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『お伽話の流星群 5.5』

千代華著



<ジューイ>

星は、ジューイの手によって確かに消えた。
再び、闇の中でランタンの灯りだけが際立つ。

『これをやるよ』と、マフラーの彼はあるものを手渡す。
なんだか、褒められているような、手なずけられているような
気分だった。
彼がこちらに差し出したのは、望遠鏡。
実際に触るのはこれが初めてだった。星を見るための道具だと
教えられたことがある。が、ジューイは何となくその存在を避けていた、気がする。星はない、という暗黙の了解のような常識のもとで、望遠鏡を覗いたとしても、それは虚空を仰ぐに等しい。そんな感覚がジューイだけでなく、この「星のない村」に染みついているのではないだろうか。




――星は、ある。ここからじゃ見えないんだ。
ユルドの強がるような声が蘇る。
ジューイだって、子供のころは星があると信じていた。
冬になれば雪が降るし、春になれば桜が芽吹く。星だって。

でもいつからだろう。皆が「星はない」という、作り話だという。
ああ、そういうものなのか。
気づけば順応するように、受動的に、慣れていった。
なんだろう、虚しいような気持に駆られる。

ユルドへのもどかしさが、独りの夜の怖さが、息苦しさが、
今になってぶり返す。糸を手繰り寄せるように、洪水のように、
さまざまな思いが、どうでもいい小さなことまで渦を巻く。

星は、あったのだ。
「ねえ、どうして、星はあったの。
 どうして、ここからは見えないの?ねえ、」
駄々をこねる子供のように涙をこぼしながら、
マフラーの彼にひたすら問うていた。
 ねえ、ねえ。
 どうして、見えないことにしてしまうんだ。
――もし、本当に星があるのなら。ジューイがうんと大きく
  なれば、見ることが出来るかもしれないわね。
今ではもう擦れてしまったあの時の、撫でつけられるような感触。
目を瞑るような昔の違和感を、今目の前にいる彼にぶつけたとて
どうにもならないが、それでもジューイはつぶてを投げつけた。

残ったのは、星はあるという覆された事実と
      変わらない自分の未熟な心。

マフラーの彼は表情を変えずに、ただじっと
ジューイの言葉が絶えるまで聞いていた。


『覗いてみな』
ゆっくりとそう語り掛け、ジューイの手にある望遠鏡を示す。
思っていたよりもいくらか重い、その望遠鏡の中は
万華鏡のように星が点々と散らばって輝いていた。

「星が、見える」
『お前が盗んだ星たちだ、』
じゃあな星泥棒、と呟いてマフラーの彼は去った。
彼の持つランタンの灯りが、やけに温かい色をしていた。

丘にひとり残されたジューイは夜風に吹かれながら、
さっきまでの記憶を反芻する。
望遠鏡は消えずに手元にあるし、中の星も、光を放っている。
小さな、自分だけの宝箱を手に入れたような気分だった。

ジューイが彼に「どうしてここから星は見えないのか」と
問うたとき、もし彼が口を開いたなら、何と答えただろう。
知らないよ、自分で考えろ。
投げ槍にそう答えるかもしれない。
涙を流すのは久しぶりで、誰かに本当の思いをぶつけるのも
あまりなかった。
すこし清々しい、そんな気持ちに浸りながらジューイは すん、と洟をすすった。




小説のコメントコメント
この作品の著作権は、作者である 千代華 さんに帰属します。無断転載等を禁じます。

本当は5話としてまとめて書きたかった、
うまい切りどころが見つけられず、5.5話として。
じゃあな星泥棒、

2019/08/05 11:54 千代華



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