職が解放されるらしい。

2時間は伊達では無く、非常に愛着の持てるキャラが出来た。
バスト?Aなんじゃない(適当)
ちなみに俺は貧乳好き。




さあ、ゲームの始まりだ。
ゆっくりと、【ゲームスタート】と書かれたボタンに指を近付けた…









-プレイヤーを認識-
-識別コード確認…確認完了-
-プログラムをロード…失敗-
-再実行…失敗-
-エラーを確認。直ちにフレイヤギアを外しーー











Enter : フレイヤワールド













ロードが終わると、レンガや石で出来た家が目に入る。
ここは、最初の街である【ファースト】。
安直な名前だったが、セカンドライフ、サードライフ共に同じような名前だったためもう多くのプレイヤーが慣れている。

まず最初に、キャラクリエイトの際設定していたステータスを確認する。因みに、ログアウトやステータス確認、所持金の確認は左手の甲にある模様を触ってメニュー画面を出す事で出来る。これは今までの機種にも共通する事だった。少し操作し、ステータス画面を出す。
今のステータスはこうなっている。

ーーーーーーーーーーーーー
名前 ヨイチ
性別 女性
種族 ビースト
職業 シーフ
Lv1
HP 30/30
MP 10/10
STR 40
VIT 0
DEX 20
AGI 70
INT 0

ースキルー
・加速Lv1 ・短剣術Lv1 ・隠密Lv1
ーーーーーーーーーーーーー

こんな感じだ。防具や武器、所持金は表示されないが、今は初期装備の服と初期装備の短剣を持っている。所持金は1000リム。
シーフは他の職業に比べてよく速さが上がり盗賊らしい感じのスキルが手に入る。
加速は一時的にAGIを上げるスキル。短剣術はナイフなんかの威力を上げるスキル。隠密はその名の通り敵に見つかりにくくなるスキル。

まとめると、素早い暗殺者タイプ。
武器はキャラクリエイトの際にナイフを選択。
正面から戦うことは不利に見えるが、相手の攻撃を全て避ければ問題無い。名付けて「当たらなければどうということは無い戦術」。…ダサい?

フォースライフでは動きのラグは無いようなので、回避は今までよりもやりやすいはず。流石次世代機。まだ戦っても無いけど。

取り敢えず、実際に戦わないと感触が掴めない。
まずはモンスターがポップする草原に向かう。
美麗なグラフィック…というよりかはほぼ現実のような質感の街並みを眺める。これからここで生活できる事を考えると、今更ながら最新鋭ゲームをしている実感が湧く。
途中、仕立て屋があったので、フラッと入り、緑の帽子を買った。500リムだった。


家や屋台を眺める内に草原に到着する。
門を通って街を出ると、目の前に広い草原が広がる。
匂いや音、草を踏む感覚。
全てが現実のよう。
インドア派の俺にはあまり味わう機会がない感覚。

密かに感動を感じながら、モンスターを探す。
どうやら、この草原はスライムと小さなウサギが出てくる、らしい。街を出る時門番が言ってた。
あまり遠くに行くと強い敵が出るため、ある程度慣れるまで遠くには行かないよう注意された。

今はまだ何も見つけられていないから、遭遇が楽しみだ。

そう考えていると、スライムを見つける。
なんというか、動くゼリーにしか見えない。

可愛い…!

テイマーという職業があれば選択したいところ。

ただ、今はテイムなんかは出来ない。
セカンドライフとサードライフではテイムはテイマーになると手に入るスキル。今までの流れだと、今作もテイマーでないとテイムは出来ないだろう。

ただ、テイムが出来なくても、餌付けくらいなら出来るハズ。
近付いて来たスライムの様子を伺うと、すぐに襲ってくる事は無いようだ。途中で拾った果実らしきものを与えると、特に警戒する事も無く食べる。

[スライムをテイム出来ます。テイムしますか?]

聞こえて来たのはシステムメッセージ。
え?テイム?出来るの?

混乱するが、今回はリアル寄りのシステムらしい。
しかも、敵一体一体にAIが搭載されているらしいから、それぞれ個性が出るんだとか。にしてもチョロすぎない?

取り敢えず、目の前に浮く[はい]を選択。
すると、スライムの周りに光が舞う。

[テイムに成功しました。スライムが仲間になります]

お、おぉ…
成功してしまった。
これは仕様なのだろうか?
ていうか、なんでテイム出来る状態になったんだ…
原因は餌付けだろうか?

取り敢えず、テイムしたスライムのステータスを確認しよう。

ーーーーーーーーーーーーー
名前 無し
性別 無し
種族 スライム
Lv2
HP 20/20
MP 5/5
STR 15
VIT 15
DEX 15
AGI 15
INT 0

ースキルー
・分裂Lv1
ーーーーーーーーーーーーー

分裂は確かそのまま増えるスキルだったかな。
これがあるからスライムは絶滅しないらしい。

うーん、可愛い。
愛くるしいプルプルだなぁ。
名前は…
『プルフ』でいいかな。

「よし、お前の名前は今日からプルフだ!」

スライム、もといプルフはそれに反応するようにプルプルしている。


少し歩くと、灰色のウサギを見つける。
隠密を発動して、なるべく気付かれ無いように近づいて行く。
ウサギは食事をしていた為、ギリギリまで気付かれる事無く近付けた。
ナイフを刺せる距離まで来ると、ナイフを持った腕を振る。
当たる直前に気付かれたが、逃げられる前に倒す事が出来た。


