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ファンタジー/童話

『彪』

淳虎著




プロローグ〜天地界(てんちかい)〜
『天地界』とは、この地球に存在する、小さな島国。
その島は、この宇宙を作った創造主、『天帝』が特別に作った、創造主の子供達である『天人』を休ませる『聖域』のための島。
 島は結界に包まれ、結界に包まれた島は当然、普通の人には見えず、感知できない。
ただ、人類が生まれてから、巫覡の気をもつ男女だけがその存在に気がつき、『天帝』と、その島を信仰し、修行と称して住まい始めた。
そして、島には文明が開化した。
島の女性達は、同じように巫覡の血を持つ男性と結婚して、子供を増やしていった。ただ、血が薄まるせいか、生まれた全員が巫覡にはなれず、結界が見える程度の力の人間も増えていった。
そして、島の住人は、新しい国を次々作り、外地からの動物と植物を育て、巫覡の力をもつ者は菜食の精進料理を、巫覡の力をもたない者は肉食で育つ。
彼らは、道を開き、街を作り、文字を完成させた。
島の住人たちは『天帝』と、その落胤である『天人』をあがめ、巫覡の力で祀り上げ、特に『天人』が多く住む国を聖域として定めた。
その国の名は『月沃国』(げつよくこく)。
ただしこの物語の舞台は、その隣のさらに国土の大きな国、『玉雲国(ぎょくうんこく)』である。
『聖域』の島の名前は、誰がつけたのか、いつしか、『あめつちのせかい』から取り、『天地界(てんちかい)』と呼ばれるようになり、今、我々が住んでいる、他の地域は、『人間界』と、分けて呼ばれるようになった。
この物語は、この『天地界』での、ひどく昔の話。
貧しかったが、幸せだった少年時代を過ごした『術者』が、金には不自由しなくなったが、すっかり生きることをあきらめて、それでも生きていかなければならない話。
……彼の行き先は、どこだろう。
その男の名前は。
……白点 彪(はくてん ひゅう)。
彼がおぼえているのは、一緒に、幸せに過ごせた仲間と、一度だけ恋した、美しいお姫様のことだけ。
 それだけが、彼が今生きるための、ただ一つの『術』だった。

……暎蓮(えいれん)様。
彪は、夕暮れの陽の光で、目を覚ました。寝台の上で、体を起こし、そのままそばの卓の上に置いてあった水煙草を吸う。
呼吸が整ったところで、彼は、笑った。
(また、夢の中で、あなたにお会いしましたよ、お姫様)
 そう思いつつ、寝台から降りて、王宮の占天省(巫覡や占い師などを集めた省)の単衣を着たままだったことに気が付き、それを脱いで、床に投げ捨てた。
 ここ、玉雲城内の、王宮に常勤する単身者の住まいが入っている宮殿、『清白宮(せいはくきゅう)』の彼の自室は、荒れ放題だった。
 床に散らばった、衣類や書物などを、足でよけ、また、またぎながら、彼は、壁に取り付けられた、衣装棚に向かった。
 夜が近い。……ここからは、街の巫覡としての時間だ。
 彼は、床から、脱ぎ棄てたままの形をしている古臭い庶民の衣服に着替えると、わざと髪をかきまわして、ぼさぼさにした。
 懐に、護身用の、彼の『聖気(せいき)』の練り込まれた鋲が入っていることを確認して、部屋を出る。
 宮殿内を歩いているだけでも、同僚たちは、彼を侮蔑したような目で見るが、実際は、彼ほどの巫覡としての『術』を使えるものなど、そうはいない。
 彼を変わり者とするなら、占天省で、高額の報酬を得ているのに、わざわざ毎日、汚い恰好に着替えて、街へ出て、雇われ巫覡の仕事をしているところだった。
 城門の兵士とはもう顔見知りなので、軽くうなずいてみせるだけで、彼は城の外へ出た。街へ向かって歩きながら、衣服の袖から酒瓶を取り出し、一息にあおる。
 ……今夜は二件、『口寄せ(死んだ人の魂を一時的に呼び返すこと)』が入っている。
 雇われている家へと出向きながら、彼は思った。
(こんな酒じゃ、酔いやしないな)
 そう言えば、お姫様も、お顔に似合わず、酒には強かったっけ。『斎姫(いつきひめ)』だから、当たり前だけれど。
  彼は、また彼女のことを思い出して、笑いをかみ殺した。扇(せん)様……扇賢(せんけん)様も、あの方の酔いっぷりには、たじたじだったよなあ。
  王音(おういん)姐さんも、酒には強かったな。そう言えば、ナイトさんは、あまり酒が得意じゃなかったみたいだ。人間界の、西方の酒が好きだったからかな?
  ……昔のことを思い出しているときだけ、彪の顔は素直で、幼くなる。彼は、まだ十七歳だった。成人して、やっと二年だ。
 彼らがそばにいたのは、もう四年も前の話なのに。
 王音姐さんにも、ナイトさんにも、会おうと思えば、今でも会える。彼らは、生きているんだから。……だけど、それは、もう、しない。
(俺たちの旅は、もう終わったんだから)
 暎蓮様……。『お姫様』と『扇様』は、今は眠っている。来たるべき、大きな戦いのときのために。でもそれは、俺たち、昔の仲間が死んでからの話だ。
 今の俺は、ただ日々を、占天省で、一人の巫覡として、『天帝』様からの『天啓』を聞き、それを伝え、雨乞いに精を出し、戦があれば、呪者(じゅしゃ)として参戦するだけの存在。
  そして、夜は、こうして、街に出て、かつての自分を探す。もう決して戻ってこない、幸せだった、あの十三の歳の頃を。
  空に星が輝く。
  彼は、庶民の家で、その日の仕事を済ませると、天帝を祀る廟のある広場に立ち寄り、長椅子に座って、もう一度酒の瓶を取り出した。
『薬の『気』が体から出てる』
 顔を上げると、雑霊が目の前にいた。雑霊ではあるが、悪気はないようだったので、彼はそれを滅することはしなかった。
『薬は、やめた方がいいよ。体に悪いよ』
 雑霊は、もう一度、彼にそう言った。
「『口寄せ』をやるときは、精神を狂わせた方が霊を憑りつかせやすいんだ。……薬なら、簡単に心が狂うだろう?」
 彼が答えると、霊は、言った。
『そのうち、死んじゃうよ』
「それでいいんだよ」
 彼は、笑って答えた。
立ち上がり、雑霊を残して、広場を出た。
 このまま、お姫様のいない世界で、生きていたって、面白くもなんともないんだから。
 懐には、貧乏人から取り上げた、高額な報酬が入っている。……本当は、金なんかが欲しい訳じゃない。しかも、貧乏人から取り立ててまで。
 こんな俺だ。いつ死んだって構うものか。もう、お姫様に会えないなら。
 彼は、星空を見上げた。城に向かって、歩き出す。
「月沃国の『気』は、美しかったな……」
 彼は、つぶやいた。

