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『その後のお母さん畑。〜二ヶ月後〜』

きんぎょ日和著



お母さん畑を手伝って以来、二ヶ月ぶりに野菜たちとのご対面となった。
帰ったその日は、畑に行かなかった。
次の日、朝から余裕を持って畑チェックに行った。

『さてさて、みなさん、どうですか?!何かお変わりはないですか?!』
と声をかけてみた。
間髪入れずにいろんな所から、
『あいちゃん(仮名;私)が帰って来た〜。』
『おかえり〜。』
『お母さんが雑〜。』
『お母さんがあまり話しかけてくれない。』
『お母さんに伝えて〜。』
『こっちも見て〜。』
『こっちにも来て〜。』
と声が届いた。
私は突っ立ったまんま、聞こえてくる方を向いては、
『はい、はい、…はい。』
と急いで肯いてはまた声を聞き、また肯いてとしていた。
そして先ず向かった先は、小さな小さな一区画のあいちゃん畑。

到着するなり足元の方から、
『あいちゃん、おかえり〜。』
と聞こえた。
そこはズッキーニのジャングルだった。
ズッキーニの大きな葉っぱが生い茂っていた。
二つ目の畝に植えたはずのズッキーニだったが、一つ目の畝のところにまでせり出していたので、二つの畝が一緒くたになってしまい、よく分からなくなってしまっていた。
そして声がしたところは葉っぱじゃない…と感じた私は、何処だろうかと葉っぱのジャングルの中を覗き込んだ。
探していると、
『ここーっ、ここーっ!!』
と呼ぶ声が聞こえた。
その声を辿って行くと、葉っぱの根元にズッキーニが二本いた。
その内の大きい方が私に手を振って来て、
『あいちゃん、おかえり〜。ちゃんと約束守ったよ〜。お母さんのためにちゃんと育ったよ〜。』
と言って来た。
私も一応手を振り返し、
『ただいま。帰って来ました。』
と伝えた。
手を振り返したらズッキーニたちにクスクス笑われた。
何故だろう…。
棒読みのように喋ったからかなぁ〜。
まあそれは良いとして、
『でも、何はともあれ、ちゃんと育ってくれて良かった、良かった。みんなご苦労!!』
と伝えると、
『は〜い。』
と返事が来た。
そしてズッキーニが、
『お母さんに食べ頃〜。って伝えて〜。』
と言われた。
そう言われたら伝えないわけにもいかないので、
『はい、分かりました。そう伝えます。』
と私も返事をした。
『よろしく〜。』
とズッキーニは言った。
ノリの良いズッキーニで何よりだと私は思い、しっかりと肯いた。

大きな一つの畝を半分ほど占領するくらいズッキーニは成長していたので、反対側を見るためには、回って行ってチェックしないといけないほどだった。
ズッキーニの隙間から草が生えていると思ったら、それは草じゃなくて人参だった…。
あらまっ?!と思った私は、ズッキーニの隙間から人参を覗いて、人参の葉っぱを触ってみた。
そしたら人参が、
『こんな結果になった…。ズッキーニ…場所取り過ぎ…。…狭い…。栄養取られた…。来年からは別がいい…。』
と苦情なのか愚痴なのか…それとも独り言か…を言っていた。
どう反応したもんかと困った私…。
念のため、
『来年からは気を付けてみよ〜。』
と目をパチパチしながら小さな声で独り言のように言ってみた。
人参からは何も言われなかった。

他の畝はどうだろうか…。
大根とカブの畝は全滅だった。
どうやら大雨が降って根腐れしたようだった。

ゴボウはどうだろうか…。
よく葉っぱが育っていて、よいよいと私は肯いた。
しかしまだ食べ頃ではなさそうだった。

トマトの脇芽を取って、それを各々の畑に植えて、どっちの畑の方が出来が良いかの実験をしていた。
結果、変わりはなかった…。
どちらも鈴なりに実っていた。
味も変わりはなく、美味しかった。
深く掘りゃいいというもんでもないということが分かった。
しかし、野菜たちは言う。
『水はけは大事よ〜。』
そう言われるとまた考えてしまう。
野菜たちが気持ち良く実れる環境を与えられたらそれが一番良いのかもしれない…。
野菜たちが教えてくれた事に感謝だなぁ〜。