それから、プルフを連れてレベルを5まで上げた。
プルフもレベル5になっている。

街に戻る時は、門番に見えないように帽子に入れてプルフを連れ込んだ。
プルフのようなテイムされたモンスターが街に入っていいのかは分からなかったが、テイマーでも無いのに堂々とスライムを連れ込む自信は無い。

取り敢えず拠点になる場所を探す。
今までは冒険者ギルドにて家を借りられたので、今回もそれらしき建物を探す。

意外にも目立つ見た目だった冒険者ギルドは、すぐ見つかった。
迷わず入ると、私意外にもプレイヤーが居る事が分かる。
プレイヤーの頭の上には三角のマークが出ているからだ。

誰かに話しかけられる事も無く、無事受付らしきカウンターに辿り着く。
受付嬢らしき人に話しかける。

「ようこそ、冒険者ギルドへ。何かご用でしょうか?」
「家を探してるんですけど、部屋の貸し出しってやってますか?」
「はい。部屋に希望はありますか?」
「あ、冒険者ギルドに近いところがいいです」
「えー…今は安くて狭い部屋が空いていますが、そちらでもよろしいでしょうか?」
「はい。いくらですか?」
「一月で30リムです。それと、冒険者登録はされていますでしょうか?冒険者の方は、20リムになりますよ」
「じゃあ、一緒にお願いします」

そんな風に手続きは進んでいく。
滑らかな会話が終わると、「少々お待ちください」と言われ、ベンチに座る。
周りの冒険者達は、パーティを組んでいると思しき4人組や、仲が良さそうな男女2人組が見える。
と、体の大きな男達がこちらに歩いて来るのが見える。

「おいお嬢ちゃん、俺らと遊ばねえか?ギャハハハハ!」

明らかにこちらを馬鹿にしている。
正直、付き合う気力は無い。
スキルなんかは増えたし、頑張れば倒せるかもしれないが、面倒だ。
取り敢えず無視!

「オイオイ、無視かよ?この未来の勇者の俺達が誘ってやってるんだぞ?」

こんなのが勇者とかないわー。ないない。
うーん。どうしよう、騒ぎを起こしたくないし…
丁度良く、受付嬢さんが戻って来た。

「ヨイチさーん、来て下さーい」

呼ばれたからにはもう構っている暇はない。
男も受付嬢がいる時にこんな事をするのは立場が危ないと判断したのか、舌打ちをして去っていった。

「面倒な人に絡まれていたんですね。何かあったら大きな声で呼んで下さい、社会的制裁を加えるので」

ギルドはモンスターのドロップの買い取りを行なってもいるため、ギルドを出禁になれば生活が出来なくなるのはほとんどの冒険者が理解しているそうだ。

「こちらが冒険者証になります。最初はブリキで、クエストをこなすことで階級が上がっていきます。現在最も高い階級であるアダマンタイト級を目指して頑張ってください!」

ちなみに、ブリキ級はクエストを5つ終わらせれば脱却でき、その次の鉄級になれるらしい。

「次は、家の件ですね。こちらが家の鍵です。建物はすぐ近くの仕立て屋の後ろにあるミノタウロス荘です。鍵に付いたタグに部屋番号が書いてあるので、それを見て部屋を見つけて下さいね」

それから冒険者としてのマナーや家に関する説明を受けて、その後モンスターのドロップ売却をする事になった。

「どうぞ」
私がインベントリから取り出したドロップはスライムゼリーとランラビットの脚。
スライムゼリーは、まぁ…うん。向こうから襲って来たし…
スライムを倒してもプルフが何の反応もしなかった事が驚きだったが。

「…え?ま、待ってください、ランラビットを倒したんですか?」
「あー、はい」
「凄いですね。流石シーフです。普通はすばしっこくて倒す事もままならないのに」

どうやら、私が速いお陰で倒せていたらしい。
びっくりした。よくあるラノベの展開見たいになってしまうかとヒヤヒヤしていたが、それは杞憂に終わった。


その後、今月の分の借りた家の家賃をモンスターを売ったお金で払い、家へ向かった。
意外にもすぐ近くにあったそのアパート?は、「そりゃ安いだろ」と思うほどにボロボロだった。ここはリアルでなくて良かったのではと思うが、出来るだけリアルにするのがこのゲームの制作会社のポリシーらしく、変な所も凝っている。

中に入ると、階段が目に入る。
俺の部屋は鍵のタグの番号によれば2階のようなので、階段を上がって廊下を歩く。
突き当たりの部屋が俺の部屋で、鍵を使って中に入る。
扉を閉じて鍵をかけると、プルフを帽子から出す。
歩いている時プルプルと震えて落ちそうになって冷や汗が流れていたが、当の本人は全く気にしていないようだ。


部屋にプルフを残して服を買った後、俺は武器屋に来ていた。

「いらっしゃいませー!」
従業員の声が聞こえる。
「本日はどんなご用でしょうかー?」
「新しい短剣を探してて…」
「短剣ですねー!こちらなんていかがでしょうー?」
そう言って差し出されたのは、綺麗な細身のナイフだった。
「こちらはー、安くて使いやすくて量産されている人気の物なんですー」
「いくらですか?」
「400リムになりますー」
今の所持金は700リム。
充分足りるな。
「じゃあ、それで」
「ご購入ありがとうございますー!」
武器の手入れの仕方を教わると、ナイフを受け取って店を出た。

取り敢えず、今日は部屋に戻ってログアウトしよう。

そして、部屋に着くなりログアウトし...