 彼が、暎蓮の妹の信羅に会ったのは、その次の日だった。
 暎蓮は、この玉雲国の『斎姫(いつきひめ。巫覡の最高位を指す)』だった。その、斎姫の常の住まいである『雲天宮(うんてんきゅう)』は、今は主をなくして、空のままだ。
 この国には、今、暎蓮ほどの力をもった巫覡がいないのだった。いかに彪でも、暎蓮の力にはかなわなかった。しかも、彼女には、『神気(しんき)』と呼ばれる、天帝からの強い守護を受けた『気』があった。
 彪は、朝、自室に届けられた、新しい占天省の単衣を羽織ると、朝参(ちょうさん)にも出ずに、占天省の入った宮殿である『宇天宮(うてんきゅう)』へ向かった。
 彼が、暎蓮たちがいない今でも占天省に残っている訳があると言えば、少なくとも、意識のない彼らの体の近くにだけでも、いられるからだった。
……いざとなれば、自分が、彼らの体を護ることができる。
 そして、街でも有名だった民間の『術使い』だった彼の実力が、実際に、占天省では一番だ、ということと、彼が街に出るのは、扇賢が王だった時代からの習慣だということで、許してもらえている、ということでもあった。
 『宇天宮』の回廊を歩いていると、一人の巫女が、通路の端の方で、しゃがんでいた。長い、まっすぐで漆黒の髪。幼い顔は、まだ彪より下だろう。
「あの。……申し訳ありませんが、お力をお借りできませんか」
 彪を見ると、巫女は、言った。彼女が巫女なのはすぐにわかる。占天省の巫覡の衣装を着ているし、多少の『聖気』を感じられるからだ。ただ、その『聖気』』はまだ弱かった。まだ見習いなのかもしれない。
「どうされたのです?」
「私、この回廊を歩いていたら、手すりの棒で、……衣装の足元を、切ってしまって」
「衣装が切れた?」
 彪は反復した。少女は、赤い顔をして答えた。
「は、はい」
 つい彼女の足元を見ると、足首から二十センチほど、単衣の中に着ている衣装の裾が、縦に裂けている。少女は、その視線に、足を隠すようにした。
「あ、ああ、失礼」
 彪は言って、自分の占天省の単衣を脱ぐと、彼女に渡した。
「これを着て、部屋に戻りなさい。この丈なら、その裾も隠せるでしょう」
「ありがとうございます」
 彼女は、彪の衣装を肩にかけると、言った。
「お名前を、お伺いしても、よろしいでしょうか。私は、甦 信羅(そ しんら)と申します」
「……甦?」
 彪は驚いた。……暎蓮様の姓だ。
 そう言えば、お姫様には、歳の離れた妹姫がいると聞いたことがある。それが、この方か。
「あとで、お衣装を、お返しに行くのに、お名前が分からないと、困りますので……」
 彼女の言葉に、彪は、我に返った。
「あ、ああ。……白点 彪と申します」
「……『彪様』。ありがとうございます。後ほど、またお礼に参ります」
 彼女は、笑顔になって、彼の衣装を着たまま、小走りに立ち去っていった。
 ……『彪様』。
 それは、暎蓮だけの、彼への呼び方だった。
 懐かしい。
 信羅は、暎蓮とは、姿はまるで似ていないが、清楚な美しさだけは同じだ。だが、彼女は、まだ幼すぎる。
「お姫様は、俺と十一違いだったからな」
 そう、彼が十三の時、暎蓮は既に二十四だったが、『斎姫』としての不老の力で、まだ十四、五にしか見えなかったのだった。
その彼女は、まだ十七歳の、玉雲国王であった桐 扇賢(とう せんけん)に強く求められ、『斎姫』としての力を失うのを覚悟で、結婚したのだった。
巫覡は、結婚すると、その力を失うのが常だった。
しかし、結果、彼女は、扇賢が『天帝の御使い、五彩の虎』という『神気』を持っていたため、彼と結婚しても、そして、皇子をもうけても、例外的に力を失わなかった。
その、彼女の皇子も、今は、いくつになるのだろう。まだ、幼児だろうが……。
彪は、忘れられない。
『天帝の落胤』である『天人』様から告げられた、暎蓮と扇賢の、この天地界を護るという使命のことを。そして、その、来るべき戦いのために、一時的に休眠状態となり、その体は、眠ったまま、この王宮内の地下室に安置されていることを。
何より、最後の旅の戦いで、力を使い果たした彼らが最後に言った言葉……。
天帝からの守護の強い光を、最後に浴びながら、扇賢は、いつものように不敵な笑顔で笑うと、自分と、仲間たちに、
『じゃあな』
と言った。
彼に寄り添うようにして、振り返っていた暎蓮も、いつもの優しい微笑みで、
『皆様、お元気で』
とだけ言った。
 光が消えた時は、彼らは、手を取り合ったままの姿で、眠っていた。どう動かそうとしても、彼らの体は離れないままだった。
彼らの体が、ようやく、玉雲城王宮に安置されて、最後に仲間たちがあいさつに行った時、扇賢のかつての武術の師であった美しい女性、関 王音(せき おういん)は、彼らに一輪の花を手向けた。
暎蓮を愛し、扇賢と好敵手でもあった、彼の僕(しもべ)の騎士、ウルブズ・トリッシュ・ナイトは無言で、たくさんの花びらを彼らの上から撒いた。
……そして、彪は。
涙が、止まらなかった。二人の存在は、彪の幸せの象徴だった。彪は、暎蓮に恋していたが、それは、扇賢を一番愛する暎蓮のことが一番好きだったからだった。そして、兄貴分であった扇賢のことも、暎蓮を、『この人になら任せてもいい』と思った唯一の存在だと思っていた。
まだ少年だった彼は、彼らの体に近づいた。
「お姫様……暎蓮様」
 彪は、その時初めて、暎蓮を名前で呼んだ。そして、眠る扇賢に向かって笑ってみせると、
「扇様」
と、声をかけた。扇賢は、皇子時代によく街に遊びに来ており、街の民達から『扇様』あるいは、『少虎(若き虎)』と呼ばれていた。彪も、彼と一番親しい、弟分として、愛情をこめて、彼を『扇様』と呼んでいたのだった。
彪は、言った。
「……俺は、男だけど。……まだ、子供だから。……許してくれるよね」
彪は、そっと、暎蓮に顔を近づけ、彼女の美しい唇に、自分の唇を重ねた。生まれて初めて、そして、人生最後になるはずの、接吻だった。
いつも扇賢が、自分と四歳しか年が違わないのに、彪を『子供』と言って、自分以外の男たちから彼女を遠ざけ、暎蓮を独り占めしていた、し返しだった。 
 ……そのことを思い出すと、今でも彼の胸は甘酸っぱくなる。それと同時に、最後に暎蓮を庇った時に負った、顔の古傷も、痛むのだった。