そんな風に勉強もありながらの三つ目の畝はどうだろうか…。
いんげん豆を植えたところだ。
ツルが這って行ってもいいように柵を作っておいた。
升目状に作った薄い柵が、ぎっしり豆のツルに覆われて、升目から左右に葉っぱが生えて立派なオブジェのようになっていた。
さてさて豆は出来ているのだろうか。
…探すことなく豆があっちこっちになっていた。
よいよいと肯き、よしよしと豆を触ってみた。
『良い出来、良い出来。』
と肯きながら触っていたら、
『ちゃんと育ったよ〜。美味しいよ〜。…でも水が足りない…。』
と言って来た。
驚いた私は、
『あらまっ!!…お母さんに伝える。』
と即答した。
『お母さん、ちゃんとしないと思うけど、お願いしま〜す。…あっ、食べ頃で〜す。』
と付け加えそう言った。
みんなお母さんの性格を良く分かっているから偉いなぁ、大したもんだっ!!と私は思った。
それでもお母さんを嫌いにならずに、お母さんのために実るから、やっぱり大したもんだっ!!と思った。

これであいちゃん畑のチェックが終わり、お母さん畑のチェックへと向かった。

お母さんは初めてスイカを育てている中、育て方が分からないと言うので、私がネットで調べてお母さんに伝えた。
無駄に伸びてる脇芽を摘んだり、一つのツルにスイカはいくつとする方が美味しいスイカが出来るとあったので、お母さんはネットにある通りにしたんだとばかり思っていた。
あいちゃん畑の道を挟んですぐに伸び放題のツルたちがいた。
私がネットで調べたのに、やっぱりこの有り様か…と肩を落としながらもチェックに入った。
十メートル近いんじゃないかと言うほど伸びているツルもある。
スイカのツルは地を這って行くもののようだから、そこは問題ないと…。
しかし細長〜く…ジャングル…。
声は掛けておこう。
『スイカさ〜ん、いますか〜?!』
と聞いてみた。
何分、ジャングル過ぎて地面が見えないほどなので、呼びでもしない限り実が何処にあるのか分からない。
どうしてだろうか聞こえない…。
もう一度、
『スイカさ〜ん、何処ですか〜?!』
と聞いてみた。
何かが聞こえる…、小さな声…。
耳を澄まして聞いてみると、小さな声で応えてるのが聞こえて来た。
小さすぎるのでその方向に耳を傾けて待った。
『…いま…すよ〜。ここ…かな…。』
とやっと聞こえた。
その聞こえた所を見つめてみたけど、スイカの実がない…。
『ないよ〜。』
と言うと、
『…あるんだけどなぁ…。ここ〜。』
とやっぱり小さな声。
ジャングルなので少し離れて見ていた私。
葉っぱたちが邪魔で、その下にいるのかと角度を変え覗くと黄緑の小さな玉があった。
『あーーーっ、いた〜!!…どうも。』
と私は頭を下げた。
どうしてだろうか、反応が今ひとつ…。
人間に例えると苦笑いしているというか、よそよそしいというか…。
何故だろうかと私は考えた。
ここは畑の中でも端っこなので、お母さんに相手にされないから不貞腐れているのだろうと…。
そう思ってもスイカたちは何も反応しない。
それだけお母さんに相手にされてないのかも…。
そう思った私は仕方がないと他の野菜たちの所へと向かった。
向かったと行ってもスイカの隣のサツマイモの所だが…。
どのくらいの近さかと言うと、綺麗に生い茂ったサツマイモのジャングルの中をスイカのツルが這って、その中を突き進んでジャングルを通り抜けて行ってるほどの近さ。
それはそれで良いと私は肯き、次の野菜の所へと向かった。