…は?
ログアウトが出来ない。
プレイ時間が足りないからか?
この先行プレイはデバッグの意味もあるはず。
なら、データ収集の為にログアウトに必要なプレイ時間が設定されている可能性はある。
しかし…どうすればいいんだろうか。
デバッガーじゃあるまいし。
うーん…


よくよく考えれば、俺に出来るのはレベル上げ。
出来る事であり、やりたい事だ。
早速プルフを帽子に隠してミノタウルス荘を出る。
俺が出来るのはただ戦う事。それだけだ。



俺は街を出てからスライムでもウサギでもなんでもいいから倒した。
ドロップアイテムがたまるとギルドに行って売却した。
あまりのハイペースに驚かれたが。

気がつくと、既に日が沈み、夜になっていた。
それでも街の外に出ようとすると、門番氏に止められた。
「夜は異常に強い怪物が出てくる。結界が張られた街の中にいた方がいいぞ」とのこと。
ますます外に出てみたくなったが、デスペナルティで所持金が減るのは面倒だ。
取り敢えず、今日の所は部屋に戻ろう。

っと、その前に何か食べよう。


ずっと動いていてお腹が空いた、、、、、、


うん?
お腹が、
空いた?

おかしい。
ゲーム内で空腹を感じるだと?
このゲームは確かに最先端の技術が詰め込まれているが、いくらなんでもおかしい。

どういうことなんだ?

混乱した俺は、ギルドに向かう。
走っている間、プルフが頭の上で凄くプルプルしていたが、気にする余裕は無かった。

ギルドにつくと、三角のマークが付いた人間を探す。
しかし、時間が時間だからか、昼間見つけたような人間はいない。
受付嬢にも聞いてみるが、参考になるような答えは得られなかった。
他にも仕立て屋、武器屋と自分が行った事のある場所を訪れるが、全くプレイヤーらしき者は見当たらない。

一旦プレイヤー探しは休止して、食事が出来そうな店を探す。

丁度よくギルドの2つ左に飲食店を見つけ、すぐに入る。
空腹で倒れそうだ。

「いらっしゃい!ご注文は?」
元気が良さそうな女の子が話しかけてくる。
そばかすがある、日に焼けた肌が健康的だ。
エプロンを着けているし、従業員なのだろう。
「何か、食べ物を…」
「何でもいいなら、ウチの自慢の定食セットを食べなよ!」
私が疲れているのを察したのか、そう言って奥に行く。

少しすると、大きな肉と黒いパン、白いスープが載ったトレイを持って戻ってくる。
「あいよ!当店自慢の魔物肉定食だよ!」
俺のテーブルの前に、とても美味しそうなステーキや、湯気が上がっているスープが置かれる。
ナイフとフォークを手に取ると、ステーキを切り分けて口に入れて行く。
噛むたびに肉汁が口に広がり、幸福感を感じる。
そんな俺を見てもう大丈夫そうだと判断したのか、従業員の女の子は他の客の注文を受けに行った。

俺は、スープを飲んで優しい気持ちになり、硬いパンを食べて苦笑いした。
途中、俺が獣人だからか、あからさまに舌打ちしてくる奴なんかがいたが、知った事じゃない。

完食すると、さっきの従業員を呼ぶ。
礼を言うと、「お客に美味しい飯を出すのは当たり前の事だよ!」と恥ずかしそうに彼女は言った。
「また来ます」
「絶対だからね?じや、明日も頑張ってね!」

店を出ると、アパートに向かって歩き出す。
今日一日で分かった事、分からない事が見つかった。
明日はその事を解決したい所だ。

部屋に戻ってからまたログアウトを試すが、反応は無かった。

大人しく部屋にあったベッドらしき物に寝転がり、俺は眠りに落ちた。






俺は目覚めた。
残念ながらゲーム内だ。

俺がいるのは『FORTH LIFEフォース ライフ』という最新VRゲームの中。

何故かログアウトが不可能になり、しかも空腹感や眠気を感じる事態に。
何が起きているのか分からない俺は取り敢えず他のプレイヤーを探そうとしたが、誰一人として見つからず、仕方なくゲーム内のアパート『ミノタウルス荘』で眠りについた。

そして今起床した所。
もう、何が何だか分からないが、取り敢えず食事がしたい。
人間は朝ご飯を食べるもの。
アパートの裏の井戸で水浴びをして体の汚れを落とし、昨日食事をした居酒屋『銀龍亭』に向かう。

人々はまるで生きているかのようにリアルな仕草で、街には活気がある。こんなの普通のAIでは不可能だ。一体このゲームにいくらかけられたのだろう。

考え事をしていると、銀龍亭に到着する。

「いらっしゃい!おっ、昨日のお嬢ちゃんじゃないか!」
店に入ると、そばかすのある若い女性従業員が話しかけてくる。
ちなみに俺のゲーム内の性別は女性。ネカマだっていいじゃないか。


「あのさ、昨日名前を伝え忘れたけど、私の名前はナキラだよ。改めてよろしくね!で、どうする?今日も昨日と同じ定食にするかい?」
「朝から肉はキツイので、パンとスープだけで」
「あいよ!パンと肉一丁!」
彼女がそう言うと、厨房らしき店の奥から返事が聞こえる。
返事を聞いたナキラは、他の客の接客に戻る。