 甦 信羅は、占天省に入ってまだ間がなかった。かつて、姉である暎蓮の結婚話が出た時には、次期『斎姫』に、という話があったのだが、残念ながら、彼女にはそこまでの力は備わっていなかった。しかし、『甦家』は代々、優秀な巫覡を輩出する家柄と言われ、宮廷でも厚遇されており、父は大臣職にも就いている。『斎姫』ほどの力はないものの、父から、占天省に入って、公務をこなすことを勧められ、入省したのだった。
……白点 彪様。……素敵な方だった。
 信羅の胸はときめいた。突然のトラブルに、誰でもいいから、通りかかった人に助けを求めたのだが、彪は、一目見ただけでも魅力的な男だった。
 どことなく、影を背負っているような方。……なにか、おつらいことでもあったのかもしれない。
 しかし、自分は巫覡であり、彼もまた、巫覡である。万が一にも、結ばれることはないのだった。
 彪からは、荒んだ雰囲気と、それと全く同居するような状態で、清浄な『気』が感じられた。
「信羅様、どうなさったの」
 次の日の朝、朝参の後、『宇天宮』に向かって歩いていると、並んで歩いていた、先輩巫覡の女性が、声をかけてきた。
「今朝から全く上の空じゃないの」
「いえ……わたくし」
「まるで、かなわぬ恋でもしているようよ」
「そ、そんな」
 信羅は声を詰まらせた。顔が熱い。
「本当なの?」
 女性は、彼女を上目づかいに見るようにして、驚きの声を上げた。
「巫覡に恋は、ご法度よ。……と、いいたいところだけれど。まあ、若いんだから、無理もないわね。……この占天省に入って、どなたと知り合う機会があったの、どんな方?」
「そんな」
「今さらごまかしっこは、なしよ」
「あの……単衣を、貸していただいたんです。私、衣装の足元を、裂いてしまったので、それを隠すために」
「まあ!助けていただいたわけね。素敵な方じゃないの。どこで?」
「ここの回廊で」
「え?では、その方も、占天省の方?」
「はい」
「お名前は?伺ったの?」
「はい……。『白点 彪』様、と」
「白点 彪!?」
 彼女は首を振った。
「悪いことは言わないわ。あの人だけはやめておきなさい。占天省……いえ、宮廷内でも札付きの、変わり者よ」
「変わり者?」
「ええ。まだ入省して間もないあなたは知らなかったでしょうけれど、夜な夜な、汚い恰好で街に出て、庶民からお金を取って、『口寄せ』をやったり、お葬式の手伝いをしているらしいわ。しかも、法外な金額でよ。夜の仕事をしているせいか、朝参に出てくることもめったにないし、各人、個室になっている占天省にだって、顔を出しているかどうかなんてわかりやしないわ」
「……そんな方には、見えませんでしたが……」
 信羅は困惑して、言葉が出なかった。あの清浄な『気』。そんな人間には到底見えない。
「部屋は荒れ放題で、水煙草も吸うらしいし、そう、なんだか怪しい薬を使って、『口寄せ』を行うそうよ。本人も、それを隠す気はないらしいわ。……確かに、かなりの『術使い』だとは噂で聞いてはいるけれど。それでも、いったいどうして、あんな人がいつまでも占天省にいられるのか、みんな、謎だと思っているのよ」
 女性は、もう一度、信羅の顔を覗きこんだ。
「本当に、その方、白点 彪だったの?どんなお顔?」
「……端正な、お顔でした。でも頬から、首筋にかけて、傷痕が……」
「やっぱり本人だわ」
 女性は、腕を組んだ。
「あの男でも、そんな親切なことをしてくれるのね。だけど、気をつけないとだめよ、信羅様。あの男に近づくのは、おやめなさい」
 信羅は答えられなかった。……でも、あの方の単衣は、まだ私が持っている。それをお返ししないと……。
女性は、そんな信羅の思惑には構わず、
「それはそうと、先日お達しのあったあの……」
と、話を変えた。

その日の夕刻、勤務の後、信羅は『清白宮』を訪ねてみた。先輩女性の言ったとおり、彪が夜な夜な街に出ているならば、今頃出かけるはずだ。その前に、借りて、きれいに洗濯しておいた単衣を、返そうと思っていた。
「白点 彪様に、お目にかかりたいのですが。……甦 信羅と申します」
 入口の警備兵に、彼女は告げた。胸の前には、両手に抱えた単衣を固く抱いていた。
 そこへ、ちょうど宮殿内から、彪本人が、雑な庶民の衣装を着て、ぼさぼさ頭で面倒くさそうに歩いてきた。
 彼は、信羅をちらりとも見ようともせず、兵士に軽くうなずいて、行き過ぎようとした。
「……彪様!」
 信羅は、必死に声をかけた。彪がやっと自分を見る。背の高い彪は、彼女を見下ろした。
「あなたは……」
「この前、単衣をお借りした、甦 信羅です。……お忘れになってしまいましたか」
「……ああ……」
 彪は、懐に入れていた両手を出して、ぼさぼさ頭を、軽くなでた。
「『甦家』の、お姫様でしたね」
「信羅です」
 『甦家のお姫様』という他人行儀ないい方に、信羅は、必死になって、自分の名を告げた。名前くらいは、覚えておいてもらいたかった。
「私に何か?」
「お借りしていた単衣を、お返しに……」
「それはわざわざどうも。……姫様の方から足を運んでいただくなど、申し訳ありませんでした」
 彼は、信羅の差し出す単衣を受け取ろうとした。
「あの、これは、お礼です。……私が、作りました」
 そう言って、彼女は、単衣と一緒に、小さな袋を取り出して、それも彼に渡した。
「礼など」
「いいえ、そういうわけにはまいりません」
「ありがたく、頂戴します」
 そこで、彪は、初めて、小さく彼女に笑ってみせた。信羅の胸が熱くなった。
「では、私は、出かけなければならないので、失礼します」
「……あの。街へ、お出になるのですか?」
「……ええ、まあ」
「私も、連れて行ってくださいませんか」
「え?」
「彪様は、占天省内でも随一の『術使い』だと伺っています。その『術』を、私も学びたいのです」
「……姫。街は、姫のような高貴な方の行くところではありません。その言は、聞かなかったことにします。今後一切、そのようなことはおっしゃらないように」
 彪は、一方的に、決めつけて言うと、話を打ち切った。
「彪様」
「失礼します」
 彼は、彼女をよけるように前に出ると、単衣を持ったまま、足早に宮殿の外に行ってしまった。
 信羅は、あとを追えなかった。

 彪は、いつも休憩する広場まで来たところで、片手に占天省の単衣を持ったままだということに気が付いた。
(こんなもの、持ってきちまった)
 こんな単衣、毎日早朝、自室に、新しく洗ったものが支給されるのだから、いちいち返してくれなくてもいいのだ。
(あのお嬢さんは、やっぱり貴族の娘だな)
 そう思って、長椅子のそばにあったごみ箱に単衣を放り込もうとして、一緒に持っていた、小袋に気が付いた。
『お礼です』
 彼女は、そう言っていた。
 彪は、なんとなくそれをも捨てる気にならず、長椅子に腰かけた。何も期待はしていなかったが、一応、袋を、開けてみる。
 驚きで、目を見張った。
 ……これは……。