次の野菜の所までは、何故か距離がある。
おそらく、何か別の野菜でも植えていたのだろう。
そこから七、八メートルほど空けて次の野菜たち。
この野菜たちは誰だろうか…。
…何かネットがかけられてる…。
カボチャも育ててると言っていたからカボチャかも…。
そう思いながらネットの中をチラリ…。
…?!…何処かで見たことのあるシマ模様…。
緑の生地に黒のシマ…。
『…もしかして…、こっちがスイカーーーっ?!』
とスイカに向かって言ったら、
『…そうだったりです…。』
と小さな声が…。
『じゃあ、あっちのスイカと思ってたのは何っ?!』
と言う私はそっちを向いた。
『もしかして…、カボチャ…?!』
と呟いたら、
『…カボチャでした〜。』
とスイカと思っていた所から声がした。
開いた口が塞がらず、カボチャ方面を見つめ、
『あ゛ーーー。』
と声を漏らし続けていた。
通りでアタリの弱い小さな声だったわけだ…。
不貞腐れていたわけではなく、ただ私の勘違いだっただけのこと。
そう気付いた私は、カボチャに向かって、
『すんまへん…。』
と一言。
クスクス笑う声がチラホラと湧き上がり、
『いいえ〜。カボチャでした〜。』
としっかりとした声が届いた。
私はスイカの方に向き直り、
『間違えた…。』
と落ち込みそう言うと、スイカに、
『いい、いい、大丈夫。そういうこともある。』
と励まされた。
そして気持ちを切り替えスイカのチェックをした。
ネットで調べた通りに、親ヅル、子ヅルの伸ばし方、無駄な脇芽の摘果(てきか)がちゃんと出来ていて、大玉・小玉が十個ほど実っていた。

次の野菜たちの所へと行く前に、もう一度カボチャの方に会釈して、トマトとナスの方へと向かった。

トマトもナスも曲がりくねりながらも紐で支柱に結び付けてるので、手を抜きながらもちゃんとしているようで良かった。
どちらもたくさん実っていて、本当に出来が良いと肯けた。
『みんな、ちゃ〜んと頑張ってて偉いっ!!ナスがこんなに出来てて良いっ!!』
と言ったら、ナスが、
『あいちゃん、あいちゃん、ここ、ここ…もう少しで地面に着く…。…早く採って!!…ここがもう少しで、後ちょっと。お母さんに言って〜。後もう少しでお尻が着く〜って言って〜。』
と訴えだした。
そんな事言うもんだから、しゃがんで覗いてみた。
確かにナスの言う通り、他のナスよりも一本だけ長いナスが、地面と一センチもないくらいのビミョ〜な距離間を保っていた。
どうしてもナスはお尻を地面には着けたくないようだった。
自力で着かないようにと腹筋で自分を支えてるようにも見えた。
トマトは大玉がたくさんなっていて、赤い色のトマトたちは、
『食べ頃〜。美味しいよ〜。』
と言っていた。

そして次は、また同じ道を挟んで反対側のニガウリときゅうりの所へ。
…きゅうりが…干からびて…全滅…だった。
声も聞こえてこない…。
『お疲れ様です。』
とひと声かけた。
あまりの暑さに負けたのかもしれない。
そしてニガウリのチェック。
美しく生い茂った緑の塊が二つあった。
綺麗に上手に育った葉っぱの塊が芸術に見えた。
歩いて近付いてみた。
足元はスリッパが隠れるくらいの草。
何処を踏んでもただの草だろうと思っていたのだが、何かが違う…。
足を止めてよくよく見てみた。
…ニガウリの…ツルが…草の上を這っている…?!
あらら…と思い、ツルを踏まないようにと歩いていたら、這っているニガウリのツルから声がした。
『結構、這っても行ける口みたい。行き場がなくて…。』
とニガウリが言った。
その状況はどうも顔を地面に擦り付けながら進んでるようにも見えた。
しかも一本だけじゃなく四方八方に何本も。
上から見たらタコのように見えるような気がした。
長いものは五メートルくらい地面を進んでいたと思う。
『結構大変…。でも、行ける口…。』
とニガウリは言う。
ツルが這うための支柱や網がどうして必要なのかがよく分かった瞬間だった。
何故だろうか、“ありがとう…。”と言いたくなった。
『一つ勉強になったね!!』
と私に言ってるのに、地面と向き合っている…。
変な姿…。
ついでに地を這ってもツルには実が付くのか見てみた。
…蕾を発見!!
『ねっ、行ける口でしょっ?!』
とニガウリに言われた。
黙って肯いていたら、
『でも、お母さんに踏まれると思う…。』
とニガウリは言う。
『お母さんに地を這ってること伝えるよ。』
と私は言ってみたものの、
『たぶん、お母さん知ってる…。』
と当たり前のようにニガウリは言った。
一応、私は仲介業者なので、お母さんに伝えてみようと思った。
ニガウリはあんまりいい顔をしなかった。