しばらくして、ナキラが俺の元にパンとスープを持って来る。
「リクラリはサービスするよ!ゆっくりして行きな!」
リクラリはコーヒーのような飲み物で、苦味の奥に旨みを感じた。
パンは昨日と同じ黒くて硬いパンだったが、スープは昨日よりもトロッとしていて、味は以前食べた事のあるジャガイモのスープに似ていた。

少しして、食べ終わると代金をナキラに渡して店を出る。
街や人を観察しながら、モンスターのいる草原を目指す。
門番の横を通り過ぎ、草原に出る。
ちなみにこの草原はダラス草原と言うらしい。

昨日、何故かテイム出来たスライムのプルフと共に、スライムと脚の速いウサギのランラビットを倒しまくる。
途中、ランラビットを追ううちにゴブリンなんかが出る辺りまで来てしまった。
この草原は、街から遠くに行けば行くほど敵が強くなる傾向があるらしい。そして、俺はレベルを十分上げてから新しい敵に挑むタイプだ。
だから、今ここまで来てしまったのは少し誤算だった。

「グェゲゲッ!」
気持ちの悪い声に振り向くと、緑色のモンスターが立っている。
見た目からしてゴブリンで間違いないだろう。
多くの作品で「弱い」「汚い」「気持ち悪い」と言うイメージを植え付けられたゴブリンだが、群れを成して人を襲う事から、この世界では恐れられているらしい。この話をしてくれたのは門番氏である。アドバイスを結構な頻度でくれるので、あまり事前情報がない人はこの人に助けられる事になるだろう。

話を戻すと、今俺はゴブリンに襲われている。
はぐれ個体だったから良いものの、群れだったらどうなっていた事か…
ゴブリンは真っ直ぐ突撃して来て、俺の顔を狙って腕を振って来る。
それをAGIのステータスにものを言わせて、危なげなく回避する。
拳を振った隙まみれのゴブリンの横腹に右手のナイフを刺し、素早く引き抜く。
驚いて動揺しているゴブリンの後ろに移動し、心臓があるであろう位置にもう一度ナイフを突き立てる。

骨の隙間を縫い、肉を切り裂いていく感触が手に伝わり、気持ちの悪い感覚になる。
ナイフを抜くと、ゴブリンは倒れ、ポリゴン片になって消える。

今倒せたのは相手が一体だったから。また倒せるとは限らないし、デスペナルティもどれくらいか分からない。リスクを考えれば、街の近くに戻るべきだと判断し、ドロップがある事だけを素早く確認して、また元の狩場に戻った。


それから日没まで狩りを続け、ドロップアイテムを売った金で新しい服や替えの服、生活に必要な道具を揃えて、銀龍亭で食事を済ませて自分の部屋で粗末なベッドに寝転がる。

何か忘れていた気がしたが、思い出せないのでそのまま寝た。






あー…
すっかり忘れていた。
俺は昨日他のプレイヤーを探す筈だったのに、ただモンスターと戦って一日を終えてしまった。
今日こそは、と思い部屋を出る。


朝食を食べに居酒屋『銀龍亭』にやって来た。
今日も昨日の朝食べた物と同じ料理を頼む。

食事を終えて、すぐ隣の建物、冒険者ギルドに向かう。
大きな観音開きの扉は開いたままで、中の様子は外からでもよく見えた。
今外にいる俺にも、誰かが揉めている事が良く分かる。
様子を見ていると、甲高い声が聞こえてくる。

「あんたがしくじったからドーグが怪我したんじゃない!」
どうやらパーティ内でトラブルが起きているらしい。

「ご、ごめん…」
「ハァ!?謝るだけで済むと思ってるの!?」
「ユール、お前はクビだ」
「そ、そんな!」

どうやらドーグと言う男が怪我をしたらしく、ユールと言う少年が責められているらしい。
見た感じ、少年は軽装でナイフを腰に下げている事から、魔法職や前衛職では無い事が分かる。
同じナイフ使いとしては助けてあげたい所だが、俺は変に目立ったりする事は嫌いだ。
少年には悪いが、素通りさせてもらおう。

パーティからクビが云々の話をしているパーティを気にする受付嬢に話しかける。

「おはようございます」
「ひゃっ!あぁ、ヨイチさんですね。今日はどういったご用件でしょうか?」

俺は人が多く集まる場所について質問する。

「それなら、ギルド二階の酒場ですね。あとは、少し人気は落ちますが、銀龍亭がおススメですよ。料理も美味しいですし」
ギルド二階には酒場があったらしい。階段は奥の方にあったから気付かなかった。
ていうか、銀龍亭は結構人気がある場所だったのか。自分の食事に集中していて、周りを気にした事は無かったが、人は多かったようだ。

取り敢えず、ギルド二階の酒場に行く事にし、階段を上がる。

階段を上がった所から酒場を見渡す。
プレイヤーだと頭上に三角のマークが出る筈なのだが、それが付いている人間は見た限り居なかった。

階段を降りた頃には、先程の喧嘩していたパーティは居なくなっていて、ユールと呼ばれていた少年だけが残っている。

可哀想だが、出来る事は無いし、下手に慰めて面倒な事になっても困る。放置しよう。それが良い。


銀龍亭に戻ってきた俺は、また三角のマークを探す。
飲み物を頼んでから三分ほど見ているが、一向に見つからないプレイヤーらしき人間。
初日に見かけたのはなんだったのだろうか?