『……彪様。これ、召し上がりませんか』
 ある日、彪が暎蓮と二人きりになった時のことだ。
暎蓮が、懐からそっと小さな袋を出した。その袋から、何か取り出して、いくつか手のひらに乗せて、彪に示す。彪は、それを見た。薄い、きれいな、色とりどりの、菓子のようだった。
『お姫様、これは何?』
『『酒糖(しゅとう)』です』
『『酒糖』って?』
『甦家に代々伝わる、巫覡のための甘いものです。お酒と、砂糖を使って作られていて、お酒の香りと砂糖の味の両方を楽しめるんですよ。巫覡にお酒はつきものでしょう?でも、私たち若い者には、甘いものもまだ必要だから……』
『本当だ、お酒の匂いがする』
『これ、私が作ったんです。……扇賢様たちには、内緒ですよ。これは、私たち巫覡だけで、楽しむものなんです。……ナイト様に教えていただいたのですけれど、人間界の西方では、これと似たようなお菓子があるのですって。それは普通の方も召し上がるもののようですが。……確か、『ボンボン』、と、いうものだったと思います』
『『ボンボン』。……かわいい名前だね』
『これとは少し違うんでしょうけれど。……いかがですか?』
『ありがとう』
 彪は、『酒糖』と呼ばれる、一口大で、五角形の形をした菓子を、暎蓮の手から受け取って、口に含んでみた。
 強い酒の味と、甘い砂糖の味がした。いい香りがする。
『このお酒は、強いね』
『でも、そこがおいしいと思いませんか?』
『思う。……おいしいよ、お姫様。……お姫様は、何でも作れるんだね、お料理も、上手だし』
『お料理は、まだまだですが。でも、私、これだけは得意なんです』
 暎蓮の言に、幼い彪は、笑った。
『彪様とご一緒に食べられるよう、また、作りますね』
 そう言って、暎蓮は優しく微笑んだ。

(『酒糖』……)
 彪は、その袋の中身を見て、暎蓮とのやり取りを思い出していた。
 あの妹姫様も、甦家の人間だから、作れるのか。
 彼は、五角形をした酒糖を一粒取り出してみた。暎蓮のと同じように、植物の色素で色が着けてあるのだろう、白、薄桃色、薄青など、いろいろな色があった。香りも、暎蓮のものほど強烈な酒ではないようだが、確かにする。
(お姫様は酒豪だったからな。あの妹姫様は、『聖気』も弱いし、酒にも強くなさそうだ)
 彼は、ためしにそれを口に含んでみた。……甘い。
「……今の俺には、これじゃ、甘すぎるよ」
 彪は、笑って、袋の口を閉じた。一瞬だが、いい夢を見させてもらえた気がした。

 その日の深夜、信羅は、太天宮地下室にいた。眠れず、どうしても姉に訊いてみたかったことがあるのだ。
 太天宮は、王の常の住まいで、信羅の住まいは、別棟の、女性単身者専用の宮殿である、『湖白宮(こはくきゅう)』だが、信羅は暎蓮の妹である。太天宮地下への出入りは許されていた。
 彼女の前には、寝台の中で、眠り続ける暎蓮と扇賢の姿があった。
 信羅は、その前に跪いた。
「お姉さま……」
 信羅は、暎蓮の顔を見ながら言った。
 長い、柔らかそうな黒い巻き毛に、優しく愛らしい顔。不老とはいえ、その美しさと若さは、いつまでたっても変わらず、驚くばかりだった。薄いベージュ色の、『斎姫』専用の衣装を着ている。彼女に一番似合う衣装だった。
 眠っているはずなのに、驚くほど清浄な『気』が彼女を取り巻いている。
 ……私とお姉さまとは、まったく似ていない。彼女は、思った。
 お姉さまは巻き毛だけれど、私の髪はまっすぐだし、私はお姉さまのように、美しくはない。巫覡としての力も……。
 そう……。天地界中の民から、『国の宝』、『傾国の斎姫』とまで呼ばれるほど美しかった、暎蓮。
 信羅は、彼女に問うた。
「お姉さまは、初めにお父様から『斎姫』を廃されると聞いた時、どんなお気持ちだったの?『天啓』と『扇王様』のどちらを選びたかった?」
 扇賢が『斎姫』である暎蓮に強く懸想し、強引に婚儀を申し込んだ話は、天地界中で有名な話だった。まだそのころ、幼かった信羅も、その話は聞きつけていたことだった。
「お姉さまと扇賢様の恋は、強く実ったのね」
 信羅は、暎蓮と扇賢の重なり合った手を見ながら、つづけた。
「私……お慕いする方ができてしまったの。でも、私もその方も巫覡で、きっと、この想いは、実らないわ。それに、その方には、何か影がある。私には到底判らないような、大きな影が。私、この気持ちを、どうすればいいのかしら……」
 信羅は、更に言う。
「それに、私、判るの。あの方には、すでに、心に想う方がいらっしゃるのが。……きっと、おつらい思いもしたんじゃないかと思うわ。それが、あの方の影の一部かもしれない……」
 そこまで言った時、信羅の胸が急に苦しくなった。
 何かが、来るのを感じる。来てほしくない、何かが。
 でも、ここには、結界が張ってあるはずだ。だけど、それをものともせず、何かは近づいてくる。
信羅は、顔を上げた。
 地下室の天井の結界をすり抜けるようにして、黒い影が、彼女の上から降りたった。

 彪は、その日の街での仕事を終えて、城まで戻ってきた。
自室のある『清白宮』に戻ろうとした時、急に顔から首筋にかけての古傷が痛んだ。
「……これは……」
 ……邪気を感じる。そして、古傷が痛むのは。
「……扇様!お姫様!」
 彼は、『太天宮』に向かって、駆けだした。

 信羅の前に現れたのは、黒い衣装を着た細面の男だった。不気味なのは、彼の右の手のひらが、彼の心臓を押さえ、その手は、短剣で手のひら越しに心臓を貫かれて、多量の血が流れていることだった。
 彼は、間違いなく死人……『邪霊』だった。
「ようやっと、見つけたよ、扇賢」
 男は、女のような声で言った。
「……あなたは、誰?」
 信羅は、恐ろしいと思いながら、尋ねた。その眼は、彼の心臓を貫いているのが、暎蓮がかつて持っていた、『破邪の懐剣』であることを見てとっていた。破邪の懐剣は、本物ではなく、刺されたときに残された、剣の元の持ち主である暎蓮と、それを使って彼を刺した扇賢の『気』を象徴したものなのだろう。
 男は、地上にふわりと降り立つと、言った。
「私の名前は、文 里岸(ぶん りがん)。かつての浅南国(せんなんこく)の王だよ」
「浅南国の……」
 信羅は、眉根を寄せた。玉雲国が、かつては昏天国と呼ばれる国で、隣国の浅南国の反乱を押さえ、国を統合し、今の玉雲国ができたという話は、彼女も知っていた。そして、その反乱を押さえたのが、皇子時代の扇賢だということも。
「扇賢に殺されて数年間、私は魂だけで、死んでも死にきれないまま、あたりをさまよっていた。恨みだけが残り、あの世へ行くこともかなわなかったんだ。そこへ、扇賢が眠っているという話を聞いた。これは、機会だと思ったよ。今度は、私が、扇賢の命をもらう。そのために、今まで数年間、力をたくわえて、待っていたのさ」
文は、眠る扇賢の顔を眺めて、言った。
「……扇賢か……。なるほど。これだけいい肉体と『神気』の持ち主だ、殺すのは惜しい。扇賢を、もらう。その隣の、美しすぎる、『傾国の斎姫』も一緒に」
 そう言って、彼は、結界の中に包まれた扇賢の体に左手を伸ばした。結界が彼の手を阻もうとするが、彼はそれを爪で裂くようにしてこじ開け、扇賢の額に触れようとした。
「……そんなことは、許しません!」
 信羅は、夢中で、右手を伸ばし、自らの『聖気』を、文に向けて、力を込めて発した。しかし、文にはその『聖気』は届かなかった。彼は、左の片袖を振ると、あっさりその『聖気』をいなしたのだ。
 信羅は、目を見張った。
 ……巫覡として、修行を始めたばかりの、私の『聖気』じゃ、通用しない。
 この人を止めるには、……どうしたらいいの!?