キッチンにいるお母さんのところへ。
『野菜たちの愚痴が半端ないよ。』
と開口一番そう言った。
『え゛っ?!』
とお母さんからドスの利いた声が届いた。
出た出たと思った私は、
『“お母さんが雑〜。お母さんが話しかけてくれない。草を取ってくれない。”などなど、その他諸々の愚痴。』
と伝えていたら、
『“そんなに言わなくてもいいよ〜。お母さんも大変ですから〜。我慢しますから〜。”って言ってるけど、いいえ、大丈夫です。代わりに代弁しますから〜。』
と畑の方を振り向き、私は野菜たちに向かってそう言った。
そしたらお母さんが畑に向かって、でも目は私を見て、
『いいですよね〜。こっちも大変ですから〜。我慢出来ますよね〜。』
と言った。
野菜たちが口々にみんなで何かを言い合っていた。
私は通訳はしなかったけど、
『なんやかんや言ってるよ。』
とは伝えた。
お母さんは気にしていなかった。

『ズッキーニが、“食べ頃〜。”って言ってたよ。』
と伝えたら、お母さんが当たり前の顔をして、
『知ってる。二本が隣り合ってるやつでしょっ?!』
と言った。
『知ってるんなら採ったら?!』
『その反対側の奥にももう一本あるよ。それはめちゃくちゃデカイよ。』
と話が噛み合わない。
『もう一本?!…見てない。じゃあ、尚更採ったら?!』
と私が言うと、お母さんの顔がイラッとして、
『ちょっと来てみなさいっ!!ここ、見てみなさいっ!!ここにも大きなズッキーニが三本あるの!!お母さん、一人しかいないんだからね!!食べこなせないのっ!!ご近所さんとか友達に配っても、次から次から出来るのっ!!それでもまだこれだけあるのっ!!分かったっ?!』
とまくし立てるように言った。
最後の“分かったっ?!”の一言なんか、キッチンの網戸を開けて畑に向かって言った。
野菜たちが恐れだすからあんまりしないで欲しいけど、お母さんの怒りでもあるので何とも言いようがなかった。
間を置いて畑から声がした。
『…食べれる分だけ食べてください…。』
と。
お母さんに伝えたら、また網戸を開けて、
『そうしてます!!』
と言って網戸を閉めた。
網戸を開けなくても聞こえるのに、何故かわざわざ開けてるのが理解出来なかった。

いんげん豆も食べ頃と言っていたことを伝えたら、やっぱりご近所さんにも配っていた。
『それでもどんどんなるから、毎日、朝昼晩豆を食べてる。それでも減らないの!!そこ見てみなさい。』
とお母さんの指差す所を見たら、ズッキーニたちとは違うカゴに何人分だろうかと言うほど豆があった。
私は黙って納得した。

『ナスが一本、“もう少しで地面に着きそう…。早く採った方がいいよ〜。”って言ってたよ。』
と伝えると、お母さんの顔が無表情になり、
『知ってる。一本だけ下に長く伸びてるやつでしょ?!知ってる。でも見てみなさい。』
と言われ、案の定何本もナスがあった。
『近所さんにあげるにしても、大体みんな畑持ってるから、ナス・きゅうり・ニガウリ・トマトは植えてるの。これはなかなか減らない…。食べても食べても次から次に出来るから…。この前だってね、近所のおばちゃんがお母さんの所に野菜持って来てくれたんだけど、お母さんの畑見ながら、“きゅうりはいらないわねぇ〜。これどうぞ。”って言って帰って行ったんだけど、持って来た野菜の下にきゅうりがたくさんあった…。お母さんの畑もその時はきゅうりがたくさんあったんだけど、そのおばちゃんもきゅうりがなりすぎて困ったんだと思う。』
とお母さんは言った。
『そのおばちゃん、野菜の下にきゅうり隠して持って来たんだね…。姑息なやり方だね…。』
と私は言った。