銀龍亭を後にし、ギルドにクエストを受けに戻ってくる。
誰も受注していないクエストは入り口から見て左の壁に貼ってある。
自分が達成出来そうなクエストを探す。
というより、今はまだブリキの冒険者証だから受けられるクエストも少ない。
取り敢えずはスライムゼリー収集のクエストとランラビットの脚を集めるクエストを受けてギルドを後にする。


草原に出た俺は、プルフを帽子から出して新しいスキルを使ってもらう。
プルフは俺とレベルを上げている間に新たに『索敵Lv1』というスキルを手に入れていて、そのスキルでスライムやランラビットを探している。

少しするとプルフの索敵にスライムが引っかかる。
何故かはわからないが、テイムしたモンスターの主人はある程度リンクするらしく、索敵でモンスターが引っかかると主人である俺にもその情報が伝わって来るのだ。

プルフの索敵を駆使しながらモンスターを倒して行く。
クエストに必要な分スライムゼリーとランラビットの脚を集めると、ゴブリンがいるであろう場所まで移動する。

索敵が反応し、4体のゴブリンが近くにいる事が分かる。
気を引き締めつつ、ゆっくりと反応があった場所に近付く。
レベルが上がって隠密Lv1がLv4になった事で、ランラビットくらいなら背後を取れるようになっていた。

ゴブリンの群れを見つけると、プルフをゴブリンを挟んで向こう側に行かせて、俺はゴブリン達に気付かれないように近付く。

最初に倒したのは一番後ろのゴブリン。
後ろから掴みかかり、声を出す前にナイフを刺した。
次に目の前にいるゴブリンの横腹を刺して、襲撃に気付いた他2体のうち近い方を切り裂く。
プルフが無傷だったゴブリンを後ろから窒息させる。
俺は2番目に攻撃したゴブリンにとどめを刺し、プルフが最初に襲いかかったゴブリンが絶命した事を確認すると、最後のゴブリンを倒す。

戦闘でも、異変が起きていた。
倒したゴブリンがポリゴン片になって消える事が無く、死体のまま残っているのだ。
さっきまでスライムを倒しても、ちゃんと消えてドロップアイテムがインベントリに入っていたのに、今回はそれが無い。

ログアウトが出来なくなったり、倒したモンスターが消えなくなったり。
分からない事だらけだ。


それから、俺はゴブリンの死体×4を持って門番氏の元へ行き、ゴブリンの解体方法を教わった。
そのあと、ゴブリンの部位をギルドに売り、クエストに必要なスライムゼリーとランラビットの脚を納品した後、銀龍亭で食事をして家に戻った。

今日もログアウトを試そうと思い、メニューウィンドウを出したが、ログアウトのボタンすら無くなっていた。一体どういう事なのだろうか。

今日はもうやれる事が無いので、ボロボロのベッドに寝転がった。
このベッドも新しくしないとな。


ステータス
ーーーーーーーーーーーーーーーー
名前 ヨイチ
性別 女性
種族 ビースト
職業 シーフ
Lv15

HP 75/75
MP 30/30
STR 60
VIT 20
DEX 60
AGI 160
INT 15

ースキルー
・加速Lv5 ・短剣術Lv6 ・隠密Lv4 ・気配隠蔽Lv3 ・AGI成長補正Lv3

ーーーーーーーーーーーーーーーー







朝になった。
今日はログアウトが出来なくなった日、つまりプレイ開始から四日経っている。

昨日までログアウトが不可能になった事に関して進展は無く、恐らく次の街に行かないと何も分からない気がする。あくまで気がするだけだが。


今日は、草原を少し進んだ所でゴブリンの群れを倒していた。
モンスターが倒してすぐ消える事は無くなり、ドロップアイテムが直にインベントリに入る事も無くなったものの、ドロップアイテムとは違って自分で剥ぎ取るから、取得できる物の数は増えた。良いのか悪いのか…

最初の遭遇では、結構ギリギリだったが、今はもう考え事をしながらでも殲滅出来るようになった。

倒したゴブリンを解体していると、戦闘を手伝ってくれていたスライムのプルフが近付いて来る。

どうやら、何か食べたいらしい。
ちょうど良く、今解体している肉がある。

食べたいかー!
おー!



プルフは、俺が置いたゴブリンの腕に覆い被さって食べている。
ゆっくりだが、全部のゴブリンの解体を終わらせる頃には食べ終わっているだろう。

十分ほどして、ゴブリンの部位をインベントリに入れ終えると、プルフが食事を終えていた。
なんだかいつもよりプルプルしているが、どうしたんだろうか。

少し見ていると、プルフの周りに光が舞い始める。
タイミング的に、進化だろう。
いつもは食事をしないのに、食べ物を要求して来たり、最初に出会った時より大きくなっていたり。
レベルも20になっていたから、進化の可能性は高い。
進化があるかはわからないけど…

問題は、何になるか、だ。
青いプルフと同じ種類のスライムしか見た事は無いが、赤いスライムとかになるのだろうか。

wktk、wktk!

ワクワクしながら見ていると、光が一層強くなる。
あまりの眩しさに目を瞑る。

目を開けると、そこには透明なスライムが居た。
すぐにステータスを確認する。

ーーーーーーーーーーーーーー
名前 プルフ
性別 無し
種族 シーフスライム
Lv1
HP 50/50
STR 50
VIT 30
DEX 60
AGI 80
INT 20

ースキルー
・分裂Lv1 ・索敵Lv2 ・隠密Lv3 ・気配隠蔽Lv2 ・暗殺Lv1

ーーーーーーーーーーーーーー

なんかシーフスライムとかいうのになってる。
なんか透明度増した?
あと、シーフが育てたからシーフスライム?安直すぎない?