「お前、何者だ!どうしてここへ入ろうとしている!?」
 太天宮の入り口で、庶民の姿の彪を止めようと、護衛の兵士が叫んだ。
 彪は、懐から、占天省の人間であるという身分証明書を取り出すと、それを示しながら、大声で叫んだ。
「占天省の白点 彪だ!扇王様とお妃様が危ない、どけ!」
 彪は、護衛の兵士たちを突き飛ばすと、入り口を通り抜け、走って地下室へと向かった。

 信羅は、もう一度、『気』を集中させて、結界術を張り、姉たちの肉体を護ろうとした。
 文は、それをまた、あっさり破ると、信羅を振り向いた。
「お前、大した『聖気』も持っていないのに、さっきから邪魔だね。……先に死ぬかい?」
 信羅は、体が震えた。……この邪気。私じゃ、この人には、勝てない。
 文が、彼女に向かう。『破邪の懐剣』で縫いとめられた右手をそのままに、左手を伸ばして、彼女に触れようとする。
「心臓を、抉り取ってあげよう。ちょうど、私が、扇賢にやられたようにね」
 その手が、彼女の身に届こうとした時だった。
 文の身に、強い勢いで、何かがばらばらと当たり、それが文の体に食い込んだ。彼が突然、声を上げて悶絶する。
「え?」
 信羅は戸惑った。……今、何かが飛んできて、この人に当たった気がしたけれど……。
「……信羅姫!ご無事ですか!」
 信羅は、振り向いて、目を見開いた。
「……彪様!」
 息を切らせて、地下室入口に立っていたのは、彪であった。懐から、何かを一掴み出して、もう一度、文に投げる。……それは、彼の『聖気』を練り込んだ、護身用の鋲だった。
 文の体のあちこちにめり込んだ鋲は、黒い煙を上げて、文が痛みに身をのけぞらせる。 
 その間に、彪は信羅を自分の後ろに下がらせた。
「どうして、ここに……」
 茫然とする信羅に、彪は言った。
「『邪気』を感じたからです。それに、この傷が痛むということは、お姫様……暎蓮様の身に、何かが起こるということを、扇王様が教えてくださったということだからです」
「彪様は、お姉さまをご存じなのですか」
 彪は、それには答えず、文が、悪鬼のような表情で、こちらを振り向くのを見ていた。
「彪様、この人には、『聖気』も結界術も効きません!この人は、扇王様とお姉さまを、我がものにするつもりなのです」
 信羅の言葉に、彪は顔を険しくして、うなずいた。
「あんたの名前は?」
 文は、だいぶ苦痛が薄らいだのだろう、体を震わせてはいたが、それでも答えた。
「……文 里岸だ」
「やはりな。前に、扇様から、あんたの話を聞いてはいたんだ。……扇様が眠ってから、近々、現れるんじゃないかと思っていた。今まで、元・浅南の地域の、暗い林を、さまよっていたんだろう?」
「お前も私の邪魔をする気かい?」
「見れば、判るだろう」
 文は、口から『邪気』の塊を吹いて、彪たちを襲った。彪は、一瞬早く、結界術を発動させた。信羅のそれとは比べ物にならないほどの強力な結界術だった。
『邪気』が、遮断される。
 それを見た文が、舌打ちして、左手を開いた。徐々に、その手の中に、大きな半月刀が現れ、それが手に握られていく。
「利き手じゃないから、扱いにくいが。お前たちを殺すには、これで十分だよ」
 彪は術者であるため、どちらかというと、武術には疎い。扇賢から、文は、武術の達人だと聞いていた。そして、『五彩の虎』として、無敵の強さを誇った彼も、かなりそれにてこずったという話も。
しかし、自分の後ろには信羅がいる。彼女だけは、何とか護らねばならない。
……どうすればいい?
文が、半月刀を振り上げて、空中を滑るように飛んできた。半月刀を振り上げ、彪の首を、横から薙ぐようにふるってきた。
彪は、両の手先に『聖気』を集め、結界術の応用編で、自身の左耳の横でその刃を受け止めた。
しかし、文の力は強く、攻撃こそ防げたものの、彪の体は横っ飛びに吹き飛ばされた。
「彪様!」
 信羅が悲鳴を上げ、両手で口を押さえる。
 彪は、何とか起き上がろうとしたが、文は彼の前まで進むと、霊体にもかかわらず、片足で、彼の腹を蹴り上げた。強い『邪気』が体にしみこみ、彪は、ぐはっと息を吐いた。
 まずい。体術を使われては、こちらに勝ち目はない。
 なんとか、『術』の土俵にまでこいつを引き付けないと……!
 彪は、文に片手で胸ぐらをつかみあげられて、引っ張られ、立ち上がった。文が、至近距離から、口から『邪気』をしみこませた毒針を吹いてきた。
 また、間一髪で、その『邪気』を、結界術で遮断する。彪は、文の両肩を、『聖気』を集めた両手で、思い切り、突いた。
 文がよろめいて、後ろに下がる。
「お前、『聖気』だけは強いようだね……。でも、ほどなく殺してやるから、待っておいで。でも、まあ、扇賢に負けず、お前もなかなかかわいらしい子だ。どうだい、私に与するかい?」
「気味の悪い冗談は、やめろ」
 彪は、至近距離まで文と近づいたおかげで、『邪気』にあてられ、吐き気をこらえて、呼吸を乱したまま、それでも、『迷惑だ』とばかりに、告げた。
 文は、
「扇賢も同じようなことを言っていたよ。かわいらしい顔をした坊やというのは、どうしてか私を嫌う。なぜだろうね?」
「お前とどうにかなるくらいなら、孤独死でもしたほうがましだ」
「言うことまで似ているじゃないか!」
 文は、声を上げて笑った。
「とっとと、この場から消えろ!」
 彪は、両手から強い『聖気』を発して、文を消そうとした。しかし、『邪気』にあてられている今の彼の力では、文は消せなかった。
文はにやりと笑うと、今度は、信羅の方を向いた。
「……この娘は、お前の仲間なんだろう?この娘をまずお前の目の前で殺してやろう。できるだけ、血がたくさん出て、華やかになるようにね」
 と言って、半月刀を構えると、彼女に向かって滑るように進んだ。
 信羅は、恐ろしさのあまり、後ずさった。文が、近づいてくる。
「信羅姫!」
 離れたところから、彪が、彼女のいる位置に結界術を発しようとするが、彼の体がよろめき、うまく発動しなかった。
 文が、半月頭を振りかぶる。
…………!
彪は、思わず目をつぶりそうになった。
『彪!『入らずの布陣』を敷け!』
「…………発(はつ)!!」
 懐かしい声が聞こえ、彪は、それに戸惑う前に、反射的に、両手を合わせ、もう忘れていた、かつての得意技であった結界術の一つ、『入らずの布陣』を敷いた。暎蓮たちの寝台、信羅、自分を取り囲む形で、地面に陣形が浮かび、何者にも侵されることのない結界、『入らずの布陣』が発動する。
 さしもの『邪霊』、文も、これに阻まれた。悲鳴を上げて、後ろに飛び退く。
 文が、半月刀を握りなおしながら、憎々しげに、寝台の上を見た。彪と信羅も、つられてそちらを見た。
「…………扇様!」
 扇賢達は、肉体はまだ眠っていたが、意識だけ現世に現れていた。懐かしい、扇賢の顔と……。
『彪様』
「……お姫、様……」
 暎蓮の、優しい笑顔があった。相変わらず、薄いベージュ色の斎姫の衣装がよく似合う、少女のような姿だった。
『なんだ、お前、俺と暎蓮に、ずいぶん差をつけた態度だな』
 扇賢は、相変わらずの口調で、彪を見て、にやりと笑ってみせた。その不敵な笑顔は、彼が元気だったころそのままだった。
 彪の両眼から、涙があふれた。
「そんなの、当たり前だよ!」
 あの十三のころの、子供にかえったように、彼は、わめいた。
 信羅は、その時悟った。彪の影は、姉たち夫婦の喪失にあったのだということに。
 彪様の想うお相手は、お姉さまだったのね……。
 扇賢は、意識だけでも、相変わらず面倒くさそうに、
『そんなことはどうでもいいが、お前、早く『術』で、この男を何とかしろ。うるさくて、寝ていられん』
 と、文を見つつ、いう。
「俺は、扇様が目を覚まそうが寝ていようが、かまわないけどね」
 彪は、昔と同じように、扇賢に憎まれ口をたたきながらも、文をにらんだ。
「扇賢、……貴様!」
 文が叫び、彼の方に向かおうとしたが、彪は、鋲を投げて、彼らの間の距離を離させた。片手しか動かない文が、後ずさる。
『彪様。あの技を。……私たち巫覡にしかできない、あの技で』
 暎蓮が、言った。
「うん」
 暎蓮と扇賢の意識の登場で、一時的にこの場が浄化されたらしく、彪の体に、力がみなぎってくるのが分かる。
 彪は、懐から、鋲をもう一つかみ取り出すと、信羅の周りに撒いた。そして、張ってあった『入らずの布陣』を解いた。鋲のおかげで、信羅の周りにだけ、『聖気』が発動し、彼女を護る。
「信羅姫、ここから動かないで」
「は、はい」
 彼はそう言うと、文に近づいた。
 もう一度、『入らずの布陣』を敷く。
「発!」
 両手を合わせると、文と自分だけが取り囲まれた陣形が発動した。今度の布陣は、文という『邪霊』を逃さないための布陣だった。
「な、何をする気だ!?」
「決まっているだろう」
 文が、焦ったように、周りを見渡す。空間の浄化の力と、彪の鋲の力も働いて、彼は存分に体を動かすこともできないようだった。彪は、なるべく扇賢の笑顔に似せて、不敵に笑ってみせた。
「あんたを倒すんだよ」
 彼は、『入らずの布陣』で文を逃れられないようにしておいて、彼に近づいた。結界で出来た壁をかきむしるようにして逃れようとしていた文が、苦し紛れに彪に向かって半月刀をふるってくる。しかし、彪は、『聖気』を集めた左手で、それを受けた。文の斬撃は、相変わらず重かったが、今の彼には、相手にできないほどの力ではなかった。
彪は、利き手の右手で、一息に文の首をとらえた。
文が、逃れようとするが、彪は、全身から手先に『聖気』を集め、逃さなかった。
文が、再び半月刀を彪に向けるが、彪は、『巫覡』としての力でもある『眼力(がんりき)』で、文を睨みつけ、その半月刀を消失させた。
霊体だけの文が、青ざめる。後ろに逃れようとするも、彪の力にはかなわない。
彪は、息を吸い込んで、集中した。
この自分の全『聖気』をこの手に乗せる……!
彪の右手と、彼の体、文の霊体が、七色に光った。
 次の瞬間、文の霊体は、断末魔の声を上げて、光とともに、霧散して消え去った。
これだけ木端微塵になれば、……もはや、復活することはないだろう。
 それを確認して、彪は、『入らずの布陣』を解いた。息をつく。
 これは、かつて、暎蓮と彪が一緒に行った技だった。
 振り返ると、信羅が呆然として立ち尽くしていた。彼女も、無事だったようだ。