ニガウリのツルが地面を這っている話をした所、
『そんなこと知ってる。それで、ニガウリは何て言ってるの?!』
とお母さんにとっては大した事なさそうだ。
『“行ける口。”だって。』
『行ける口っ?!はっ?!どういうこと?!』
と分かっていない。
『顔を地面に擦り付けながら這ってて、でもそのツルには蕾が付いてる。支柱とかの支えがなくても実は出来るみたいだって。だからツルを踏まないように気を付けて歩いて。』
と私が説明したら理解したようで、
『ほぉ〜、それで行ける口かぁ〜。はいはいはい…。』
とお母さんは分かってくれた。
珍しいと思った私は、
『そうそう、だからツルを踏まないように気を付けて歩いて。』
と言うと、そこは顔が一変して、
『何言ってんの〜!!そんな事面倒くさくて無理無理。ドンドン踏むよ〜。』
と悪気もなくそう言った。
それを聞いた私もニガウリも開いた口が塞がらなかった…。

それから、一息入れようと休憩になった。
キッチンでお母さんとコーヒーを飲みながら、スイカの話になった。
『スイカが可愛いくて、可愛いくてたまんないの。毎日、見に行ってる。』
とお母さんはスイカをベタ褒めし始めた。
電話で話してる時も聞いていたけど、こんなにも溺愛してるなんて…と言いたくなるほどスイカの話になると表情が優しくなる。
私は思い出したので、
『スイカの受粉は人間がしないとダメだって言ったけど、ちゃんと自分でした?!』
と聞いた。
『それが、朝早くにしないとって分かってるんだけど、朝になると忘れてて…、また思い出して明日しようって思って、また忘れて…。やっと覚えてて花が咲いてるかなぁ〜って探してたら、花はちゃんと咲いてたの。咲いてたんだけど、全部花粉が付いてて、また別の日に行ってもまた花粉が付いてるから、誰かがしてくれてるみたい。…誰だろうね…。だから朝早くに行くの止めた。』
とお菓子を食べながら軽く言った。
私は驚いて目を見開き、
『はぁ〜?!何すっとぼけた事言ってんの!!誰だろうねじゃないよっ!!ハチががしてくれたの!!ハチが!!ちゃんとお礼言った?!言ってないならちゃんとお礼言ってよ!!』
と私は言った。
そしたら、お母さんはお菓子をくわえたまま畑の方を向いて、
『どうも。』
と一言…で終わった。
『はっ?!そんな程度?!もっと心から言ったら?!一生懸命仕事してくれたハチに失礼!!』
と私も言った。
お菓子が口に入ったままモグモグしながら、さっきよりも雑に、
『どうも。』
と畑の方に向かって言った。
『知らないからね。そんな態度で…。』
と私はイラッとして言った。
『いいの。お母さんはこれでいいの。心では感謝してるの。野菜たちは分かってるからいいの。』
と勝手にオチを付けた。
ハチの気持ちは分からないけど、野菜たちはお母さんの方を見て、目をパチパチさせていた。
そんな感じだった。

次の日、畑チェックに行ってみると、“地面にお尻が着きそう…。”と言っていたナスのお尻が地面に…着いていた。
『…着いた…。』
とナスがうんちでも踏んだかのような言い方でそう言って、ガクッと肩を落とし諦めた姿が見えた。
私は今出来るだけの励ましをナスに向けた。
『お母さんてそういう人…だもんね。…諦めよう…。こっちも言ってるけど、こんな結果だから…ねっ。多少諦めよう…。』
ナスは小さく“うん。”と肯いた。