スキルを見ると、暗殺というスキルが増えている事が分かる。
恐らく、気付かれていない間に与えるダメージがアップする感じだろうか。
またLv1に戻ったから、上げればまた進化するかもしれない。
次の進化は何になるのだろうか。私、気になります!


俺もレベルが上がってきて、もうLv21になっている。
人間の転職はどうすれば良いのだろうか。
そう思って門番氏ウィキに聞いてみると
「冒険者ギルドの横の道を歩いて行って、坂を上がれば神殿があるから、そこで転職出来るぞ」とのこと。

早速神殿に向かうと、人がまばらに居て、その内三割程は神官のような服を着た人がいる。

近くにいた人に聞くと、転職は神殿の奥で出来るらしい。
ただし、Lv30じゃないと転職出来ないそうな。


自分の今のレベルでは転職が出来ないため、とりあえず武器を新調する事にした。
最近、ゴブリンの骨に当たったり、ゴブリンがたまに持ってる棍棒で防がれたりして、ボロボロになって来ていた。
最近では、強引に刺す事は出来ても、切る事が難しくなっていたのだ。

武器屋に入ると、以前俺に新しいナイフを勧めてくれた従業員が近付いて来る。

「いらっしゃいませー!今日はいかがないましたかー?」
そう言われて、ボロボロになったナイフを見せると、
「新しい武器ですねー!少々お待ちくださいー!」
と言って奥に行ってしまう。

待っている間に、飾られている鎖帷子や長剣を眺めていると、さっきの従業員が戻ってくる。

「こちらのナイフなどいかがですかー?」
そう言って差し出したのは、黒くて刺す事に特化した形状のナイフだ。
最近は刺す事が主な攻撃手段だったから、刺突に特化しているのはありがたい。

「いくらですか?」
「1200リムですー」
値段を聞いて買う事に決めて、財布から1200リム取り出す。
今、俺の懐は潤沢なのだ!むしろビショビショ!
ちなみに、リムは硬貨で、小さい物から順に価値が上がる。

「お買い上げ、ありがとうございましたー!」

店を出ると、従業員の声が後ろから聞こえてくる。
外はもう夜になっていて、居酒屋に明かりが付き始めている。

少し街を散歩していると、以前ギルドでパーティをクビになっていた少年が座り込んでいる。
その目の前にアパートがある事から、家を追い出されてしまった事が推測できる。
可哀想に…
同情はするが、今は助けられない。
部屋に初対面の相手を入れる訳にもいかないし。
うーん…

でも、放って置けなかった俺は、近付いて声を掛けていた。

「あのー、この前ギルドに居た人ですよね?」
「え?あぁ、はい」
「どうしたんですか?こんな所で座り込んで」
理由はなんとなくわかっていたが、一応聞いてみる。
「あはは…実は、家を追い出されてしまったんです。家賃を払えなくて、それで…」

俺も、大きな怪我をしてしまったりしたら、モンスターを倒して金を稼ぐ事が出来なくなり、今の家拠点を失ってしまうのだろう。まぁ、攻撃が当たってもHPが減るだけだろうが。

「あの、なんで声を掛けてくれたんですか?」
今度は、ユールだっけ?少年から質問してくる。
「ちょっと気になっちゃって…そうそう、家が無いなら、安い借家知ってますよ」
俺が住んでいるミノタウルス荘の事である。
この辺で普通くらいの食事で40リム。
家として、一月30リムくらいというのは、普通は考えられないほど良物件なのだ。

「ほ、本当ですか!ぜひ教えて下さい!」
「ギルドの近くの仕立て屋さんの裏手にあるミノタウルス荘です。ギルドで受付嬢の人に聞いてみて下さい。大体30リムくらいで借りられますよ」
「教えてくれてありがとうございます!」

余程嬉しいのか、凄い満面の笑み。


あ、そうだ。

「パーティって今所属してないですよね?出来れば、私と組んで欲しいんですけど…」
「ぜひぜひ!むしろこちらこそよろしくお願いします!」

フッ、チョロいぜ。
女性(めっちゃ俺好み)の見た目にかかれば、パーティ結成など余裕!
そこ、コミュ障だろとか言わない。


自己紹介を互いに済ませた俺達はその後、パーティ登録の為にギルドに一緒に行って、ついでにユールの家も契約してもらった。

パーティ登録の際に、ステータスを確認してみた所、ここでもしっかりパーティ編成をしている事とパーティメンバーの情報が分かったのだ。
登録の時に使った水晶玉にそういった能力があるのだろう。

その後、一緒にミノタウルス荘に向かったが、ユールはボロボロの建物を見て、ホッとしているような、ガッカリしているような表情だった。

まぁ、安いアパートなんて、ボロボロか曰く付きだもんな…
ボロボロの方が、曰く付きよりマシだろう。

俺が遠慮無くミノタウルス荘に入って行くと、
「え、ヨイチさんもここに住んでるんですか?」
「あぁ、はい」
「でも、ヨイチさんって結構稼いでますよね?僕よりもずっと多く」
「安いし、ギルドに近いので」

質問の答えに納得した様子のユールと一緒にミノタウルス荘に入る。
ユールの部屋は一階の為、階段前で別れる事になる。

「じゃあ、また明日、よろしくお願いします!」
「えぇ、また明日」

挨拶をして、俺は階段を上り、ユールは廊下を歩いて行く。
自分の部屋に辿り着くと、すぐにプルフを帽子から出す。
少し重くなっているため、頭が疲れてしまった。
落とさないように姿勢良く歩いていたから、一見すれば育ちの良い冒険者に見えたかもしれない。冒険者に育ちとかあるのか知らないけど。