『……最後まで、うるさい男だったな』
 扇賢が言う。
「扇様……どうして」
『彪』
 扇賢が、彼を懐かしむように、目を細めて、言った。
『お前、でかくなったなあ』
「……もう、扇様を抜いたよ、きっと」
 彪は、うるんだ目で、笑った。
『俺よりでかくなった?俺はまだ、お前には負けんぞ』
『彪様』
 暎蓮が言った。
『私たち、皆様のことを、ずっと見ていました。もちろん、彪様のことも』
「お姫様……」
『この世界を護るために一時的に眠るだけとは言っても。……皆様のことが、懐かしくて、愛おしくて、別れるのがとてもつらかったんです。だから、今、信羅の力を少し借りて、彪様の前に現れることができました。……でも、大丈夫でした。いつになるかは、わかりませんが。そして、もしかすると、すでに生まれ変わった彪様にかもしれませんが。私たちは、また、必ず、お会いできます。そして、ご一緒に、過ごせるときが来ます。また、ご一緒に旅することも、できます。だから……』
 暎蓮は、言葉を切った。
『それまでは、ご自分のために、生きてください。ご自分を、大切になさってください。お願いします』
「また、会えるの……?」
『はい。……そう、『天啓』がありました』
 暎蓮はそう言って、もう一度、微笑んだ。それは、かつての彼女の口癖だった。
「……『天帝』様もずるいや。そうなら、俺にも、ちゃんと言ってくれればいいのに……」
 彪は、涙を腕でこすりながら、ぶつぶつ言った。暎蓮が、それを見て、微笑む。
『……あの時は、私を護ってくださってありがとうございました。……お礼も、申し上げたかったんです。……扇賢様』
 彼女が扇賢を振り向く。
 扇賢は、言った。
『お前は、暎蓮の命の恩人だからな。仕方がない。ただし、……一度だけだぞ』
「え?」
『彪様』
 暎蓮が、彼を手招きした。なんだかよく分からないまま、彪が暎蓮のもとへ近づく。
 暎蓮の体は、相変わらず眠ったままだったが、その意識は、映像として、ちゃんと彼の前にあった。
 その映像である暎蓮の意識が、両手を伸ばし、彼の頬に触れた。顔を近づけ、彼の頬についている傷に、唇をつける。
「…………!」
 彪は、驚きと、その彼女から、送り込まれる『神気』の心地よさで、胸の鼓動が高まり、顔を真っ赤にした。だが、動けなかった。
 数秒の後、彼女は、彪から離れた。
『これで、もう、傷は消えました。信羅を護っていただいた、お礼です。それと、……今まで、大きな影を背負わせてしまって、ごめんなさい』
 暎蓮は言った。
『また、お会いできる日を、心待ちにしています。……信羅も。力を貸してくれてありがとう。あなたは立派な巫覡です。……自信をお持ちなさい。……お二人とも、お元気で。……ごきげんよう』
『じゃあな、彪。……信羅殿も。彪、お前、次に会う時、まだ情けない姿をしていたら、また無理やり旅に連れて行って、術者として、さんざんこき使ってやるから、覚悟しろ』
 扇賢はそう言って、にやりと笑うと、暎蓮の肩を引き寄せた。
 二人の姿が薄らいでゆく。彪が、必死に叫んだ。
「……待ってるから!扇様、お姫様!俺、二人が、必ず戻ってくるのを、待ってるから……!」
 扇賢たちは、微笑んで、うなずいてみせた。
 彪の両目から、また、涙がこぼれたが、彪は、それでも、彼らに向けて、必死に笑った。
 彪と扇賢たちは、お互いを愛おしむような笑顔をかわした。そのあと、扇賢たちはゆっくり姿を消した。
 二人の姿が消えても、しばらく彪は寝台に向かったまま、嗚咽を漏らしていた。
信羅は、黙って、その彼の後姿を見つめていた。
が、やがて、彪は、泣きやんで、袖で顔をごしごし拭くと、信羅を振り返った。
「……信羅姫。ありがとうございました。おかげで、扇様とお姫様に、会えました」
「……そんな……。私、彪様に助けていただいただけで、何もできませんでした」
 信羅は、実らなかった恋による、胸の痛みを押さえて、答えた。
「いいえ」
 彪は、泣きぬれた後の赤い目をして、言った。
「あなた様は、立派な巫覡です。これほどのお力があるとは、思いませんでした。……それから」
 彪は、微笑んだ。その顔と首筋には、もう、彼を荒れ果てた印象に見せる、あの傷はなかった。
「『酒糖』、ありがとう。……おいしかったです」
 彼の表情や、仕草には、もう、あの暗い影はなかった。清浄な『気』だけを持った、普通の少年……いや、背の割には子供っぽく見える青年だった。
 信羅はそれを見て、思った。
(この方の『時』は、お姉さまたちがいなくなってから、ずっと、止まっていたんだわ)
 それを思うと、心が少し痛んだが、初めに彼を見た時よりも、信羅は、今の彼のことの方がずっと魅力的だと思った。
(私も、この恋を最初で最後の恋として、巫覡として、生きて行こう)
 信羅は、彪に微笑んで見せた。
「彪様。……よかったですね」
 彪も、笑った。
「はい……!」
エピローグ 新しい旅立ち
 文 里岸は太天宮に入るまで、『邪気』を消していたのだろう、王宮に住む占天省の巫覡たちは、誰も今晩あったことに気付かなかったようだった。
 ただ、彪は、占天省の人間とはいえ、太天宮の入り口の兵士に対して荒っぽかったとして、太天宮を出たところで、警備省長官から散々文句を言われた。……まあ、事情が事情だったということで、許されはしたが。
 彪は、一緒にいた信羅を『湖白宮』まで送っていき、自分も『清白宮』に戻り、自室に入ると、息をついた。
 ……忘れていたかつての『術』のすべてを。お姫様と扇様のおかげで、思い出せた。
 それを役立てるためには……。
 彼の胸の中には、ある思惑が、芽生えていた。
 