野菜の思いを汲み取るのも一苦労。
まっ、これが私の役目なようなので、苦にはならないから、“まあ、いっか〜。”と思っている。

そして、そのままお母さんの所へ行き、ナスのお尻が地面に着いた事を伝えた。
無表情で聞いていたお母さんから、“ぅん。”と変な音が聞こえて、そして無視された…。
意味が分からん…。
そんなお母さんにナスも余計に諦めたみたいだった。

それから毎日ナスの姿を見に行っては、
『お尻が〜付いてる…。』
とナスは訴えていた。
ナスのお尻は伸びて行きながら地面を滑るように刺さり続けた。
それから数日が経ってやっとお母さんがナスを収穫した。
キッチンのカゴに入れられたナスはホッとしたのか、その後は何も話しかけて来なかった。

私はお母さん畑を手伝わないという約束だったので、草がどんなに生えようが草むしりをしなかった。
草むしりはしないけど、草の生えてる量のチェックはする。
『みなさ〜ん、草はどうですか〜。』
と声をかけながら。
ざっと見てみんな同じ気持ちだった。
『お母さんも忙しいからしょうがないよ〜。』
と何処からか聞こえたりする中、スイカと間違えたカボチャの所へ。
十メートルほど場所を取って伸びているカボチャを少し離れて見渡していた。
上に伸びずに地面に這いつくばって広がっているから、見晴らしは良かったはずなのに違和感を感じた。
『…カボチャってこんな風に伸びてた?!何か変な風に生えてるけど…。』
上に一メートル近く盛り上がっている所を見て私はそう聞いてみた。
何処かのカボチャの実が、
『…草。』
と答えた。
『えっ?!これ草?!』
と言って、私はそこに近付いた。
首を傾げながら、
『これ草かなぁ〜。』
と言いながら近くで見たら、案の定…草だった…。
カボチャのツルと同じ色をした草だったから余計に分からなかった。
その草を見ていたらカボチャが、
『草が生えた〜。これ抜いて…。…邪魔。』
と言うので、草の根元を覗いてみたら、
『あ〜、これは邪魔だわぁ〜。』
という感じだった。
お母さんの手伝いはしないけど、今その時にカボチャが言うのは別。
人間ってなんて適当なんだろうかと思った。
草を引き抜こうと掴んで、クイックイッとしてみたらカボチャが、
『あっ、ちょっと無理。自分も抜ける…。』
と言い出した。
どういうことかと根元を覗きながらもう一度クイックイッと引っ張ってみたら、草の隙間をカボチャのツルが這っていた。
これは複雑!!と思った私は草から手を離した。
『難しい状況〜。』
と私はカボチャに伝えた。
沈んだ声でカボチャは、
『…我慢する…』
と言った。

お母さんと初物のスイカ残り半分を食べている時に、お母さんがふと、
『近所さんもスイカ育ててるところもあるんだけど、みんなタヌキが出てぐちゃぐちゃにされて全滅だって。お母さんの畑のスイカは全く荒らされてないから、近所の人たちに、“ここだけタヌキが来てないのはどうしてでしょうかねぇ〜。”って言われるんだけど、上の話なんて出来るわけないし、変な宗教なんて思われでもしたら嫌だから、お母さん近所の人に合わせて、“ねぇ、何ででしょうねぇ〜。”って言ってる。』
と言った。
『ちゃんと畑に立ってくれてる上にお礼した?!本当に上が立ってるからタヌキが来なかったかは分からないけど、上のおかげかもしれないんだからちゃんとお礼してよ!!』
と私が言ったら、虫や野菜たちにお礼をするよりも深々と心を込めて、スイカを持ったままお母さんは畑に向かって、
『どうも、ありがとうございます。タヌキが来なかったのでスイカがとても美味しいです。』
と言ってパクッと食べた。
それで良いのか悪いのか…私には分からなかった。

作品のコメントコメント
この作品の著作権は、作者である きんぎょ日和 さんに帰属します。無断転載等を禁じます。

野菜たちの愚痴も様々だ。でもちゃんと約束は守るようだ。私も見習わないと…なんて思う。カボチャとスイカを間違えてごめんなさい。でもカボチャもスイカも気にしない。その事を根に持たない。人間より出来てる心がある。
2015/10/09 15:25 きんぎょ日和



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