考え事をしながら、ベッドに飛び込んだ。





〜ユールが仲間になった日から一週間後〜

今日も今日とてモンスター狩り。
ユールも当然一緒。

あれからユールとは結構仲良くなった。
そして、パーティ、というよりタッグ?を結成した次の日に、ユールのスキルなんかを見せてもらった。

結果、ユールはクレリックのLv15、スキルは『ヒールLv2』と『キュアLv1』がある事が分かった。
今までダメージを受けた事は無かったが、今後なんらかの形でHP回復手段を用意しないといけないとは思っていたため、ユールが仲間になったのは嬉しい誤算だった。

さて、今はユールと共に街からまあまあ離れた場所に来ている。
この辺りには、オーガやワームという敵が出て来る。
オーガは角が生えた2メートル程の大きさの人型モンスター。
ワームはミミズを長さ3メートルまで大きくしたような見た目。
どちらも単独行動してくれて暗殺しやすい。

実は、オーガが出てくるような場所に来るようになってから、大きくレベルが上がっていたのだが、Lv40になった時に『暗殺』というスキルを手に入れていたのだ。
『暗殺』は見つかっていない間に与えるダメージが上がるというスキルで、積極的に暗殺の恩恵を受ける為に背後から急所を狙って攻撃していたら、『急所突き』というスキルも手に入った。
『急所突き』は急所を攻撃した際に威力が2.5倍になるというもの。
『隠密』スキルもあるので、完全に暗殺特化な感じだ。

だから、ワームでもオーガでも基本瞬殺で済ませていって、非常に効率は良かった。
ユールには少し引かれてたけど。


森の中を歩いて行くと、鉄製のハッチが見えてくる。
暫く探索をしていて発見したのだが、今まで開けた事は無かった。
「この扉、何のためにあるんですかね…」
とユールが独り言を呟く。
実際、俺もコレが何の為にあるのか分かっていなかった。

しかし、扉があれば入るのがゲーマーのサガ。
「という事でレッツゴー」
「おー!」
ユールって結構ノリが良い。

ハッチの下の梯子を降りて行くと、石で出来たいかにもダンジョンぽい所に着いた。
「ここ、見つかってないダンジョンですかね?こんな所聞いた事も無いし…」
どうやら、ユールも知らない場所のようだ。

少し進んでみると、アンデッドのモンスターであるスケルトンが歩いて来る。
どうせ敵なので近付いて首を折る。
手刀で叩いただけで折れてしまったのは驚きだが。

「アンデッドは浄化魔法が効くんですけど…必要無さそうですね」

そういえば、仲間にクレリックがいるんだった。
ユールもレベルアップして『ホーリー』という浄化魔法を覚えていて、アンデッドを倒す事が出来る。
まあ、俺のレベルが57になってSTRだけでゴリ押せるんだけど。

ユールに『ホーリー』を使ってもらいつつ、先に進んで行く。
途中で宝箱を発見したので、早速開けてみると、『骨の杖』という安直な名前の杖が入っていた。
ちなみにプルフがいつのまにか『鑑定』スキルを覚えていた為、それにより俺も物の名前等が分かるのだ。
何回も使ってるうちに何故か俺も『鑑定』スキルを手に入れていたが、性能に違いが無いようで安心した。

その後、スケルトン以外にゾンビも倒していると、やたら広い部屋に辿り着く。
「え?ここって、もしかしてボス部屋?」
「確かに、ボス部屋っぽいですね…」

中心に向かって歩いて行くと、途中で歩いて来た通路が塞がる。
それと同時に、部屋に明かりがつき始める。
壁に付いていた松明に何らかの力で火をつけているようだ。

『クククク…この場所にやってくる人間がまだいたとはな』
「誰だ?何処に居る」
『フン。小娘と小僧、そしてスライムよ。せめて我を楽しませよ!』

そう言って姿を現したのは、真っ黒なローブを纏って王冠を頭に乗せた骸骨。鑑定すると『リッチ』である事が分かった。

『封印されて数百年…我は退屈していたぞ』

「ユール!」
「はい!『ホーリー』!」

ユールが叫ぶと、ユールの杖から光の玉が飛ぶ。
ユールが持つ『骨の杖』は聖属性魔法…つまり『ヒール』や『ホーリー』の効果を1.5倍にする能力があった。

『フン!どうやら、骨の杖を手に入れたようだな…
というか話していたであろうがっ!人の話は聞け!』
お前はモンスターだろ…

ユールの攻撃を手で払いのけるリッチ。
逆に、黒っぽい魔法攻撃を放って来る。
ユールを抱えて避けるつつ、リッチを観察する。

どうやら、左手に着けている腕輪に魔法を払う効果があるようだ。
何度か『ホーリー』が飛んで来ても、全て左手で払っている。

しかし、それならそれで良い。
魔法が効かないなら、近付いて殴るのみ。
幸い、魔法を受けている間は左手が必ず不自由になる。
その隙を狙おうと考え、一旦ユールを下ろす。
俺が何かしようとしているのを感じ取ったのか、一度頷くと『ホーリー』を連射する。
ユールもレベルアップしているから、MPは結構増えている。

『フハハハハ!無駄だ!我に魔法など効かぬ!』

リッチは左手で魔法をガードし、右手で黒い球を何発も打ち出して来る。
右手を抑えられれば…そうか!