翌日、早朝。太天宮、かつての扇賢の武術稽古場に、彪は行ってみた。
ここは、かつての仲間が、よく早朝に集まった場所だった。
彪が、稽古場を回る回廊に足を踏み入れると、人の気配がした。
稽古場には、稽古着を着て、鎧をつけた美女が、長刀を片手に、待っていた。
彼女の名前は、関 王音(せき おういん)。扇賢の、少年時代の武術の師であり、彪の仲間でもあった。
「やっと来たわね、彪」
 王音は、彼女の愛刀、『咲華(さくか)』の刀身を抜きながら、彪に、唐突に言った。
「四年よ。四年も、よくも待たせてくれたわね」
「王音姐さん……」
「あなたがあまりに長く来ないから、私はすっかり年を取るまで、武術指南役の席を降りられなかったわよ」
 彼女は、そういいながら、かつて扇賢がしていたのと同じように、長刀を使った『型』を演じてみせた。
「わたくしのことも、お忘れではなかったのではないですか、彪殿?」
 彪の後ろから、王音のグレイの稽古着とは違った、白い稽古着姿で、大剣を持った背の高い金髪の男が、声をかけてきた。
「ナイトさん!」
 暎蓮を巡った、扇賢の恋の好敵手であり、また、彼の僕である、玉雲国の『騎士』、ウルブズ・トリッシュ・ナイトだった。
 ナイトは、彪の肩を叩いて、彼の前に出、回廊から、沓を脱いで、稽古場の床に降りた。
「二人とも、どうして、俺がここに来ることを?」
 彪は、驚いて、言った。
「待っていたからよ」
「待っていたからです」
 二人は、期せずして同じことを言った。
「昨夜、扇賢様と暎蓮様の夢を見たの。その時、わかったわ。あなたがまたここに戻ってくることが。そして、あの方たちが、また私たちと出会う日が来るってことが」
「わたくしも、同じです。暎蓮姫は、必ずわたくしたちの元に戻ってきてくださる。おっと、……扇王様も」
 ナイトは、扇賢がいたら、蹴飛ばされそうな言い方をして、笑った。
「この四年、あなたは死んだと同じだった。でも、暎蓮様と扇賢様のお力で、生き返ったのね。今のあなたの顔は、『聖気』にあふれているわよ」
 『精気』ではなく、『聖気』、と彼女は言った。
「これから、私たちがやらなければならないことを、判っているんでしょう?」
 彪は、うなずいて、言った。
「俺は、これから……」
 彼は、王音とナイトの顔を交互に見た。
「『路縁(ろえん)』様の補佐をしたいと思っているんだ」
『路縁』とは、暎蓮と扇賢の子であり、今は御年三歳で、暎蓮の父である『清河大臣(せいがのだいじん)』が後見人となって、『路王(ろおう)』の名で、王座についているのだった。
「結構な話です、彪殿」
ナイトが言った。
「路縁様には、今のうちから、将来立派な王となるべく、『王道』、『覇道』、『武術』、そして、『斎姫』の子として、巫覡の『術』を学んでいただかなくてはいけません。それには、王音様、わたくし、彪殿があの方を補佐するのが最適かと」
「あなたがそう言うと思って、異動届をもう出しておいたわよ」
 王音が笑った。
「私は、自分の鍛錬をしながら、あの方を支える。あなたは、『術』を磨きながら、あの方を支えればいいじゃない」
「その通りです」
 ナイトもうなずいた。
「うん。……姐さんとナイトさんがいると思うと、心強いよ」
「私たちは仲間よ。それを四年も忘れていたあなたが、悪いのよ」
 そう言って、王音は、彼に近づき、まだ彼女より背の低い彼の額を、人差し指でつついた。
「いたい、やめてくれ」
 王音とナイトが、笑った。
「さあ、行くわよ。……朝参の時間だわ」
 彼女が言い、沓をはくと、回廊に上がった。ナイトも、同様にした。
王音が、先に立って、歩き出す。その後に、彪とナイトが続いた。
「彪殿」
 歩きながら、ナイトが言った。
「あの、顔の傷は、暎蓮姫のお力で治していただいたのですか?」
「そうですよ」
「どうやって治してもらったのですか」
 ナイトは、かつての戦いで、扇賢が死にかけた時、暎蓮が彼の傷を治したことを思い出して尋ねてきたようだった。
 その時は、暎蓮は、扇賢の額に唇を当て、そこから『神気』を送り込んで、彼を救ったのだった。
 彪が暎蓮を好きだったことを知っているナイトの眼が真剣だ。
「それは……」
 彪は、顔を赤らめて、黙った。
「それは、お姫様に訊いてください」
「やはり、何か、特別な方法を使ったのですね!?」
「いや、だから、それは、お姫様に」
「彪殿」
 ナイトは強い目で、彪を見た。
「いかにご同僚のあなた様でも。わたくしは負けません。暎蓮姫のことでは、あなた様とわたくしは敵(かたき)同士です」
「……敵って、お姫様はもう結婚して、子供もいるんですよ……」
「それとこれとは、別問題です。わたくしは、諦めません。必ずや、暎蓮姫を振り向かせてみせます」
「どうかなあ……。あの二人の仲は、ちょっとやそっとじゃ切れませんよ、きっと」
「今わたくしが問題にしているのは、扇王様ではなく、あなた様です、彪殿。何度も言いますが、わたくしは決して負けません」
「俺だって、お姫様の『最大の術者』ですよ」
 彪は、攻勢に出た。
 これは、かつて扇賢が、自分を暎蓮の『最大の鎧』だと言っていたことに対する自分の主張だった。
「ならば、わたくしは、暎蓮姫の『最大の騎士』です!」
 ナイトがわめいた。
「……あなたたち、いつまでわめき合ってるの?遅れるわよ」
 王音が振り返り、あきれたように、言ってくる。
 彪とナイトは、だんだんおかしくなり、顔を見合わせ、声を出して笑った。
「いけない、単衣を取りに、いったん、『清白宮』に戻らないと」
 彪は言って、笑顔で二人に手を振ると、王音を追い越し、駆けて行った。