「今だプルフ!飛び掛かれ!」
『何ッ!?』

プルフを右肩に飛びつかせる。
叩き落とそうとリッチが左手を上げるが、『ホーリー』を受けて仰け反る。
直ぐに左手でホーリーを防ぎ始めるが、プルフは右腕と右脚まで伸びつつある。

攻撃は封じた。
次はトドメだ!

「ハァッ!」
『グッ!?』

俺の200を超えたSTRを喰らえ!
リッチの顔面を思い切り殴り付けると、「ゴキッ」という音が聞こえる。
続け様に左手を蹴り飛ばす。

左手でガード出来ないリッチは、ユールの『ホーリー』を遂に喰らってしまう。
『骨の杖』により強化された『ホーリー』を一気に何発も当てられたリッチは大きく吹っ飛ばされて壁に叩き付けられる。

『人間如きがあぁぁッ!!』

壁に叩きつけられ、更に10発ほど『ホーリー』を喰らった後、断末魔と腕輪を残してリッチは灰になった。
リッチを倒した事により、宝箱と先に進む扉が現れる。

「僕達、あの『リッチ』を倒しましたよ!」
「そうだね!」

腕輪を拾って鑑定すると、『破魔の腕輪』と表示される。
説明文には、思った通り魔法を消滅させると書かれていた。
経験値も結構入ったし、何より魔法を防ぐ腕輪、『破魔の腕輪』が手に入ったのは嬉しい。
避けるのが苦手なユールに着けてもらい、その後宝箱を開ける。

中には、白っぽいナイフが入っている。
どうせ骨製だろ、と思いつつ鑑定すると、『輝骨きこつのナイフ』と表示される。
説明には、「リッチの背骨を使ったナイフ。アンデッドに与えるダメージ1.5倍」と書かれている。

どうやら『骨の杖』と似たような性能のようだ。
このダンジョンでレベルを上げるのが捗るだろう。

「この扉をくぐれば出れるのかな?」
「僕が行ったことのあるダンジョンはそうでしたよ」
ユールは荷物持ちとしてダンジョンに行った事があるらしい。
まぁ、それがきっかけでパーティを追い出されてしまったようだけど…
取り敢えず、扉を開けてみる。



扉を開けた瞬間、視界が白い光に包まれたと思ったら、元の森に戻って来ていた。
足下にはハッチがあるから、ダンジョンの直ぐ前にワープして来たのだろう。


この日は、もう夕方だったから街に戻った。
『銀龍亭』にやって来ると、日替わり定食を注文する。

「今日は凄い疲れました…」
「ユールはMP結構使ったからね。明日は休養日にしようか」

雑談をしたりしていると、料理が運ばれて来る。
パンを食べていると、異変を感じる。

「なんか今日は人が少ないね」
「確かにそうですね。いつもはもっと人が多いのに」

「新しい店が出来たんだよ」
「あ、ナキラさん!新しい店って…普通、こんなにお客さんが離れたりしませんよね?どういう事ですか?」
ユールが質問する。
確かに、新しい店が出来るだけでこんな事になるだろうか。

「きっと、魅了魔法を使っているんだよ」
「魅了魔法?」
「ヨイチさんは知らないですか?魅了魔法は、かけられると物や人を取り憑かれたように好きになってしまう魔法なんです」

話を聞くと、その可能性は高いように思えた。

「魅了魔法は禁忌です。使ったら最悪処刑されることもありますし、教えられるような人も居ないはずなんですけど…」
「悪魔とかが使ってる可能性は?」
「あるにはありますが…悪魔がそれをするメリットが感じられませんし…」

「…お店にやって来た人の魂を少しずつ食べている可能性は?」

俺が思いついた事を言うと、ナキラは絶句する。
自分の店の常連客が魂を食べられているなんて、とても恐ろしいだろうからな…

ナキラは少し考えるような仕草をした後、決意したような顔になる。

「二人とも、冒険者だろう?」
「ええ、そうだけど」
「…銀龍亭からの依頼だ。あの新しい店を調査して欲しい。報酬は幾らでも出すよ!」

俺は思案する。
この依頼を受けて、メリットがあるだろうかと考えてしまう。
しかし、俺は依頼を受けようと思った。
今はメリット云々より、自分の通う店が無くなる事が怖かった。

「分かった。その依頼、私達が受けるよ」
「本当か!よろしく頼む!」

ナキラは深々と頭を下げる。
明日は休養日にしようと思ってたけど、明後日になりそうだ。





小説のコメントコメント
この作品の著作権は、作者である さけゑゑい さんに帰属します。無断転載等を禁じます。

全部まとめました(もともとは○話とかって感じで分かれてました)
指摘等はなんなりと…
何回か修正、書き足し等しますのでコメントにて報告致します

やたら長くしちゃったので、章ごとに分ける感じにしようと思います
2020/07/14 17:31 さけゑゑい



このページの先頭に戻る ↑ 

はじめての方へ

小説投稿サイト・ShortSTORY

小説投稿サイトとは?

ミステリー小説・SF小説・ホラー小説の投稿。短編・掌編・長編オンライン小説/ネット小説投稿サイト『ShortSTORY』、ミステリー小説・SF小説・ホラー小説の投稿が無料。感想やコミュニティでの意見交換など

坂口安吾のすべて
チェンマイのレンタカー
レンタルバイク【チェンマイ】
チェンマイ・焼肉・日本式
チェンマイ・居酒屋・日本料理・和食・ガガガ咲か場