 彪が、『清白宮』に戻ると、入り口の前で信羅が待っていた。
「……信羅姫?」
 彪が声をかけると、信羅は、はっとしたように顔を上げた。
「彪様。……よかった、またどこかへ行ってしまうのかと思っていました」
「どこにも行きませんよ。……異動届は出しましたけどね」
「え?……どこへ?」
「『路王』様の教育係の一人として、『麗水宮(王が公務を行う宮殿)』へ」
「『路王』様の……」
 信羅は、一瞬顔を伏せたが、すぐに顔を上げて、笑顔になった。
「やはり、彪様は、お姉さまの御子のことがお気にかかるのですね」
 彪は、赤面した。……昨夜、太天宮地下室で。
信羅の前で、この歳で、男として、あれだけの醜態を見せたのだ、彼が暎蓮を想っていないと思われるわけがなかった。
「いや、あの」
「ああ、ごまかしは結構です」
 信羅はあっさりと彪の言葉を遮った。その仕草は、少しだけ暎蓮に似ていた。
(やっぱり、離れて暮らしていても、姉妹だな)
 彪は、少しだけその動きに見とれた。
「どうか、お姉さまをずっと好きでいてください。……私は……。お姉さまを一番好きな彪様が、一番慕わしいと思っています」
「えっ!?」
 彪が、度胆を抜かれた顔をした。信羅は、おかしくてたまらないように、声を出して笑うと、
「今の彪様は、まるで、少年のようですね。昨夜から、若返ったようです」
と言った。
 そして、彼の横をすり抜けて、『陽天宮(ようてんきゅう。朝参を催す宮殿)』へ向かって、駆けて行き、途中で、振り返った。
「ご心配なく。私は、『巫覡』として、これからも生きていきます。彪様の、お姉さまへの恋路の邪魔をしたりは、致しません。……ですが」
 信羅は、顔を赤らめたが、少しだけ間を空けて、つづけた。
「私の、『兄』、くらいには、なってくださいますか」
 彪は、答えなかった。
 だが、静かに、笑ってみせた。
 信羅は、その意味が分かったらしく、もう一度、明るく笑うと、
「朝参に、遅れますよ」
 とだけ言って、走り去っていった。……まだ、お転婆な仕草の残る、少女だった。

久しぶりに出る朝参中、彪は、ずっと思っていた。
俺は、『巫覡』。術を失わないために、この実らない恋を抱えて、永遠を生きていく。それが、ちょうどいいんだ。
 そのために今、出来ることは、扇様とお姫様の子供を、俺の『術』で、護ること。
それが今、俺のために生きること。
彼は、目を伏せた。
……そうだよね。扇様、お姫様。

朝参を行う宮殿、『陽天宮』から出ると、彪は、伸びをした。空を見上げる。
空が青い。雲が流れて、まるで何かの絵のようだ。
周りを見渡すと、堅牢な城壁の上から、緑が生い茂る、美しい山脈が見えた。玉を連ねたように美しい山脈だ。
それは、青い空と雲によく映えていて、彪はそれに見とれた。
「『群玉山脈(ぐんぎょくさんみゃく)』……」
 小さくつぶやく。
 扇賢は、かつて、この国の名前を『昏天国』から『玉雲国』に変える時、この山脈を見て、名前を考えたのだ、と言っていた。
「『玉雲国』って、いい名前だね、扇様。……この国に、ぴったりだ」
 彼がつぶやくと、それに応えるかのように、一陣の風が吹いた。
「……扇様……?」
 扇賢には、『風』……『天候』を操る能力があった。今の風は、その、彼の起こす風に似ていた。
風は、なぜかよい香りも運んできて、彼の鼻をくすぐった。
……お姫様の香りだ。
扇賢の風と、暎蓮の香り。……二人は、ちゃんと自分を見ていてくれている。
彪はそう思うと、安堵のため息をついた。
……大丈夫だ。自分は、ちゃんと、生きていける。彼らが戻ってくるまで。
「……さあ、仕事だ」
「……彪!」
「彪殿!」
『麗水宮』の入り口前で、王音とナイトが、彼に向かって、手を振っている。
彪は、顔を上げると、ためらうことなく前を向いて、『路王』の待つ『麗水宮』へ向かって、歩き出した。
(終)


小説のコメントコメント
この作品の著作権は、作者である 淳虎 さんに帰属します。無断転載等を禁じます。

読んでくださってありがとうございます。
彪がまだ13歳で、幸せだったころの冒険譚シリーズもありますので、公開されたら、是非質らもお願いいたします。
2018/06/18 21:05 淳虎



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